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シリア北部でトルコ軍ドローンが爆撃を続けるなか、今度はイスラエル軍ドローンも南部でミサイル攻撃

青山弘之東京外国語大学 教授
SANA、2020年3月3日

トルコ軍ドローンの爆撃にもかかわらず、シリア軍はサラーキブ市を再制圧

イドリブ県では、英国に拠点を置く反体制派NGOのシリア人権監視団によると、トルコ軍はが2日、M5高速道路とM4高速道路が交差する要衝のサラーキブ市一帯のシリア軍拠点に対してバイラクタルTB2無人航空機(ドローン)で爆撃を加えた。

トルコ軍はまた、地上部隊がアレッポ県東部のカブターン・ジャバル村、アンジャーラ村、シャイフ・アキール山、カフル・ハラブ村を砲撃した。

「決戦」作戦司令室はトルコ軍の航空・砲撃支援を受けて、サラーキブ市一帯、同市近郊のジャウバース村、タルナバ村一帯、アレッポ県東部でシリア軍と激しく交戦した。

「決戦」作戦司令室は、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構とトルコの庇護を受ける国民解放戦線(国民軍)などからなる武装連合体。

しかし、シリア軍地上部隊はシリア・ロシア軍の航空支援を受けて反撃し、「決戦」作戦司令室との激しい戦闘の末、サラーキブ市を再制圧した。

サラーキブ市は2月5日にシリア軍が制圧したが、トルコの支援を受ける「決戦」作戦司令室は26日にこれを奪還したと発表していた。

シリア軍によるサラーキブ市再制圧を受け、ロシア軍はサラーキブ市に憲兵隊を派遣したと発表した。

シリア軍の砲撃でトルコ軍兵士4人死傷、3カ村を制圧

シリア軍地上部隊はまた、イドリブ県東部のタフタナーズ航空基地に設置されているトルコ軍の拠点を砲撃した。シリア人権監視団によると、これにより、トルコ軍兵士1人が死亡、3人が負傷した。

シリア軍地上部隊はさらに、シリア・ロシア両軍の航空支援を受けて、県南部で「決戦」作戦司令室に攻勢をかけ、フライフィル村、ダール・カビーラ村、ハザーリーン村を奪還した。

ロシア軍戦闘機の爆撃で住民10人死傷

一方、ロシア軍戦闘機は、イドリブ県南部やサラーキブ市一帯のほか、フーア市、アドワーン村を爆撃し、フーア市では住民2人が死亡、6人が負傷、アドワーン村では国内避難民(IDPs)2人が死亡した。

Step News、2020年3月2日
Step News、2020年3月2日

イスラエル軍機がクナイトラ県の車輌をミサイル攻撃

イドリブ県でシリア軍とトルコ軍が戦闘を続けるなか、国営のシリア・アラブ通信(SANA)によると、イスラエル軍が占領下ゴラン高原上空からクナイトラ県のアイン・ティーナ村で車輌1台に対してミサイル攻撃を行った。

シリア人権監視団によると、攻撃はイスラエル軍無人航空機(ドローン)によるもので、標的となったのは親政権民兵の車輌。

死傷者が出たかは不明だという。

これに関して、イスラエル軍のアヴィハイ・アドライ報道官はツイッターの公式アカウント「イスラエル軍部隊は先ほど、ゴラン高原北部地域で狙撃が行われようとしているのを補則した…。これを鑑み、同部隊はこの作戦を実施しようとしていた車を攻撃した」と発表した。

プーチン大統領「我々は誰とも戦争するつもりはない」

ロシアのヴラジミール・プーチン大統領は、「ウラジミール・プーチンの20人の高官」と題されたタス通信の新連載コーナーのなかで、イドリブ県情勢の緊迫化に関して、「我々は誰とも戦争するつもりはない。だが、我々は、誰かが我々に対して戦争をしかけるようと思いつかないようにするため、防空分野において事態に備えるようと取り組んでいる」と述べた。

(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)

東京外国語大学 教授

1968年東京生まれ。東京外国語大学教授。東京外国語大学卒。一橋大学大学院にて博士号取得。シリアの友ネットワーク@Japan(シリとも、旧サダーカ・イニシアチブ https://sites.google.com/view/sadaqainitiative70)代表。シリアのダマスカス・フランス・アラブ研究所共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員を経て現職。専門は現代東アラブ地域の政治、思想、歴史。著書に『混迷するシリア』、『シリア情勢』、『膠着するシリア』、『ロシアとシリア』など。ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」(http://syriaarabspring.info/)を運営。

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