「減らしてシェアしてリサイクル」企業コストが減らせて家計の食費も安くなる合言葉
世界の環境問題を語る際のキーワードは「3R(スリーアール)」。
「Reduce(リデュース:廃棄物の発生抑制)」が最優先。無駄を出さない。減らす。
次に「Reuse(リユース:再利用)」。減らせなかったものは、再利用する。
最後が「Recycle(リサイクル:再生利用)」。食べ残しなどはリサイクルされる。
だが、メディアが好んで報じるのは最優先の「Reduce(リデュース)」ではない。「Reuse(リユース)」だ。
ここ最近、3つくらい取材を受けるが、テーマはすべて「シェア」。つまり、流通できない食品を「Reuse(リユース)」するということ。
「シェア」するのは、もちろん、いいことだ。だが「余ればシェアすればいい」とか「ウィンウィンでいいね!」といった短絡的な考え方ばかりだと、辟易する。
つい先日も、食品ロスを特集したあるテレビ番組を見ていたが、最後のオチは「(食品ロスは)シェアしましょう!」「いいね!」だった。番組には行政や議員が絡んでいたにもかかわらず、なぜこんな単純な結論になるのか、理解できなかった。「シェアする」のは視聴者に共感が得られやすいのでいいとして、最優先が「Reduce(リデュース)」である、というところも、同時に、番組中にきちんと伝えて欲しかった。
「シェア」しても使いきれないほど食品ロスが発生している
筆者は食品メーカー勤務の時、商品として流通できないが食べられるものについては、フードバンクに寄付していた。退職してからはそのフードバンクから依頼があり、広報を担当していた。
フードバンクは「Reuse(リユース)」、つまり、「シェア」だ。シェアすることで、結果的には「Reduce(リデュース)」になる。
ただ、日本の年間食品ロス量646万トンに対し、全国のフードバンク77団体が取り扱う食品量は4,000〜6,000トン。仮に6,000トンとして、全体の0.09%だ。だからといって、意味がないのではない。フードバンクは、量を求めるものではなく、食品ロスや貧困に対して意識が薄い人に対するシンボリックな(象徴的な)活動と言える。
では、フードバンクが活用しない、残りの99.91%は、どうするのか。
現在、食品業界で余ったものを販売するビジネスや、飲食業で販売できなかったものをスマホのアプリを通して販売するビジネスが登場している。とはいえ、これらビジネスだけで、残りの99.91%が解決するとは言いづらい。となれば、「シェア」するのと並行して、最優先の「リデュース」の重要性を訴えていく必要がある。
作り過ぎ、売り過ぎの現状
日本の食品業界では「欠品すること」は許されない。メーカーが欠品を起こすと「取引停止になる」から「絶対できない」。食品メーカーの社員に聞くと、そう答える。
足りなくなるより余らせて捨てることが是とされている。
食品業界から発生する食品ロスを減らすには、作り過ぎ・売り過ぎをやめて、適量生産・適量販売にすればいい。そう言うと「売り逃がしが起きる」「お客様に迷惑をかける」という意見が出る。でも、本当にそうなのか。
広告出稿する大手企業に遠慮する?マスメディア
作り過ぎ・売り過ぎをしないで、適量生産・適量販売しよう、という主張は、売上を伸ばすことを目指す大手食品関連企業にとっては迷惑なものだろう。マスメディアは大手食品関連企業がクライアント(広告出稿主)であるから、企業の心象を悪くするようなことは言えないのではないだろうか。
メディアの取材も、「3R」の原則を理解しないで、ただ「シェア」「いいね!」と、短絡的に来るものが多いと感じている。おそらく、視聴者に受けがよいからだろう。「シェア」を報じるのはいいが、それと並行して、最優先である「Reduce(リデュース)」を報じなければならない。
減らしてシェアしてリサイクル
ある方から「3R(スリーアール)って、もっと簡単な言い方、ないの?」と聞かれた。
たとえば・・・・
「減らしてシェアしてリサイクル」はどうだろう。
マスメディアには、最優先が何なのかを理解して、食品ロスや環境問題を報じて欲しい。
無駄を減らすことでコスト(支出)も減るし、気持ちがいい。この気持ちよさを、多くの人に味わって欲しい。
参考資料: