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コロナ禍情報の混乱が止まらない。官邸の情報発信の体制および方法の再構築を!

鈴木崇弘政策研究アーティスト、PHP総研特任フェロー
政治や政権からの適切な情報発信が今こそ必要だ!(写真:つのだよしお/アフロ)

 筆者は、今年の1月25日、Yahoo!ニュース(個人)に「菅総理、今こそ政治家としてのメッセージの発信を!」という記事を書いた。

 それは、コロナ禍という危機的状況において、日本国民の一人として、国民がその厳しい状況を乗越えていくために、政治のリーダーである菅総理の本心からの国民への声・メッセージが是非とも必要だという強い思いから書いたものだ。残念ながら、菅総理からそのような声を聞く機会はいままでのところない。

 他方、コロナ禍は、その後も一進一退を続けていたが、新型コロナウイルス対策の改正特別措置法で新設された「まん延防止等重点措置(マンボウ)」が2月13日には施行され、4月に入ると東京都をはじめとする日本各地で適用された。しかしながら、それでも、コロナ禍による感染は収束するどころか拡大し、政府は、4月23日4都府県(東京都、京都府、大阪府及び兵庫県)を対象に緊急事態宣言を発令した。しかし感染拡大は収まらず、同緊急事態宣言は今月末まで継続され、さらに昨日5月14日には、開催された基本的対処方針分科会で反対論が噴出し、異例の方向転換がなされるなどで、緊急事態宣言およびマンボウ対象地域はさらに拡大される状況になっている。

 一方で、混乱や遅れもあるが、ワクチン接種は開始されると共に、その中止や再延期の声も高まる中、菅総理は、東京オリンピック・パラリンピックは開催するとの強い意欲を示している。

 また、コロナ禍の感染者や死亡者数は、医療崩壊の危険性が指摘されてはいるが、日本は海外の多くの国々と比較しても、相変わらず非常に低い状況にある。また日本国内をみれば、都市部では感染者数は広がっているが、相変わらず感染者数は非常に限定されている都道府県もある。他方で、日本国内でも、コロナ禍において変異株が猛威をふるい始めている。

コロナ禍が、変異株の侵入により、また再び拡大してきてきている。
コロナ禍が、変異株の侵入により、また再び拡大してきてきている。写真:つのだよしお/アフロ

 このような状況のなか、JNNが5月8、9両日に実施した世論調査を発表した。それによれば、菅政権への支持はさらに低下してきているが、それ以上に、新型コロナへの取り組みは「評価する」は27%(政権発足後最低)、「評価しない」は63%と、非常に厳しい数字が出された。

 これは、先の総理のメッセージのなさに加えて、政府や官邸からのコロナ禍の情報発信が十分でなく、様々なメディア等から多種多様な情報が流れ、国民が不安に思っていることが大きな要因の一つではないかと考えるところである。その意味で、筆者は、今も菅総理からの政治家としての思いの籠ったメッセージを期待しているが、それがキャラ的に難しいのであれば、それに代わる代替案を取るべきだと考えている。

 そのような観点から、筆者が、政府や官邸におけるコロナ禍の情報発信について調べたところ、次のような結果を得た。

・厚労省のHPは感染者数のデータなどが出てはいるが、データなどは不十分。国民のニーズのある情報にはなっていない。

・官邸のHPは何を発信したいのかわかりにくい。

・官邸のFB、Youtube、Twitter、instagramなどもあり、コロナ情報が一部載っているが、逐一のわかりやすいデータなどはない。またそれらには官邸の記者会見の映像なども載っているが、記者会見以上の情報の発信はない。

・記者会見は、上記の情報チャネルから動画が配信されているし、参加者の工夫などもされてはきているが、相変わらずオールドメデイア中心の情報発信のチャネルといえよう。

・以上のことからは分かるのは、国民からすると、官邸つまり総理・内閣からの情報発信は、記者会見以上の情報はほとんどない印象を受けるものなのである。

 このような状況では、国民にコロナ禍の現状と今後についての情報を伝え、情報共有して、国民に今後に向けての安全や安心をとても伝えることはできないし、政権への信頼や支持を高めていける環境を生み出していけるようになっていないことと強く感じる。だからこそ、当然に「新型コロナへの取り組み」への先述のような低い評価につながっていると考えることができる。

コロナ禍対策の新たなる情報発信の仕方が求められている。
コロナ禍対策の新たなる情報発信の仕方が求められている。写真:代表撮影/ロイター/アフロ

 そこで、本記事において、次のような提言をしたい。

・官邸の情報発信の体制および方法の再構築をすべきである。

・オールドメディアのみならず、SNSを含むニューメディアや危機管理の専門家を含む対策チームを結成すべきである。

・現在の官邸の記者会見を中心とした、オールドメディア中心の対応では不十分である。

・官邸のHPやSNSでは、客観的だが、安心を感じられる情報・データの発信をカバーして、官邸から国民に直接情報の発信をする。

・コロナ禍に関する現在のデータと傾向をビジュアルにもわかりやすく、コメントのある特設HPを開設すべきである。データは、感染状況、重症者数や死亡者数だけでなく、回復者数、病床の状況(占・空状況)、ワクチン接種状況、コロナウイルスの感染メカニズムに関する科学的な情報などの科学的知見、海外の状況などの最新データと傾向などが含まれるべきである。

・各メディアの特性に応じた、情報・コンテンツ(内容)、その発信手法・表現法、頻度、アクセスの仕方の工夫が必要である。

 官邸から国民への直接でわかりやすい情報の提供と共有で、国民のコロナ政策ひいては政権への理解は、実は大きく変わる可能性があるのではないだろうか。コロナ禍の今後の状況がさらに不透明になってきており、オリパラや総選挙を控える今のこの時期だからこそ、前政権時からの官邸からコロナ禍に関する情報発信を大きく変え、国民の心に届くようにすべきである。あるべき方向に変更することに、遅すぎることは決してない。

政策研究アーティスト、PHP総研特任フェロー

東京大学法学部卒。マラヤ大学、米国EWC奨学生として同センター・ハワイ大学大学院等留学。日本財団等を経て東京財団設立参画し同研究事業部長、大阪大学特任教授・阪大FRC副機構長、自民党系「シンクタンク2005・日本」設立参画し同理事・事務局長、米アーバン・インスティテュート兼任研究員、中央大学客員教授、国会事故調情報統括、厚生労働省総合政策参与、城西国際大学大学院研究科長・教授、沖縄科学技術大学院大学(OIST)客員研究員等を経て現職。新医療領域実装研究会理事等兼任。大阪駅北地区国際コンセプトコンペ優秀賞受賞。著書やメディア出演多数。最新著は『沖縄科学技術大学院大学は東大を超えたのか』

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