スーツや本代、自腹が多いサラリーマンは「特定支出控除」の活用も
「会社員だから節税なんてできない!」――。そんな声をよく聞きます。その結果、税金に無頓着になってしまう人も多いですね。
会社員でも、仕事をする上で必要だと認められた経費は、一定額を超えれば確定申告をすることによって税金の還付を受けることができるのをご存知でしょうか?「特定支出控除」という制度があるんです。
特定支出の合計額が給与所得控除額の1/2を超えれば対象になります。例えば、年収300万円の人の場合、給与所得控除の半分だと54万円になります。
例えば、1月1日から12月31日までに100万円の特定支出がかかった場合、年間54万円を超えた部分が対象になるため、46万円が特定支出控除の対象になります。所得税率が5%なら約2万3000円の所得税が還付される計算にです。また、次の年に徴収される住民税も少なくなります(約4万6000円)。
特定支出として認められるのはどのような支出なのでしょうか。特定支出控除の対象は通勤費、転居費、研修費、資格取得費、帰宅旅費、勤務必要経費の6種類です。
「特定支出控除」の対象となる支出
通勤費 通勤のために必要な交通機関の利用等のための支出
転居費 転勤に伴う転居のための支出
研修費 職務の遂行に直接必要な知識等を習得するための研修に要する支出
資格取得費 資格を取得するための支出でその者の職務に直接必要なもの。2013年分以降は、弁護士、公認会計士、税理士などの資格取得費も対象
帰宅旅費 単身赴任などの場合で、勤務場所と配偶者が居住する場所との間の旅費に要する支出
勤務必要経費(上限65万円) 職務に関連する書籍などの図書費、勤務場所において着用することが必要とされる衣服費、得意先との接待などの交際費等
※特定支出のうち、会社から支給される分があり、かつ、その部分に所得税が課されない場合は、特定支出に含めることはできない
例えば、転居に伴う引っ越し代、仕事に必要な研修費、職務に直接必要で取得した公認会計士などの資格取得費、単身赴任中の人が帰宅する際の旅費、得意先との接待費などが挙げられます。勤務必要経費(図書費、衣服費、交際費等)の上限は合計で65万円までです。
注意点として、いずれも会社が証明した支出に限られます。また、確定申告の際に、業務に関する経費であるという会社の証明書や支出を証明する領収書などが必要になります。
交際費などを使ったら、領収書をもらうようにしましょう。また、通勤手当のように、会社から支給があり、支給されている部分が非課税の場合は、特定支出に含めることはできません。細かいところは勤務先の担当部署や管轄の税務署などに確認をしてみてください。
特定支出控除を受けるには、会社の証明書を得たり、給与所得控除の半分を超えるという条件のハードルなどが高かったりします。
しかし、夫婦二人で働いている場合はどちらかが転勤などで配偶者と離れて生活をすることになるケースもあるでしょう。そうなれば旅費が高額になる可能性がありますし、会社にも経費であるという説明がしやすいのではないでしょうか。
このコラムの「大増税時代を生き抜く、サラリーパーソンの節税術」でも医療費控除、寄付金控除、雑損控除についてお伝えしましたが、それらに加えて「特定支出控除」にも注目してみてはいかがでしょうか。確定申告は自営業の人だけの話ではありません。