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南東側で特に積乱雲が発達する上空寒気の低気圧(寒冷低気圧)がゆっくり東進

饒村曜気象予報士
日本海西部の寒冷低気圧の雨と雲の予想図(令和6年5月16日9時の予想)

前線の南下

 令和6年(2024年)5月15日は、ほぼ全国的に雨を降らせた低気圧が日本の南海上に南下したことから、西~東日本の太平洋側で雲が多く、所により雨が降ったほかは、晴れて気温が高くなった所が多くなりました(図1)。

図1 地上天気図(令和6年(2024年)5月15日12時)
図1 地上天気図(令和6年(2024年)5月15日12時)

 ゴールデンウィークの頃の記録的な暑さには及びませんが、平年並みか平年より高い気温となっており、最高気温が30度以上の真夏日を観測した所はありませんでしたが、最高気温が25度以上の夏日を観測したのが全国で311地点(気温を観測している914地点の約34パーセント)もありました(図2)。

図2 全国の真夏日、夏日、冬日の観測地点数の推移(5月16日以降は予想)
図2 全国の真夏日、夏日、冬日の観測地点数の推移(5月16日以降は予想)

 5月16日~17日は少し夏日の観測地点数は減る見込みですが、18日の土曜日は、夏日が今年最多の618地点(約68パーセント)となる見込みです。

 ただ、5月18日の真夏日は20地点(約2パーセント)の予想で、5月5日の真夏日、116地点(約13パーセント)には及ばないでしょう。それだけ、ゴールデンウィーク中は季節外れの暖かさの所があったのです。

 紫外線が一番強いのは、太陽が真上に近い所を通るようになる6月21日の夏至の頃ですが、すでに紫外線が強くなっています。

 夏至の前の5月から6月は、夏至の後に比べて気温が低いことから、長時間屋外にいて多くの紫外線を浴びがちです。紫外線対策が必要なのは、暑くて長時間屋外にいることが苦になる真夏より、これから夏至までの晴れた日です。

寒冷低気圧の南東側に注意

 上空約5500メートルの気温分布予想をみると、氷点下21度以下と、この時季としては強い寒気が朝鮮半島から日本海西部に南下しています(図3)。

図3 上空約5500メートルの気温分布予想(5月16日朝の予想)
図3 上空約5500メートルの気温分布予想(5月16日朝の予想)

 上空に寒気が入っているときは、上空の天気図(高層天気図)では寒冷低気圧と呼ばれる低気圧がはっきりと解析されるのですが、地上天気図でははっきりわからないことが多いのです。しかし、上空の寒気が強い場合には、図1のように、地上天気図でも前線を持たない小さな低気圧として解析されます。

 しかも、今回は図1のように地上天気図でもわかるようになった低気圧が発達し、台風のような雲の渦ができる見込みです(タイトル画像)。

 寒冷低気圧は、普通の低気圧と違って前線を伴わず、動きが遅いのが特徴で、5月17日9時の段階でもまだ北海道です(図4)。

図4 予想天気図(左は5月16日9時、右は17日9時の予想)
図4 予想天気図(左は5月16日9時、右は17日9時の予想)

 そして、寒冷低気圧の南東側の下層には低気圧に向かって暖かい空気が流入するため、特に大気が不安定になります。

 これから低気圧の南東側に入る西〜東日本では、5月16日〜17日にかけて、発達した積乱雲による落雷や竜巻などの激しい突風、急な強い雨、降ひょうに注意してください。

 最新の気象情報の入手に努め、積乱雲が近づくサインを発見したときは、すぐに安全な場所へ避難してください(図5)。

図5 積乱雲が近づくサイン
図5 積乱雲が近づくサイン

タイトル画像、図3、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図1、図4の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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