テレワーク普及で「転勤」激減! 引っ越し業者はどうなる?
■「転勤族」「転妻」は死語に?
数年後、確実に死語になっているだろう言葉、それが「転勤族」「転妻(てんつま)」だ。転勤はゼロにならないだろうが、激減することは間違いない。同じように「単身赴任」も死語候補と言える。
当然のことながら、新型コロナウイルス感染症の影響でテレワークが一気に普及したことによる。富士通やカルビーは、従業員の働き方を全面的に見直し、転勤や単身赴任を原則やめてテレワークと出張で対応すると発表した。
ちょうど2年前、2018年6月に「転勤族」はオワコン? これからの転勤改革という記事を書いた。
まさか、このような形で「転勤」という概念が崩れていくとは、想像もしていなかった。
■発想の逆転だけで「コスパ」は大幅アップ!
信頼関係を築くために、リアルに顔を合わせることは必要だ。しかし毎日のようにリアルで対面しなくてもいい時代になった。
たとえば東京から仙台へ異動が決まったら、最初の一週間ぐらいは仙台支社にいてもいいだろう。同僚の大半が在宅勤務であっても、異動してきた新しい仲間と顔を合わせるために、このときばかりは仙台オフィスに出勤してくれるかもしれない。
半分ぐらいはオンラインでの参加になるかもしれないが、歓迎会も開いてくれるだろう。
これでいいのだ。受け入れる側も、新たに組織メンバーが増えたからといって、わざわざリアルに招集する必要はない。当人が気兼ねなく東京へ戻れなくなるからだ。大事なことは「心」だ。「体」は東京にあっても、「心」が仙台に異動すればいいのである。
知人の単身赴任者たちは、単身赴任先から「Skype」や「FaceTime」を使って以前は家族と交流していた。とくに幼い子どもがいる家庭なら、いくら仕事とはいえ家族が恋しいだろう。奥さんに子どもの写真や動画を毎日のように送ってもらう者もいた。
しかし、テレワークの普及がこれを逆転させる。
家族と一緒にいながら転勤先の上司や部下と「Zoom」や「Teams」を使って繋がり、仕事をすることになる。最初は慣れなくても、オンラインのほうが結果的に接触頻度が増えるため、やり方さえ間違えなければ、しばらくして関係は構築されていく。
このことによって転勤族や単身赴任者の「人生のコストパフォーマンス」は大幅に向上するだろう。仕事と家庭の両立が、高い次元で叶うからだ。
まさに発想の逆転。なぜこれまでそうやらなかったのかと、疑いたくなるほどだ。
■ますます「所有から利用」の時代へ
そもそも転勤とか単身赴任というのは、企業側にとっても生産性の悪い発想だ。とくに現代はクラウドコンピューティングに代表されるように、「所有から利用」へと価値転換が図られている。
家族がいる住居とさらに、赴任先の住居も確保しなければならないのは、当然のことながら、企業にとっても負担が大きすぎる。
新型コロナウイルスの影響で休業要請を受けた企業を、最も苦しめたのは「家賃の支払い」である。売上を見込めないときでも、固定費は容赦なくかかってくるのだから、当然経営を圧迫させる要因となる。オフィス縮小や分散を考える企業が増えているのは、当然の帰結と言える。
もう「所有」の時代ではなくなったのだ。
■引っ越し業者はどうなる?
転勤が減れば、当然「引っ越し業者」に影響が及ぶだろう。実際に緊急事態宣言時は、それに伴う「引っ越し回避」が急増した。
大学もオンライン授業が当たり前になれば、学生の引っ越し需要も減る。とにかく「家族が離れて暮らす」というのは効率が悪い。その期間ずっと固定費が増えることになるからだ。
この潮流は引っ越し業者にとっては、打撃かもしれない。人口減もあり、個人引っ越しの需要は今後下降線をたどる可能性が高いからだ。
しかし前述したとおり、オフィス移転の需要は増えるいっぽうだ。このことにより、法人相手の引っ越し事業は活況に転じるのは間違いない。引っ越し業者は対策として、個人向けのCMや広告を制限し、法人営業を強化していくべきだろう。
このようにコロナの影響で、ほぼすべての企業が、戦略転換を迫られる。そして感度が低い企業は、確実に淘汰されていくはずだ。
だからこそビジネスパーソンは感度を上げ、これまでとはまったく違った視点で物事を疑い、見定める必要がある。