海面上昇が心配、コペンハーゲン市民に問われる適応力
北欧デンマークの首都コペンハーゲンはユネスコによって2023年の建築世界首都に任命された。
7月に開催された国際会議UIAには世界中から建築家や専門家が集まり、未来のサステナブルな住居や都市開発を議論。
国際会議に合わせて、コペンハーゲンの街中には「SDGパビリオン」という実験的な展示オブジェが出現した。
街の象徴的な湾岸地区を含む選ばれた場所で、探検的な建造物が道行く人を迎える。
国連の17の持続可能な開発目標(SDGs)の1つ以上に関連し、未来に向けた建築に関して正しい問いを投げかけることを目指している。
SDGsが社会的、経済的、環境的な持続可能性に関する複雑なゴールとサブゴールを含んでいるように、SGDパビリオンもまた社会課題に対する答えを提供しようとしていた。
パビリオンは誰もがアクセスできるように設計されており、展示終了後のリサイクル、再組み立て、再利用を計画し、素材の責任ある消費に重点を置いて建設されている。「素材の責任ある消費」は国際会議UIAでも中心となったテーマだった。
まぶしい赤色が目を引く「ラフト」は運河の浮き代に設置され、来訪者に感覚的な体験を提供する。浮き代に立つと、風によって常に動きを変える波に合わせて、自分も一緒に揺れる。構造物は水中の動物からインスピレーションを受け、水の動きによって生きた動物となるようにデザインされている。
湾岸地区が多いコペンハーゲンでは、気候危機による海面上昇が身近な心配事でもある。海面上昇は都市住民にも懸念をもたらしており、このように海面の動きや変化を体現するオブジェはデンマークだからこそ、課題の深刻さを帯びる。
デンマーク市民にとって海面上昇がこれほど身近な課題だということは、意外に思う人もいるのではないか。まさに「ラフト」の波のように、課題に「適応」していくことがこれからはより求められる。
製造会社のCLTデンマークは、コンクリート、石積み、鉄などの従来の素材に代わる、環境負荷が低く、現場で廃棄物をほとんど出さない素材を提供している。
BEVICA財団は移動に障がいを持つ人々のために活動。機能的な能力に関係なく、すべての人のために設計された社会を作ることを信念としており、ラフトに関するプロジェクトリーダーに助言を行った。
パビリオンは高品質の材料で解体できるように作られている。フローターと木製プラットフォームはメーカーに返却され、再利用される。生地は、建築を学ぶ学生たちによって、新たなパブリック・インスタレーションの制作に使用される。