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リーグ・ワーストの与四球率5.17でもサイ・ヤング賞に選ばれる!? 防御率2.50はリーグ・ベスト

宇根夏樹ベースボール・ライター
ブレイク・スネル(サンディエゴ・パドレス)Sep 2, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 9月2日、ブレイク・スネル(サンディエゴ・パドレス)は、6イニングを投げ、相手に三塁を踏ませなかった。奪三振が8、与四球は4。被安打3本はいずれもシングル・ヒットで、そのうちの1本は内野安打だった。

 今シーズンは、この日を含め、28登板で155.0イニングを投げ、リーグ・ベストの防御率2.50を記録している。奪三振率11.67と201奪三振は2位だ(9月2日時点)。

 一方、与四球率は5.17。ナ・リーグで現時点の規定投球回――チームの試合数×1.0――に達している27人のなかで最も高い。与四球は、最多の89を数える。

 各シーズンの防御率リーグ1位を調べたところ、与四球率4.00以上の投手は、8人が見つかった。

筆者作成
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 また、サイ・ヤング賞を受賞したシーズンに与四球率4.00以上の投手は、3人いた。下のリストは、与四球率3.00以上だ。

筆者作成
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 防御率リーグ1位とサイ・ヤング賞のどちらにも、そのシーズンに与四球率5.00以上の投手は見当たらなかった。見落としがなければ、前者はキング・コール(1910年)の与四球率4.88、後者はボブ・ターリー(1958年)の与四球率4.70が最も高い。今シーズンのスネルは、どちらの記録も塗り替える可能性がある。

 もっとも、現時点で1位に位置する防御率はともかく、サイ・ヤング賞に選ばれるかどうかは、不透明だ。

 今シーズンのスネルの場合、多くの打者を歩かせても、防御率からわかるとおり、ホームインされることは少ないので問題はない……とは言いきれない。

 スネルは、28登板中15登板が100球以上――80球未満はなく、22登板は95球以上――ながら、7イニング目のマウンドに上がったのは2登板に過ぎない。8イニング目は皆無だ。要因は一つではないが、与四球がこれほど多くなければ、もっと長いイニングを投げることができていたと思われる。ちなみに、ナ・リーグでスネルと同じ、先発28登板の4人は、いずれも169イニング以上を投げている。スネルより、14イニング以上多い。

 また、スネルのFIPは3.69だ。リーグ9位に位置する。

 FIPは、フィールディング・インディペンデント・ピッチングの略。ざっくり説明すると、守備の要素をできる限り排除した防御率だ。奪三振、与四球と与死球、被本塁打を基に計算する。

 直近10シーズン(2013~22年)にサイ・ヤング賞を受賞した延べ20人は、防御率とFIPのどちらも、そのシーズンのトップ8に入っている。2016年に防御率8位(2.96)とFIP5位(3.24)のマックス・シャーザー(当時ワシントン・ナショナルズ/現テキサス・レンジャーズ)と、2021年に防御率1位(2.84)とFIP8位(3.69)のロビー・レイ(当時トロント・ブルージェイズ/現シアトル・マリナーズ)を除くと、あとの18人は、防御率もFIPもトップ5だ。2018年に受賞のスネル(当時タンパベイ・レイズ)は、防御率1位(1.89)とFIP5位(2.94)だった。

 今シーズンのナ・リーグで、9月2日を終え、どちらもトップ10は6人。スネルが防御率1位とFIP9位、ジャスティン・スティール(シカゴ・カブス)が2位と3位、千賀滉大(ニューヨーク・メッツ)が3位と6位、ザック・ギャレン(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)が6位と5位、ローガン・ウェブ(サンフランシスコ・ジャイアンツ)が8位と4位、スペンサー・ストライダー(アトランタ・ブレーブス)は10位と1位だ。ストライダーは、245三振を奪い、奪三振率13.84を記録している。与四球率は2.77だ。

筆者作成
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 スネルは、2度目のサイ・ヤング賞を手にしてもおかしくないが、僅差の受賞になるかもしれない。5年前に受賞した時の1位票は、スネルが17、ジャスティン・バーランダー(当時ヒューストン・アストロズ/現アストロズ)は13。その差は、15ポイントだった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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