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「新嘗祭」から「勤労感謝の日」 前線による全国的な雨のあとは一気に冬へ

饒村曜気象予報士
地上天気図(11月22日15時、左)と予想天気図(11月23日9時の予想、右)

令和3年(2021年)の秋

 令和3年(2021年)の秋は、残暑が長く、10月の中旬までは全国の約半分の地点で最高気温が25度以上の夏日を観測していました(図1)。

図1 夏日の観測地点数と冬日の観測地点数の推移
図1 夏日の観測地点数と冬日の観測地点数の推移

 残暑が長引いていましたが、10月中旬以降はやや強い寒気が南下し、10月17日には稚内、旭川、網走で初雪を平年より10日以上早く観測しています。

 その後も、寒気が周期的に南下するようになり、その度に、最低気温が0度未満という冬日の観測地点が増えましたが、全国の1割くらいで止まっています。

 札幌の初雪の平年は11月1日など、北海道は11月になると平野部でも雪が降ります。

 しかし、稚内、旭川、網走以外では初雪がおくれ、11月14日に帯広、16日に室蘭、19日に札幌と、11月中旬以降でした。

 徐々に強い寒気が南に下がってくることによって冬日がだんだん増えゆき、季節が進むというわけではなかったのです。

 それほど強くない寒気が周期的に南下してきましたが、北日本どまりでした。

11月23日は新嘗祭

 皇室では、古くから天皇陛下がその年に収穫した新穀を天神地祇に勧め、また、親しくこれを食する祭儀である「新嘗祭(にいなめさい)」を、11月の2回目の卯の日に行ってきました。

 皇室で重要な儀式の一つである新嘗祭は、明治6年(1873年)から太陽暦が導入されたことで変更を余儀なくされます。

 今まで通り、太陰暦の11月の2回目の卯の日に行うことにすると、年によっては、翌年1月になることがあって、「新穀」という祭儀の意味がおかしくなってしまうからです。

 太陽暦が導入された明治6年(1873年)は、新暦11月の2回目の卯の日が11月23日であったことから、以後は、11月23日に固定して行われ、昭和22年(1947年)まで続いています。

 そして、昭和23年(1948年)からは、勤労をたっとび、生産を祝い、国民互いに感謝しあう国民の祝日として、「勤労感謝の日(Labor Thanksgiving Day)」ができました。

 令和3年(2021年)は、この勤労感謝の日を境にして、秋と冬が一進一退を繰り返していた晩秋の季節から冬へと進みます。

強い寒気の南下

 沿海州通過の低気圧からのびる前線の影響で、ほぼ全国的に雨の週明けとなりました(タイトル画像参照)。

 雷を伴って強く降った所もあります。

 勤労感謝の日も、北海道では雪や雨が降り、所により雷を伴って激しく降るでしょう。

 東北~西日本の日本海側でも雨や雷雨となる所が多く、山陰では雪の混じる所もありそうです。

 前線が通過したあとは、週半ばにかけて冬型の気圧配置が強まり、上空にこの時季としては強い寒気が流れ込見込みです。

 寒気の強さをみるのに、上空約5500メートルの気温が使われます。

 上空約5500メートルの気温が、氷点下30度以下なら強い寒気、36度以下なら非常に強い寒気ということができます。

 週末中頃に南下する上空約5500メートルで氷点下30度以下の強い寒気は東北地方北部まで、氷点下36度という寒気が北海道まで南下する見込みです(図2)。

図2 上空約5500メートルの気温分布予報(11月24日朝の予報)
図2 上空約5500メートルの気温分布予報(11月24日朝の予報)

 このため、北海道だけでなく、東北北部の平地や、北陸から中国地方の山地でも、24日(水)にかけては雪の積もるおそれがありますので、積雪や、路面凍結による交通障害に注意が必要です。

 週間天気予報をみると、北海道から西日本の太平洋側では雲が多く、札幌は雨より雪の可能性が高いことを示す大きな雪ダルマに小さい傘のマークが続きますし、新潟は週末から大きな傘マークに小さな雪マークがでてきます(図3)。

図3 各地の週間天気予報(数字は最高気温)
図3 各地の週間天気予報(数字は最高気温)

 雪の可能性が高くなるのです。

 また、太平洋側の各地では晴れの日が続き、沖縄では曇りの日が続く予報になっています。

 つまり、冬特有の日本を3分割する天気となる見込みです。

 また、最高気温は、那覇では20度以上の日が続きますが、東日本太平洋側から西日本の各地では15前後の気温が続きますし、札幌では最高気温でも一桁の日が続きます。

 これまでとは違って、一気に気温が低くなり、初雪や初氷、冬日といった冬の便りが次々に届くと思われます。

東京の天気

 秋から冬に向かって気温は徐々に下がってゆくというのは、平年値での話です。

 特定の年で見ると、高くなったり低くなったりしながら下がってゆきますが、大きく見ると、階段状です。

 ある温度を挟んで高かったり低かったりしていたのが、低気圧や前線の通過をきっかけとして一段低い温度を挟んで高かったり低かったりするのです。

 東京も、10月中旬に気温が一段下がった後は、1か月近くも、ほぼ同じ値(最高気温は20、最低気温は12度)を挟んで高くなったり低くなったりしていました。

 しかし、前線が通過した勤労感謝の日以降は、もう一段下がって、最高気温が15度前後、最低気温が5度前後となる見込みです(図4)。

図4 東京の最高気温と最低気温の推移(11月23~29日は気象庁、11月30日~12月8日はウェザーマップの予報)
図4 東京の最高気温と最低気温の推移(11月23~29日は気象庁、11月30日~12月8日はウェザーマップの予報)

 東京も冬の到来となって12月を迎えます。

タイトル画像、図2、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図4の出典:気象庁とウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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