ネットの風評はウソ?ホント?レゴランドへ行ってみた
オープン前から長蛇の列。待ち時間は短めでストレスなく楽しめる
名古屋観光の新たな目玉として4月にオープンしたレゴランド・ジャパン。世界的な人気を誇るブロック玩具・レゴブロックの世界で8番目、日本では初となるテーマパークとして注目を集めています。
一方で、「料金が高い」「名古屋の中心部から遠い」といった懸念材料も開園前からあり、またオープン後も「お客が少なくガラガラ」などのネガティブな風評がネットを中心に飛び交っています。5月下旬には隣接してオープンした複合商業施設「メイカーズピア」のテナント飲食店がわずか2カ月で撤退。「ほら見たことか」とdisり派の格好のネタとなってしまっています。
鳴り物入りでオープンしたレゴランド・ジャパンですが、実際のところはどうなのか? 足を運んでみることにしました。
訪れたのは5月最後の土曜日。行楽日和ということもあって、10時の開園前から入口前には長蛇の列。来場者は子連れファミリーが中心ですが、若い女性のグループ、中国や韓国などアジアからのグループ客も目立ちます。園内は“人気テーマパーク”と呼ぶにふさわしいにぎわい。行楽シーズンの週末ですから当然といえば当然ですが、この日に限って言えば「ガラガラ」なんて状況ではまったくありませんでした。
それでもアトラクションの待ち時間は最大でも30分ほどで、プレビューデーの際に3時間待ちとの報道もあった「サブマリン・アドベンチャー」でも午後には15分待ちになっていました。
筆者家族は3月のメディア向け内見会以来となる来園。長男がちょうどターゲットど真ん中の小学校低学年で、内見会でも大いに楽しんでいたため、家族分の年間パスポートを購入しました。この日は3つの乗り物系アトラクションに「レゴ・ファクトリー・ツアー」、「レゴニンジャゴー・ライブ」、ボールが飛び交う中で自由に遊べる巨大遊具系の「ファラオ・リベンジ」、そして「ミニランド」を存分に堪能。再入場可能な年パスの利点を活かして、昼食は隣のメイカーズピアへ。こちらも何組かのウエイティングがかかっている店が大半で、広場では大道芸もあり、にぎやかでした。
工場見学にライブ、ミニランド、組み立てと楽しみ方は多彩
アトラクションはスリルこそかなり控えめですが、ペアで体を動かして挑戦するものが多く、子ども連れやカップルで仲よく楽しめます。「レゴ・ファクトリー・ツアー」は館内に本物のレゴブロックの製造ラインが設置され、文字通りの工場見学で必見。おみやげにここで作られた“Made in NAGOYA”のレゴブロックをもらえるのも気が利いています。「レゴニンジャゴー・ライブ」は、キャラクターたちが着ぐるみではなく何と大人ほどのサイズのパペット(操り人形)! プロジェクションマッピングを駆使した映像と、伝統芸能の人形浄瑠璃を融合させたかのような見事なステージパフォーマンスを披露してくれます。日本全国の建物や名所を再現した「ミニランド」は500以上もの建造物が建ち並ぶ圧倒的スケールで、世界中のビルダーが日本をロケハンして作っただけあって完成度、ディテールのこだわりは圧巻。ナゴヤドームは観客席の応援団や売り子まで1人1人作り込まれているなど、細部にまで遊び心があふれていてどれだけ見ていても飽きが来ません。
巨大遊具型のプレイスペースやレゴを組み立てて遊べるスペースなど、並ばなくても入れる場所も各所にあり、子どもたちはむしろこちらの方が夢中になっていました。また、アトラクションの並んで待つスペースに子供たちが飽きないように自由に遊べるレゴブロックが置いてあるのにも、“子どもファースト”のコンセプトの徹底を感じられました。
帰り道、息子に「今日は何が一番楽しかった?」と尋ねると、すかさず「全部!」の答え。子供が楽しんでくれれば当然親もうれしく、満足度はかけ値なしに満点でした。
1日券半額や家族割など割引プランを次々導入
レゴランド・ジャパンに対するネガティブな評判の第一が料金です。1日券は大人6900円、子ども(3~12歳)5300円。しばしば比較の対象とされる東京ディズニーリゾート(TDR)、ユニヴァーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)と比べて、大人はやや安く、子どもはやや高い設定となっています。一方、年間パスポートは大人1万7300円、子ども1万3300円と3回行けば元が取れる計算。6万円を超すTDRより大幅に安く、大人はちょうど3回分、子どもは4回で元が取れるUSJよりも少し割安です。
「高い」という批判を受けてか、オープン後間もなく値引き策を矢継ぎ早に導入。4月25日から年パス所持者と来場すれば2名まで1日券が半額に(大人6900円→3450円、子ども5300円→2650円)。当初は5月末までの予定でしたが、好評につき6月末まで延長になりました。
さらに5月25日からは年末までの期間限定で「ファミリー割」「早割」も発売。「ファミリー1DAYパス」は来園7日前までに購入すれば最大で25%・6100円オフに(大人2人・子ども2人の場合2万4400円→1万8300円 他、2~6日前購入、家族3人用などもあり)。1人用の「早割」も7日前購入で約10%安くなります(大人6900円→6200円、子ども5300円→4700円)。
筆者も正直、入場料が発表された際、「高い」という印象を受けました。レゴランド・ジャパンの年間来場者見込みは200万人。3000万人を集客するTDR、昨年過去最高の1390万人を記録したUSJを向こうに回して同等の料金は“強気”とも見られ、加えて規模はTDRの1/8、USJの1/3程度であることも“割高”と見られる理由になっています。
しかし、実際に行ってみると、規模の差が一概に評価・価格の差になるわけではないと感じました。待ち時間や体力などを考えると、1日で回れるアトラクションの数に大きな差があるとは考えにくく、むしろレゴランド・ジャパンは平日なら待ち時間もほとんどないためスムーズに回れて、満足度は高くなるといっても過言ではありません。かといって40以上あるアトラクションを2~3回の来園で制覇できるわけではないので、年パスでくり返し足を運ぶ価値は十分にあります。
そして何より忘れてはならないのは、レゴランド・ジャパンは2~12歳をメインターゲットとしたキッズテーマパークなのです。小さな子どもが広大な敷地内を移動するのはハードですから、無理なく一周できる規模はちょうどよいと言えますし、筆者のようなターゲット世代の子どものいる家族ほど満足度が高くなります。大人の尺度で“物足りない”と評価するのはやや的外れとも言えます。
「遠い」という批判にも疑問を感じます。確かに名古屋駅や中心部の栄からは16~17kmの距離がありますが、あおなみ線の名古屋駅~金城ふ頭駅は最速17分で、乗り継ぎなどを考えても市内の大半のエリアから1時間以内。車も同様で、隣接の最新大型駐車場は高速道路とほぼ直結なので遠方からのアクセスも良好です。ちなみに筆者の自宅(瑞穂区)からは一般道で30分もかかりません。そもそも都市の中心部にあるテーマパークなどありませんし、2005年の愛知万博には市外の長久手会場まで地下鉄やリニモやシャトルバスを乗り継いで多くの人が足を運び、さらには遠路はるばるTDRやUSJへ行く人も多いのですから、レゴランド・ジャパンに限って「遠い」と思ってしまうのは、金城ふ頭というこれまであまり足を運ばなかったエリアに対する心理的距離感が影響しているのだと思います。
レゴランド・ジャパンに直撃!「ご批判も想定内」(!?)
さて、レゴランド・ジャパンでは現在の状況や巷の評判をどうとらえているのでしょうか? PR担当・高木あゆみさんにお聞きしました。
― オープンして2カ月。客層の傾向は?
レゴランド・ジャパン 高木あゆみさん(以下「レゴランド」) 「6割近くが愛知・岐阜・三重の東海3県のお客様で、特に平日は年パスでいらっしゃる地元の方が多い。3世代でのご来場も目立ちます。GWは地元に限らず全国、海外のお客様も数多くいらっしゃいました」
― 開園前の予測と異なる点は?
レゴランド「若者のグループやインバウンドのお客様が予想以上に目立ちます。SNS映えするので若い女性を中心に1日中写真を撮っている方も。これらの層にはじわじわ浸透していけばと考えていたのですが、意外と早く反応してくださっている印象です」
― 具体的な客数は?
レゴランド「当初から発表している年間200万人という目標以外、数字は公表できないことになっているんです」
― 予想していたほど大混雑ではない、という印象も受けます。
レゴランド「雨の日が多くスタート時の出足が鈍かったのは確かです。しかし、4月末から盛り返してきて、GWの人出は予想以上。人気アトラクションは最大4時間待ちもありました」
― ネットでは「高い」「ガラガラ」などネガティブな意見も少なからずあります。
レゴランド「誰もが自由に発言できるSNSの時代ですから、そういった批判も想定内ととらえています」
― ネットの風評は、来たことがない人による事実誤認のデマが目立ちます。
レゴランド「どのテーマパークも開園当初は叩かれていますから、悪意のあるものに対しては逐一反応せず静観する構えです。もちろん今後の改善につながるご意見には真摯に耳を傾け対応していきたい。“料金が高い”という声があるのは確かですし、それに応えてファミリー割や早割など、ご来場いただきやすいキャンペーンを打ち出しました。何よりお子様の声に応えていきたいので、熱中症対策として水筒持ち込みの解禁も早々に決断しました」
― 名古屋人は“石橋を叩いても渡らない”と言われるほど、新しいモノに対してすぐに飛びつかず様子見する慎重派が多い。それを実感することは?
レゴランド「東名阪の3大都市圏の中では保守的な傾向は強いかもしれません。しかし、納得してくださればちゃんと受け入れてくれる気質だとも言いますから、あせらず時間をかけて魅力を伝えていきたい。地元愛や家族愛の強さも感じますし、その点では3世代で楽しめるレゴランドに合った土地柄とも実感しています。私たちはまだまだヨソ者ですから、何十年とかけて名古屋に根づいていければと思っています」
メイカーズ・ピアは独自路線に活路
隣接するメイカーズピアは約50件の飲食・物販店が建ち並ぶ複合型商業施設。モノづくり体験をテーマとし、ピザ、そば、食品サンプル作り、接客などの体験プログラムを採り入れている店舗が多いのが特徴です。駅・駐車場とレゴランド・ジャパンの間にあり、レゴランドへ行く人は必ず通ることになります。
筆者としては年パス所有者に限られているレゴランド・ジャパンの再入場を1日券来場者にも解禁するのが、双方の満足度アップに最も効果的だと思うのですが、レゴランド側は「食事も含めてランド内で1日過ごして世界観に浸ってもらうのが理想。メイカーズピアは別の施設なので、(その提案には)お答えする立場にはない」との回答でした。
メイカーズピアの担当者にも話を聞きましたが、同様に「レゴランドに頼らない独自の集客イベントを開催し、単独でエンターテイメント施設であることを確立させることが重要。テナントもモノづくり体験ができる店は集客性が高く、施設本来のコンセプトをより強化させたい」という見解でした。6月中旬には熱気球体験、夏にはテナント各店合同のなぞときゲームなどを導入予定だそうです。またテナントからは「予想以上にアルコール需要が高い。夜のドリンクメニューを強化させたい」という声も聞かれました。現状では“レゴランドの横の飲食店街”と思われているので、レゴランドよりも上の世代の人たちがここだけで楽しめることを周知させていくことが不可欠であることは間違いありません。
いずれにしても評価や感想はまず足を運んでから。ネットで飛び交っているイメージとはまったく違った世界が広がっている、かもしれません。
(写真撮影=すべて筆者)