オートバイのあれこれ『イメージはV8マッスルカー!VMAX』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今日は『イメージはV8マッスルカー!VMAX』をテーマにお送りします。
とにかく“高性能”を追い求めていた1970年代が過ぎ、80年代のオートバイ市場では“独自性”という側面もフィーチャーされるようになってきました。
スズキ『GSX1100S カタナ』、カワサキ『GPz900R』(ニンジャ)、ホンダ『VF750 セイバー』などは、各メーカーがオリジナリティを求めて生み出した、その最たる存在といえるでしょう。
そして今回紹介するヤマハ『VMAX』も、そんなオートバイの一つだと思います。
VMAXが登場したのは、1985年(昭和60年)のこと。
『RZ』シリーズや『XJ』シリーズ等によって日本/欧州市場では好調だった80年代序盤のヤマハでしたが、一方アメリカ(北米)市場へ目を向けると、日欧ほどの勢いはありませんでした。
そのようななか、ヤマハはアメリカに照準を合わせたモデルの開発を決意。
アメリカで根強い人気を誇るドラッグレースから着想を得て、“直線でカッ飛ぶ”オートバイを作ることにしたのでした。
そうした背景から誕生したのが、VMAXです。
VMAXの独自性がほとばしっているのは、何と言ってもその心臓部。
ピークパワー145ps&ピークトルク12.4kg-mをを叩き出す、排気量1,200ccの水冷V型4気筒エンジンを搭載していました。
ダッジ『チャレンジャー』やフォード『マスタング』といったアメリカ伝統のマッスルカーが5,000cc〜7,000ccもの大排気量エンジンを積んでいたのと同様に、ヤマハも当時の同社において最も大きなエンジンだった『ベンチャーロイヤル』用のV4ユニットをVMAXに用いたのです。
また、VMAXのこのエンジンには、さらにもう一歩突っ込んだオリジナリティが持たせられていました。
『Vブースト』機構です。
エンジンの回転数が一定以上に高まると、燃焼室へ入る混合気の量が増える仕組みで、これにより凶暴なダッシュ力を実現していたのです。
このVブースト発動時のロケット加速こそが、VMAXの真骨頂だったといえるでしょう。
エンジン以外では、そのスタイリングも唯一無二といえるかもしれません。
一見、ハーレーダビッドソンのようなクルーザー(アメリカン)スタイルに見えますが、実際のところVMAXはハーレーのように“手足をゆったり投げ出して”乗る設計にはなっておらず、やはりその獰猛な加速を受け止めるためのストイックさを孕んだ味つけがなされていました。
VMAXはデビュー後、スポーツバイクとクルーザーバイクを掛け合わせたような唯一無二のキャラクターによって人気を博し、80年代を彩る“独創マシン”の一つとして名車の仲間入りを果たしたのでした。