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写真で見るApple TV:テレビをアプリで楽しむためのデバイス

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
発売となるApple TV。アプリのエコシステムでリビングルームを変革できるか?

Appleのテレビ向けセットトップボックス、Apple TVが間もなく出荷されます。注目のテレビ向け新デバイスについて、iPhone 6s、iPad Proなどが発表されたスペシャルイベントの模様を、改めてまとめました。

Apple TVの公式ページ・購入はAppleのウェブサイトで行えます。

http://www.apple.com/jp/tv/

Apple TVは、インターネット上やiPhone・iPad・Macのコンテンツを手軽にテレビで楽しむ事ができるデバイスです。テレビにはHDMI端子1本で、インターネットへは無線もしくは有線でそれぞれ接続して使用します。

「iTV」としてスタートしたプロジェクトであり、Steve Jobs曰く「趣味」のプロダクトとして位置づけられていました。また、Appleがテレビそのものをリリースするのではないか、との噂が長らく語られてきましたが、結果的にはこれまでの外付けデバイスという形で搭載されることになりました。

最新のApple TVは、これまでよりも高さが増しましたが、1辺98mmの角を落とした正方形の底面を持つ黒いデバイスというスタイルを踏襲しています。内部にはiPhone 6で採用された64ビットA8プロセッサを搭載し、Wi-Fiに加えてBluetoothをサポートしています。また、サービス・サポート用にUSB-Cコネクタが用意されています。

これまでApple TVにはストレージは用意されてきませんでしたが、新モデルでは保存容量は32GBと64GBの2モデルが登場します。

tvOSでアプリをサポートし、テレビ進化のエコシステムを作る

例えば米国では、大リーグのライブ映像も情報と組み合わせて楽しめるようになる。
例えば米国では、大リーグのライブ映像も情報と組み合わせて楽しめるようになる。

新たにストレージが用意された理由は、あらたにアプリをダウンロードして機能を追加できるようになったためです。そして、これらは単なる映像視聴ではない、新しい体験を作り出すことにつながります。

例えば、MLB.COMのアプリは、1080p 60フレーム/秒の映像を1つないし複数視聴しながら、他の試合の経過をチェックし、盛り上がっていそうだったらそちらにスイッチする、といったよりアクティブな観戦をテレビを通じて実現してくれます。

Apple TVは、iPhoneなどが動作するiOSを元に作られた「tvOS」を搭載しており、開発者がiPhoneアプリ開発のノウハウを生かして、テレビ向けにアプリを作ることができるようになりました。また専用のApp Storeも新たに追加され、ユーザーはiPhoneのようにApple TVにアプリを追加し、新たな機能を楽しむ事ができます。

NetflixやHulu Plusといったアプリはあらかじめ導入されていますが、それ以外の動画配信系のアプリを追加して楽しむ事ができるほか、通販サイト、不動産検索サイトなどのモバイルアプリやウェブ向けのサービスのアプリ、そして64ビットプロセッサの処理能力とグラフィックス性能を生かしたゲームなどが配信される予定です。

映像を見ている際、出演者やスタッフの情報を音声で検索できる。
映像を見ている際、出演者やスタッフの情報を音声で検索できる。

テレビがスマホのようにアプリで進化するようになる、ということです。後述するSiriによるコンテンツの横断検索や、ウェブ上の情報を的確に表示してくれる機能から、テレビのスマホ化を体験することができるのではないでしょうか。

ソニーやシャープなどの既存のテレビメーカーも、既にアプリを追加したり、ストリーミングサービスをサポートしたテレビを発売してきました。既存のテレビとの最大の違いは、アプリの数。iPhoneアプリの数は150万本を超えており、すべてがテレビにふさわしいとは考えられませんが、普段使っているサービスをテレビで楽しむ場面も増えてくるのではないでしょうか。

iPhoneやiPadの歴史を見てきても、Appleが用意するデバイスとOSの上で、開発者が実現するアイディアによって、新たな用途やトレンドが生まれてきました。

もちろんすべてのアプリがテレビと親和性を持つとは考えられませんが、30万人を超えるアプリ開発者がテレビ向けのアプリ開発に着手することになります。Appleがテレビにアプリを持ち込むということは、開発者のアプリによって作られてきたスマートフォンの文化やビジネスの進化を、テレビでも再現しようという試みと位置づけることができるでしょう。

Siri Remote

新型リモコンは音声認識Siriをサポート。加速度センサーも入りゲームも楽しめる。
新型リモコンは音声認識Siriをサポート。加速度センサーも入りゲームも楽しめる。

Apple TVの1つのウリは、新しいリモコンが付属する点です。

音声コントロールやタッチインターフェイスなどの新しい操作方法について語る前に、Apple TVを使う上で非常にうれしい新機能があります。リモコンにテレビのON/OFFボタン、ボリュームボタンが搭載されたことです。

これで、Apple TVでネット動画を見始める際にも、テレビのリモコンを探さなくても、Apple TVに付属するSiri Remoteだけで済みます。またコンテンツを楽しんでいる間、ちょっと音量が小さいな、と思っても、Siri Remoteから音量を上げることができます。

地味ではありますが、ごちゃごちゃリモコンをいくつも用意しなくて良い、というのはリビングルームでの快適さを高めてくれるでしょう。

映画の検索も音声で。ジャンルを話すと画面に表示してくれる。
映画の検索も音声で。ジャンルを話すと画面に表示してくれる。

Siri Remoteは名前の通り、音声アシスタントのSiriにコマンドを送ることができます。筆者が試したのはまだ英語版のみですが、「アクションムービーが見たい」「アニメを探して」といったコマンドを送り込むことで、すぐに検索結果を画面に表示してくれます。Siriに話しかけてコンテンツを表示してから、「○○(俳優名)出演作品」「今年発表されたもののみ」と言った絞り込みもできます。

絞り込みにも対応。画面ではSF映画の中から「スタートレック」を絞り込んだ。
絞り込みにも対応。画面ではSF映画の中から「スタートレック」を絞り込んだ。

特筆すべきは、サービス横断的にコンテンツを見つけてくれる点です。

スマートフォンやタブレットでの検索も同様ですが、これまでサービスがアプリ単位で提供されてきたため、Netflixを開いたら、Netflix内のコンテンツしか検索できませんでした。Apple TVではiTunes、Netflix、Hulu Plus、HBO Now、Shotwimeの5つのサービスの中からコンテンツを探してくれます。

もちろん各サービスでの契約やコンテンツの購入は必要になりますが、これまでよりもすっきりシンプルに検索が行える点は特筆すべきでしょう。なお検索APIも提供されるとのことで、これをサポートするアプリのコンテンツの候補も検索結果に追加されることになりそうです。

横に構えてゲームも楽しめる。Bluetooth接続のゲームパッドを追加可能。
横に構えてゲームも楽しめる。Bluetooth接続のゲームパッドを追加可能。

Siri Remoteには、タッチパッドと6つのボタンに加えて、加速度センサーが内蔵されています。これらを活用してゲームパッドとして利用する事もできます。

ハンドストラップもつけられ、Wiiリモコンでのプレーと全く同じスタイル。
ハンドストラップもつけられ、Wiiリモコンでのプレーと全く同じスタイル。

イメージとしては、Wiiリモコンそのものです。縦に握って振って操作したり、横に構えて十字キーと2つのボタンでプレーできます。ちなみに、充電用Lightningポートに差し込んでリモコンを手首に固定するハンドストラップまであるようでした。

また、iPhoneなどと接続できるBluetoothのゲームパッドもサポートするため、2人以上の同時プレーを行うことも可能です。

日本のアプリへの期待、まずはニコ動?

iPhoneアプリのノウハウが生かせるため、初期から開発者数は多くなる。
iPhoneアプリのノウハウが生かせるため、初期から開発者数は多くなる。

Apple TVが手元に届くのは10月30日前後移行になるとみられます。日本において発売時期も近く競合となるのは、10月28日にリリースされるAmazon Fire TVです。こちらもアプリによるゲームへの対応、音声入力のサポートを果たしています。

Amazon Fire TVのアドバンテージは、4K(ウルトラハイビジョン)とドルビーデジタルプラスを搭載している点。Apple TVはフルHDのサポートに留まっており、もしも自宅のテレビが4Kに対応しているのであれば、Amazon Fire TVの方がその性能を生かすことができるでしょう。

確かに4Kコンテンツの配信数は少なく、特に米国では4Kの快適なストリーミングに耐えうるネットワークを用意するのは難しいこともあり、時期尚早ではあります。ただ、Netflixや、Amazon自身が提供するビデオサービスでは、4Kコンテンツが増えてきており、Apple TVも短いタイミングでのアップデートが必要になるのではないか、と考えられます。

その点で、将来の機能を先取りした製品とは言いがたいのですが、Apple TVの意義は、テレビにAppleのアプリによる進化のエコシステムを導入しはじめたことでしょう。

これにより、これまでエンターテインメントやニュースをより受動的に楽しむ事が中心だったテレビに、積極的なコンテンツ取得や、新たな用途を追加することになるかもしれません。ただし、アプリの充実が前提であることから、Apple TVを発売してすぐに、そうした劇的な変化を体験することにはならないと考えています。

まだ、どのようなコンテンツが出揃うかは不明ですが、個人的な期待も込めて、日本におけるキーとなるのはニコニコ動画ではないか、と考えています。

Apple TVにはBluetoothキーボードを接続することもできるため、Apple TV向けのニコニコ動画アプリがiPhone並みの品質で用意されるとすれば、テレビにおける最良のニコ動体験が実現できるでしょう。

アプリはiPhone等と共通化でき、異なるデバイス間でのプレーも楽しめそう。
アプリはiPhone等と共通化でき、異なるデバイス間でのプレーも楽しめそう。

また、1つのアプリで、iPhone、iPad、Apple TVの3つのデバイスで操作させることができ、デバイス間での連携や協調プレーなど、リビングルームあるいはその他の場所同士での新しい体験にも期待したいところです。

これは日本国内向けならではですが、海外でもこうしたキラーとなり得るアプリが登場してくると、Apple TVも面白くなっていくのではないでしょうか。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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米国カリフォルニア州バークレー在住の松村太郎が、東京・米国西海岸の2つの視点から、テクノロジーやカルチャーの今とこれからを分かりやすく読み解きます。毎回のテーマは、モバイル、ソーシャルなどのテクノロジービジネス、日本と米国西海岸が関係するカルチャー、これらが多面的に関連するライフスタイルなど、双方の生活者の視点でご紹介します。テーマのリクエストも受け付けています。

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