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東京で暮らす夫から遠く離れ、南の島へ!ひとり移住(期間限定)のきっかけは家の契約更新?

水上賢治映画ライター
「夫とちょっと離れて島暮らし」のイラストレーター、ちゃず 筆者撮影

 奄美地方で公開が始まると、異例の連日満員御礼!その反響を受けて、現在東京での公開が始まったドキュメンタリー映画「夫とちょっと離れて島暮らし」。

 奄美群島の加計呂麻島に期間限定移住していたイラストレーターのちゃずの島暮らし生活をみつめた本作は、いろいろな視点から語れる1作といっていいかもしれない。

 それこそ島暮らしに憧れている人にとっては、その生活のひとつの指針になるかもしれないし、夫とちょっと離れて暮らすという観点から、夫婦関係の在り方について考える人もいるかもしれない。

 もちろんInstagramのフォロワーが10万人を超す人気イラストレーターのちゃずが、島でどんな生活を送っていたかに興味を抱く人もいることだろう。

 夫と離れて島暮らしをはじめた、ちゃずの何に心惹かれ、彼女との日々から何を感じたのか? 

 本作については、手掛けた國武綾監督に訊く全四回インタビュー(第一回第二回)を第二回まで届けた。

 それと並行して、今度は、現在、五反田の奄美創作料理店「みしょーれ奄美」で個展「ちゃず展」を開催中のイラストレーター、ちゃず本人のインタビューをお届けする。(全四回)

夫と別居しての島暮らしのきっかけは賃貸契約の更新?

 映画「夫とちょっと離れて島暮らし」のタイトルになっているように、ちゃずは夫と離れて、奄美群島の加計呂麻島西阿室集落での島暮らしを始める。

 そうなったきっかけは、実のところ賃貸契約の更新だったと明かす。

「結婚4年目、わたしが26歳ぐらいだったんですけど、それまで住んでいた家の契約の更新が迫ってきた。

 そのときに、ほんとうにたまたま、夫と『次、どこ住む?』という話になったんですよ。

 それで、話してみたら、今回の映画でも触れていますけど、なんと真逆だった(苦笑)。

 夫は仕事の勤務も含め、なにかと便利で不自由のない都会暮らしがいいと思っていて、わたしは田舎暮らしがいいと思っていた。

 そこで、はじめて、『そうなんだ、違うんだ』と気づいたんですよ。

 わたしは生まれも育ちも東京で。ほぼ1人暮らしの経験もないまま結婚して、夫が東京勤務でしたから、そのまま東京に住み続けていた。

 でも、本心としては将来的には東京を離れて南の島ででも暮らせたらなと思っていたんです。

 それから、わたしは、『妻なので夫の仕事に合わせて、なにかあってもついていくべき』みたいな意識を勝手に自分に課していて。

 『南の島に住みたい』とか、それまでは思っていても言わないできた。

 ただ、このときは、このまま我慢し続けるとどこかで爆発して取り返しのつかないことになりかねない、そう思って、思い切って勇気を出して夫に切り出してみたんです。

 『わたしは南の島に住みたいんだけど……』と。

 そうしたら、夫が『いいんじゃない』と言ってくれたんですよね。

 夫自身は、仕事のこともあって一緒に行くことは難しい。だから、『それぞれ好きなところに住んでみたらいいんじゃないか』ということで話しがまとまったんです。

 なので、家の契約更新が、島暮らしのきっかけです(笑)」

夫とちょっと離れて島暮らし」より
夫とちょっと離れて島暮らし」より

当時、精神的に追い込まれていたところもあった

 そのころ、少し精神的に追い込まれていたところもあったと言う。

「わたしはずっとフリーランスでイラストレーターとして活動しているんですけど、性格的になにかを断ることがとても苦手で。

 お仕事を引き受け過ぎちゃって、多忙になっていっぱいいっぱいになっちゃうことがあったんですね。

 それで疲弊してしまって、創作意欲が落ちて、心も体も支障をきたすような感じになることがありました。

 それで都会だと心が休まらない。だから、離れたい気持ちが強くなっていったのかもしれません。

 あと、映画でも触れていますけど、亡くなった父が、精神に支障をきたしている期間が長かった。

 そういうこともあって、わたし自身がちょっとうつ病とかに敏感で、そうならないように気をつけていたところがあって。

 今思い返すと、自分の気持ちが平静を保てる限界が来ているかもしれないと感じ始めたときというのが、ちょうど家の契約更新時期のころと重なっていたかもしれません。

 だから、家の更新となったときに『ああ、このまま、また同じような都会生活が続くかもしれない。そうなるとまずいかも』と思ったので、夫に切り出したのかもしれません。

 大げさに言うと、そんな感じですけど、でも、実際はそこまで逼迫(ひっぱく)はしてなかった気がします。

 夫と、お互い『好きなところに住んでみよう』みたいな、前向きな気持ちで、『じゃあ別居生活スタートしてみるか』っていう感じだったと思います」

「夫とちょっと離れて島暮らし」のちゃず 現在、開催中の五反田・「奄美創作料理みしょーれ奄美」にて 筆者撮影
「夫とちょっと離れて島暮らし」のちゃず 現在、開催中の五反田・「奄美創作料理みしょーれ奄美」にて 筆者撮影

「住みたい!」と思ったのは、加計呂麻島だけでした

 こうして、マムさんとヘイ兄という知り合いのいる加計呂麻島に向かうことになる。

「加計呂麻島に決めたのは、以前訪れたときに、もう『住みたい』と思ったんですよね。もう住むならば加計呂麻島と決めていました。

 ほかにもいろいろと旅行で島には行っていたんです。

 でも、どこも『旅行で訪れる分にはいいところだな』どまりで。『住みたい』『暮らしたい』とは思わなかったんです。

 その中で、加計呂麻島に関しては、マムさん通して島の人たちと知り合って、自然と無理なくみなさんと親しくなったんですよね。

 他人を家に呼ぶような文化があって、わたしのようなはじめて島にきたような者にも『ちょっとコーヒーでも飲んできな』みたいに声をかけてきてくれる。

 なにか実家みたいな温かさがあるんです。それで、もう『住みたい!』って思いました」

(※第二回に続く)

「ちゃず展」ポスタービジュアル  提供:ちゃず
「ちゃず展」ポスタービジュアル  提供:ちゃず

「ちゃず展」

1/29(土)まで五反田・「奄美創作料理みしょーれ奄美」で開催中!

※新型コロナウィルス感染拡大防止の為、現在、ランチ営業は休止。夜の営業に関しまして、都の要請に従い、営業中。感染拡大防止の為、徹底した感染対策でご来店ください。

詳細は → 公式サイト

「夫とちょっと離れて島暮らし」ポスタービジュアル (C)「夫とちょっと離れて島暮らし」製作委員会 
「夫とちょっと離れて島暮らし」ポスタービジュアル (C)「夫とちょっと離れて島暮らし」製作委員会 

「夫とちょっと離れて島暮らし」

監督:國武綾

プロデューサー:中川究矢

出演:ちゃず、マム、ヘイ兄、加計呂麻島 西阿室集落のみなさん、

けんちゃん ほか

大阪 シアターセブンにて2月公開予定

公式サイト https://chaz-eiga.com/

場面写真はすべて(C)「夫とちょっと離れて島暮らし」製作委員会

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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