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【体操】新潟から世界へ! コロナ禍を逆手に取った新潟経営大学の挑戦

矢内由美子サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター
新潟経営大学体操競技部のメンバー(新潟経営大学提供)

■NCAA主催のオンライン大会にゲスト参加

「新潟から世界へ」を“合言葉”に、画期的な取り組みが始まった。新潟県加茂市にある新潟経営大学体操競技部が、全米体育協会(NCAA)が主催するオンラインでのリーグ戦にゲストとして参加することが発表された。同大学によると、体操競技のオンラインによる海外交流戦は日本で初だという。

 試合は3月18日、日本時間午前9時から。陸軍士官学校(Army West Point)とオンラインで交流戦を行う。(現地時間17日午後8時開始)

 NCAAの体操競技は12チームで編成されており、名門のスタンフォード大学などが覇権を争っている。新潟経営大学が参加するのは男子の試合で、大会へのエントリーは各チーム15人。種目ごとに5人の選手が演技をして5人の点数で勝敗を決める。試合は2チームの対戦形式。2チームは同じ時間帯に演技を行い、同じ審判が採点を行う。

 また、所定のURLにログイン(無料)してアクセスすれば世界中どこからでも視聴可能だ。

【オンラインイベントの視聴URL】 https://virti.us/

オンラインイベント視聴サイトのトップ画面。2チームずつの対戦形式で既に試合が行われたカードもある(新潟経営大学提供)
オンラインイベント視聴サイトのトップ画面。2チームずつの対戦形式で既に試合が行われたカードもある(新潟経営大学提供)

■「ドリームプロジェクト ~新潟から世界へ~」

 この取り組みは、新潟から世界へ体操選手を輩出することを目的とした「ドリームプロジェクト ~新潟から世界へ~」の一環として行われる試合である。

 参加を推し進めたのは新潟経営大学の森赳人監督だ。現役時代はオールラウンダーとして活躍し、日本体育大4年だった2006年に世界選手権出場。卒業後はコナミスポーツで競技を続けた。得意種目は跳馬、平行棒、鉄棒。鉄棒では豪快な離れ技「シュタルダーから伸身トカチェフの一回ひねり(スアレス)」で会場を沸かせた。

 引退後は15年から2年間、JOCスポーツ指導者海外研修員としてロンドンにコーチ留学。帰国後に現職に就いた。

 今回のオンライン交流試合参加の意義を森監督に聞くと、単なる強化という目的にとどまらず、もっと大きな枠組みがイメージされていることが分かった。

 背景にあるのは、卒業後も体操関連の仕事に就く者はインカレ1部校を除けばほとんどいないという現状。コロナ禍で先行きの不透明感が続く今、学生たちは競技生活を送っている中でモチベーションを下げてしまうことが増えているという。

 そこで考えたのが、強化の枠を超え、大学のある新潟県加茂市の地域とも連携するプロジェクトだ。森監督は、「選手たちには日々の練習をするだけではなく、地域に密着して地域から応援してもらう。それによって強化が進み、ゆくゆくは地域に還元するというサイクルを生みたい。体操を軸とした関係人口を増やすことで地域の活性化にもつながる」と説明する。

新潟経営大学体操競技部の森赳人監督(新潟経営大学提供)
新潟経営大学体操競技部の森赳人監督(新潟経営大学提供)

■金メダリストを生み出してきた新潟

 新潟県はオリンピック金メダリストをはじめ、世界選手権代表など多くの日本代表選手を輩出している。オリンピックで日本人最多8個の金メダルを獲得している加藤澤男さんは現在の新潟県五泉市出身。アテネオリンピック団体金メダルの中野大輔さんは新潟市出身だ。モントリオールオリンピックで団体金メダルに輝いた五十嵐久人さんは新潟大学名誉教授を務めている。

 今大会の開催方法は、コロナ禍でどの国も厳しい制限を敷かれている状況だからこその発想とも言える。また、採点競技である体操だからこそ可能な開催方法でもある。

 新潟経営大学体操競技部の部員は23人。世界にも視野を広げている学生たちは、交流試合を楽しみにしている。

新潟経営大学体操競技部の練習風景(新潟経営大学提供)
新潟経営大学体操競技部の練習風景(新潟経営大学提供)

サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター

北海道大学卒業後、スポーツ新聞記者を経て、06年からフリーのスポーツライターとして取材活動を始める。サッカー日本代表、Jリーグのほか、体操、スピードスケートなど五輪種目を取材。AJPS(日本スポーツプレス協会)会員。スポーツグラフィックナンバー「Olympic Road」コラム連載中。

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