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「防御率1位=サイ・ヤング賞」なのか。ナ・リーグの最優秀防御率はスネル、ア・リーグはコール

宇根夏樹ベースボール・ライター
ゲリット・コール(ニューヨーク・ヤンキース)Aug 2, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 サイ・ヤング賞のファイナリスト――実際は、すでに終わっている投票で得たポイントの上位3人――は、ナ・リーグが、ブレイク・スネル(現FA/前サンディエゴ・パドレス)、ローガン・ウェブ(サンフランシスコ・ジャイアンツ)、ザック・ギャレン(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)、ア・リーグは、ゲリット・コール(ニューヨーク・ヤンキース)、ソニー・グレイ(現FA/前ミネソタ・ツインズ)、ケビン・ゴーズマン(トロント・ブルージェイズ)だ。

 それぞれの防御率の順位は、ナ・リーグが1位と4位と7位、ア・リーグは1位と2位と4位。防御率のトップ3が揃っているわけではないが、両リーグとも、1位の投手はファイナリストに入っている。ちなみに、ナ・リーグの防御率2位と3位は千賀滉大(ニューヨーク・メッツ)とジャスティン・スティール(シカゴ・カブス)、ア・リーグの3位はカイル・ブラディッシュ(ボルティモア・オリオールズ)だ。

 今世紀のサイ・ヤング賞投手は、以下のとおり。

筆者作成
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 延べ44人のうち、防御率1位は21人なので、半数に満たない。ただ、2017年以降に受賞した12人は、3分の2が防御率1位、あとの3分の1は防御率2位だ。後者の4人の防御率も1位とそれほど変わらず、差は0.20未満だった。例えば、昨シーズン、ナ・リーグのサイ・ヤング賞投手となったサンディ・アルカンタラ(マイアミ・マーリンズ)は防御率2.28、1位のフリオ・ウリーアス(ロサンゼルス・ドジャース)(現FA/前ロサンゼルス・ドジャース)は防御率2.16だ。

 近年の結果からすると、今シーズンは、スネルとコールが受賞する可能性が高いように見える。

 特に、スネルの防御率2.25は、群を抜いて低い。2位の千賀は、防御率2.98だ。FIPのトップ3はファイナリストになっておらず、ウェブが3.16(4位)、ギャレンが3.27(5位)、スネルは3.44(6位)。その差は大きくなく、3人とも、3.15以上3.45未満だ。FIPは、フィールディング・インディペンデント・ピッチングの略。ざっくり説明すると、守備の要素をできる限り排除した防御率だ。

 スネルの与四球率4.95はリーグで最も高く、180.0イニングは、ファイナリストの他2人より30イニング以上少ない。それでも、ダントツの防御率からすると、2度目のサイ・ヤング賞を手にすると思われる。

 ア・リーグのファイナリスト3人は、コールが209.0イニング(1位)を投げて防御率2.63(1位)とFIP3.17(4位)、グレイが184.0イニング(12位)で防御率2.79(2位)とFIP2.83(1位)、ゴーズマンは185.0イニング(10位)で防御率3.16(4位)とFIP2.97(2位)だ。

 スネルと違い、コールの防御率は抜きん出てはいないものの、FIPも高くなく、イニングは最も多い。こちらも、コールが受賞するのではないだろうか。

 コールはサイ・ヤング賞に選ばれたことがないが、スネルはタンパベイ・レイズ時代の2018年に受賞している。両リーグでサイ・ヤング賞なら、ゲイロード・ペリーランディ・ジョンソンペドロ・マルティネスロジャー・クレメンスロイ・ハラデイマックス・シャーザー(現テキサス・レンジャーズ)に続く、7人目となる。

 なお、与四球率の高い防御率1位とサイ・ヤング賞については、9月にこちらで書いた。

「リーグ・ワーストの与四球率5.17でもサイ・ヤング賞に選ばれる!? 防御率2.50はリーグ・ベスト」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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