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逮捕された元CIA分析官の韓国系美人研究員は韓国政府のため何をやったのか!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
今年5月に訪韓し韓国の峨山研究所で記者会見するスミ・テリ氏ー氏(峨山研究所配信)

 韓国系美人研究員として知られていた米CIA出身のスミ・テリー米外交協会(CFR)上席研究員が韓国政府のためのロビー活動を行った容疑でFBI(米連邦捜査局)に逮捕され、連邦検察に起訴されたとの情報に国家情報院(NSP)と韓国外交部は大きな衝撃を受けている。何よりも、スミ・テリー研究員(54歳)に情報提供などロビー活動を依頼した当事者であるからである。

 FBIのクリスティ・カーチス副局長代行は米司法省が7月17日(現地時間)にホームページに掲載した報道資料で「彼女は10年にわたり自分の地位を利用し、金と贅沢品のため敏感な米国の情報を韓国の情報機関に提供するなど外国のスパイと協力して米国の安保を脅かした人物である」と、起訴した理由を説明していた。

 テリー研究員は2001年から2008年までCIAに在籍していたが、韓国政府のための不法活動をしたのは退職後で、朴槿恵(パク・クネ)政権下の2013年から尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権下の昨年6月まで約10年にわたって韓国政府の依頼を受け、ロビー活動を行っていたとされている。

 ニューヨーク南部地検が7月16日(現地時間)に公開した31枚程度の起訴状をみると、テリー研究員のロビー活動は朴槿恵政権下で8件、文在寅(ムン・ジェイン)政権下で12件、尹政権下では1年で20件と急増していた。

 FBIはテリー研究員が文在寅政権下の2019年から2021年の間にルイヴィトンのバッグ(3450ドル相当)やボッテガヴェネタのバッグ(2950ドル相当)、ドルチェ&ガッパーナ製コート(2800ドル相当)などを受け取っただけでなく2022年5月からは研究活動費という名目で現金(3万7千ドル相当)を授受した事実を把握し、その証拠も握っている。

 テリー研究員は逮捕後、50万ドルを払い、現在は保釈の身にあるが、米政府に登録せず外国のためのロビー活動は「外国代理人登録法」に違反しており、刑罰は最大で5年の実刑である。

 では、テリー研究員が韓国政府のために行った不法なロビー活動とはどういうものか、その一部を起訴状からみてみる。

 ▲2019年1月15日 ハノイでの米朝首脳会談(2月9日)の約1か月前に駐米韓国大使館に派遣されていたNSP要員の要請を受け、所属していたシンクタンクで徐勲(ソ・フン)NSP院長(当時)と米国防当局者及び元国家安全保障関係者らとのミーティングを斡旋した。この場で、徐院長は米朝首脳会談や北朝鮮政策に関する文在寅政権の立場を伝えていた。ミーティング後にNSP要員がテリー研究員にメールでミーティングを斡旋してくれたことへの感謝のメッセージを送っていた。

 ▲2022年6月16日 米国務省で開かれた非公開会議に出席し、会議内容をNSP要員に大使館ナンバーの車の中で直接手渡していた。

 ▲2022年8月 尹政権発足100日(8月20日)を迎え、韓国外交部の依頼を受け、外国専門誌「フォーリンポリシー」に「尹大統領の外交政策の力強い一歩」との見出しのコラムを書いた。韓国大統領室はこれをホームページに載せ、積極的に広報した。

 ▲2023年1月19日 NSPはテリー研究員に尹政権が望んでいる「拡張抑止強化」と「核協議グループの発足の重要性」を説明し、テリー研究員はその話を基に米外交雑誌「フォーリンアフェアーズ」に原稿を寄稿した。

 ▲2023年1月 ラーム・エマニュエル駐日米大使との会談内容を国家情報院に依頼され、韓国に伝達した。

 ▲2023年3月 尹大統領が元徴用工問題を韓国政府による「第三者弁済方式」を通じて解決することで対日関係改善を試みたことについて書いて欲しいとの韓国外交部からの要請を受け、「ワシントン・ポスト」に「韓国、日本との和解のための勇気ある一歩」と題するコラムを掲載した。テリー研究員はこの記事のため韓国から資料提供を受けていた。テリー研究員は後に韓国政府関係者に「気に入っていただけましたか」と、ショートメールを送っていた。この記事が出る前日に尹政権は「第三者弁済方式」を発表していた。

 ▲2023年4月10日 米韓首脳会談前に韓国外交部の要請を受け尹大統領の訪米に関するコラムを韓国の新聞に書き、それを韓国の保守紙が引用した。コラム料は500ドルだった。

 ▲2023年4月18日 韓国外交部から数万ドルの資金援助を受け、米韓同盟70周年を記念した「2023年米韓政策フォーラム」を開催した。主催したシンクタンクが韓国大使館から2万5418ドルの資金援助を受け、テリー研究員も別途に2万6035ドルの小切手を手にした。

 裁判が始まれば、ロビー活動の手口を含め「罪状」の詳細が明らかにされるが、11月の米大統領選挙で北朝鮮に好意的なトランプ前大統領がカムバックする公算が強いだけにこの「テリー事件」で駐韓米大使館をベースにした情報収集活動が制限されるようなことになれば韓国の対米外交、南北関係に悪影響を及ぼしかねないと、韓国政府は危機感を募らせている。

(参考資料:ビックリ仰天の元韓国系CIA要員の逮捕! 米韓関係は蜜月なのになぜ?)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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