【韓国の新型コロナ】5月6日より実施。「韓国版・新しい生活様式」の全容と韓国内での反応。
韓国政府と政府中央室病管理本部は、韓国での連休中(4月30日ー5月5日)も連日、ブリーフィングを行った。
4月30日から昨日(5月7日)までの新規感染者の合計数は49(一日平均で5.5人)。うち「国内感染」は5人(同0.625人)で、「海外流入」が44人(同5.5人)だった。海外感染の流入国としては、クウェートからの事例が増えている。韓国政府側はクウェート在住の韓国人にも注意の喚起しているという。
公表されたデータ面では大きな変化はなかった※。いっぽう最も大きな変化はこの点だ。
「生活様式」
今回はこれについての説明を。
新たに始まる「生活の中での距離確保」の案内。韓国政府保健福祉省アカウントより。
※本稿アップ直前に「韓国内で13人の集団感染発生」の報が入りました。詳細は明日に。
ソーシャルディスタンスが「2メートル」から「2歩」へ
要は「制限が緩和される」という話だ。まずはここに至るまでの経緯を。
ここまで韓国では、政府中央室病管理本部の主導により「強い社会的距離確保」(3月22日-4月19日)「社会的距離確保」(4月20日-5月5日)という区分でのコントロールが行われてきた。
「強い社会的距離確保」(3月22日-4月19日)
国民に外出自粛を求める。原則的には「社会的行動を禁止する」、「強制的処置」。目標は「医療機関が十分に機能する水準まで感染発生抑制」すること。公共機関は運営を中断し、民間機関は運営の中断を勧告しつつ、運営できる業種の制限を行う。これは2度の期間延長があった。
「社会的距離確保」(4月20日-5月5日)
国民に他者との2メートルの社会的距離の確保を求める。制限的な行動許可をするもの。目標は「新規感染者の減少傾向の維持」。公共機関は一部運営、民間機関は同上。
5月5日までの「社会的距離確保」の期間には「制限的な行動許可」の一環として、国内旅行も「現地での行動に気をつけながら行おう」という点が繰り返し伝えられた。
これが、「生活の中での距離確保」と変わる。「原則的な行動許可、例外的な制限」となるのだ。
- 体調が悪ければ3~4日家で静養を
- 人と人との距離を「2歩程度」の「健康距離」に
- 30秒の手洗い。咳は袖口で
- 一日2度以上の換気。周期的な消毒
- 距離は遠くとも心は近くに
これにより、図書館、美術館、博物館などがオープンした。また5月5日からプロ野球が無観客で開幕した。フットサル場などの運動施設も「封鎖」が解除されている。
とはいえ「制限なし」とはいかない。むしろ”注意事項”は少なくない。6日付けの国内最大の通信社「聯合ニュース」は政府発表のマナー勧告内容をこうまとめている。
- カフェなどでは長居しない。椅子を並べて座る。
- 引き続き密集を避ける。仮に密集となっても他者とは向き合わず一方方向を向くことを心がける。
- 外食は食堂などではなく、デリバリーやできるかぎりテイクアウトを。
- 冠婚葬祭も様式の変化を。参席者のために食事を出すことよりも”感謝の気持ちを表す品物”の贈呈を。
- 冠婚葬祭の会場では握手やハグを控え、「目で挨拶」の新しい文化を。
- 接触や滞在時間を減らすため、ご祝儀や香典はオンラインでの入金を。
- 葬式でも現場への30分以上の滞在は避ける。
- スポーツジムのような室内スポーツ施設や野球場、サッカー場などを利用しても、運動後の共用シャワー室利用は控える
- タオルやスポーツウェアなども、個人のものを使用する(タオルや水をグループ共用する点は韓国文化の特徴)
- 映画館、劇場などではなるべく座席の間隔を空けて前売りする。
- 観客が会場で、パフォーマンスや映画の内容に合わせて一緒に歌う習慣も自制すべき。
- デパート、大型マート、ショッピングモールなどでの会計時はスマホ、QRコード、クレジットカードなどを出来る限り利用。
- デパートの試食や化粧品見本テストコーナーの運営は中止を奨励する。
- 公共交通機関を利用する際、混雑していれば次の便を利用する。
- 教会で礼拝を行う時には賛美歌を歌わない。
国内では批判も。「実効性に乏しいのでは」
もちろん、これに対し「すべてが礼賛」ということはない。前出の「聯合ニュース」は「実効性に疑問」としている。
”「体調が悪い時に休む」、「カフェ・飲食店で一方向に座る」など、生活の中の距離を置く指示がどのよう実効性があるかは疑問。5月5日までの「基本的に強制がない勧告」が続くことに変わりはない。個人の努力や事業主・雇用者の自発的な参加に期待するものであるからだ。
また「ジムで汗を流して運動をした後、シャワーを利用しない」という勧告は現実性が落ちる。座席が完売となった映画館や劇場で一席ずつ空けて座ることも不可能である。
国民一人一人が努力する意志があったとしても、「結婚式を催しながら客に食べ物を提供していないか」、「病気の会社に出勤せずに3〜4日に休む」という話は、制度的な裏付けや新しい社会文化の形成前の段階では、守ることが難しい。”
緩めるのはいいが、はたして「国民任せ」でどれほどまで出来るのか、という主旨だ。
「細かいやりとり」は連日のコミュケーションのなせる業
本稿タイトルには「韓国版・新しい生活様式」と打った。どちらも新型コロナ危機の長期化に備え「新たな注意事項」を伝えている点では同じだ。しかしベクトルは逆に近い。日本は「今から、気をつける点を再整理して伝える」というもの。しかし韓国は「自粛の緩め方」を説いているのだ。
筆者自身、4月30日の記事でコロナ対策の「日韓の比較は無用」と書いた。ただし「伝える努力」については別だと。そういう視点で見ると、日韓には”差”がついてしまった。
韓国政府は一日2度、ブリーフィングを行う。11時からは「閣議系」、14時からは「ウィルス専門家系」だ。5月5日にこの合計回数が200回を越えた。細かいコミュニケーションが出来ている。
中央室病管理本部は何度も繰り返す。「また感染が増えたら、第2段階に戻しますよ」「だから引き続き気をつけて下さい」と。緩めてみましょうよ、でも少しでも状況が悪くなればまた、引き締めますよ。という話にも見える。さらに引き締めを「段階別」に示しているのだ。
中央室病管理本部はこの「規制緩和」にこうも続けている。「誰も行ったことない道。しかし進むべき道」。「我々とてすべての感染者を把握しているとは思っていない。今でも隠れた感染者が多くいると考えており、緊張は続けている」。押して、引けるという状況にあるのだ。
参考:韓国の子どもたちが「コロナの一番えらい人」に聞いたこと。「コロナは どれくらい ちいさいですか?」
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※本稿の情報はあくまで韓国の現状に沿ったものです。日本での対策は日本政府や地方自治体の情報をご参照下さい。