胃がん。若年者にも発生する可能性もある!一度、胃がん検診を。
■胃の構造とはたらき
胃は食道と小腸の間に位置する袋状の臓器である。胃の壁は内側から順に、胃液や粘液を分泌する粘膜、粘膜を支える粘膜筋板、粘膜と固有筋層をつなぐ粘膜下層、胃の動きを担当する固有筋層、胃全体を包む薄い膜である漿膜の5層に大別される。
胃の主な役割は、食物を一時的に貯蔵し、その食物を消化することである。
胃がんは、胃の壁の最も内側にある粘膜内の細胞が、何らかの原因でがん細胞になり、無秩序に増殖を繰り返すことで生じる。
■原因
いくつかのリスク要因が指摘されているが、中でも喫煙や食生活などの生活習慣や、ヘリコバクターピロリ菌の持続感染などが胃がん発生のリスクを高めると報告されている(ヘリコバクターピロリ菌に感染した人のすべてが胃がんになるわけではない)。
日本人のヘリコバクターピロリ菌の感染率は、中高年で高く、若年層では近年低下傾向にある。食生活については、塩分の多い食品の過剰摂取や、野菜、果物の摂取不足が指摘されているため、高塩分食品の取り過ぎには注意が必要である。
■疫学・統計
2016年の部位別がん死亡数は男性で肺がんに次いで多く第2位(29854人)、女性は、大腸がん、肺がん、すい臓がんに次いで多く第4位(15677人)である。また、部位別がん罹患率(2013年)は、男性では第1位(90851人)、女性では第3位(41042人)と非常に多い。
胃がんは男女とも死亡者数、罹患者数が多い。
■胃がん
胃がんは、まずは一番上の層である粘膜層に発生する。粘膜層に発生したがんは横に広がった後、粘膜層 → 粘膜筋板 → 粘膜下層といったように、胃の内側から外側に深く浸潤していく。がんが粘膜下層までで留まっている場合は早期がんとされる。
しかしがんが固有筋層以上深くに浸潤すると進行がんとされ、固有筋層には血管やリンパ管が多く通っていることから、がん細胞が血流やリンパの流れにのって転移しやすくなる。
胃がんの肉眼の分類で、進行がんで最も悪性のタイプは4型であり、がん細胞が粘膜層の下に木の根のように広がっていくタイプ。スキルス胃がんともいう。胃がんは中高年に多いが、スキルス胃がんは20代、30代の若年層に多い特徴がある。
■若年層に発生するスキルス胃がん
スキルス胃がんは、胃がんの約10%を占めているといわれている。
がんは、がん細胞が一部にまとまった場所で増殖していくことが多いのだが、
スキルス(scirrhous)胃がんは異なる進行をみせる。スキルス胃がんの場合は、正常の組織に染み渡るようにがん細胞が浸潤していく。そのため、病変の表面が正常細胞で覆われている場合もあり、胃表面の粘膜に変化が現れにくく、早期での発見が難しいといわれている。発見されたときは、がんが進行した段階であることが多く、診断がついた時点で約60%の患者に転移がみられる。
◇スキルス胃がんの症状
スキルス胃がんは初期では無症状の場合が多く、症状が現れても風邪や体調不良などでみられるような軽い症状であるため、胃がんであることに気づきにくい。スキルス胃がんにみられる症状として胸やけ・胃もたれ、消化不良、食欲不振、胃痛などが挙げられる。
これといって、特徴的な症状ではなく普段我々が遭遇している症状だ。
■胃がん検診
厚生労働省においては、「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」を定め、市町村による科学的根拠に基づくがん検診を推進している。
50歳以上を対象として2年に1回の検診(問診に加えて、胃部エックス線検査または胃内視鏡検査のいずれか)を受けることを推進している。
各市町村に問い合わせてもらいたい。
50歳未満でも、気になる人は是非検査を受けて欲しい。
■胃エックス線検査
レントゲンを用いて胃の内部の状態を診る検査方法。一次検査としてのがん検診で、厚生労働省から有効性を認められている。前日の夕食と当日の朝食を欠食し、検査を受ける場所で胃の内部を診るための造影剤バリウムと、胃を膨らませる炭酸ガスを発生させる発泡剤を飲み検査を受ける。
検査は回転する台の上で、指示に従いながら体を回転させ、胃全体にバリウムを付着させて撮影する。
費用はがん検診として受けた場合、医療機関では大体3,000円前後、保健福祉センターなどで自治体が行う場合は1500円前後となることが多い。
■胃内視鏡検査
小型のカメラを口または鼻から挿入し、胃の内部を直接観察する検査方法。粘膜の微細な変化も鮮明に見ることができ、病変と思われる部分を見つけた際には、組織を採取して顕微鏡などで詳細な検査を行う「生検」も、同時に行うことができる。
前日の夕食と当日の朝食を欠食し、病院で胃を膨らませる薬剤を飲み検査を受ける。麻酔や鎮静剤を使用しての検査が可能であるため、検査を行う施設によっては、全身麻酔と喉元のみの部分麻酔とで選択できることがある。
胃内視鏡検査は、バリウムによる胃のX線検査よりも、胃がんの早期発見ができるというメリットがあるが、検査をする医師の技量によって差が出る可能性があるという特徴がある。
■胃内視鏡検査を受けてみた!
頻繁に胃痛に悩まされており、内視鏡検査を受ける決心をした。鼻から入れる内視鏡カメラと口から入れる内視鏡カメラのどちらで検査を受けるのか選択ができ、私は口から入れる内視鏡カメラを選んだ。また、麻酔も全身麻酔にするのか、喉元のみの部分麻酔にするかも選択でき、私は全身麻酔を選んだ。
検査を受けるまでは、「痛いのでは?」「苦しいのでは?」と不安でいっぱいだったが、いざ受けてみると、麻酔で眠っている間に検査は完了していた。
痛みや苦しみは無かった。
確かに、内視鏡を操作する医師の技量によって差が出ると考えられるが、私の場合は「痛そう」「苦しそう」といった想像は、するだけ無駄だった。想像に踊らされて検査を受けることから逃げている人は、一度受けてみて欲しい!
内視鏡検査では、早期発見が可能であるため、普段から胃に違和感がある人は是非受けて欲しい。また、違和感はないが気になる人は、まずは気軽に受けられる胃エックス線検査でもよいだろう。