ノート(70) 初めての居室内点検と起訴を経て練り直した弁護方針
~達観編(20)
勾留24日目
居室内点検
「ちょっと出てくれるか」
朝、家族あての手紙の発信手続を終えると、突然、自殺防止房の前に2名の警備隊職員がやってきた。独房を出ると、1名が靴を脱ぎ、房内に入り込んだ。
そして、折り畳んで所定の位置に置いていた布団や座布団をめくり上げたり、脱衣カゴやキャリーバッグの中身を一つ一つ取り出したり、トイレの奥や裏、ゴミ箱の中や裏などを含め、室内の隅々まで目や手触りで徹底的に確認し始めた。拘置所に入って初めてとなる「居室内点検」というものだった。
外部の人間の協力を得て刃物などの危険物や酒、タバコ、薬物などの禁止物品を隠し持っていたり、箸や歯ブラシの先を削って尖らせたり、ボールペンなどで壁を削り、穴を開けて逃走を目論むような者がいるかもしれない。
そこで、その発見のため、日や房を定めず、不定期かつアトランダムに、房内の点検を行っているというわけだ。いつどこの点検が行われるか事前に分からない、といった状態を作ることで、そうした不正行為に及ばないようにさせる狙いもあった。
目配りに注目
点検の際に重要となるのが、被収容者の目線や態度だ。やましいものや人の目に触れさせたくないものを隠し持っていたりすると、つい、その場所が気になってチラチラと目線を送るし、そこに職員が近づくと、顔色を変えたり、そわそわと落ち着かなくなったりすることが多いからだ。これは、特捜部が行う捜索の場合も同様だ。
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