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藤浪らをローテーションに加える一方で「前年のエース」をトレードで放出。この動きは矛盾するのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
コール・アービン Sep 29, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 1月26日、オークランド・アスレティックスは、コール・アービンカイル・バービッツスキーをボルティモア・オリオールズへ放出し、交換にダレル・ハーネイズを獲得した。それぞれ、28歳の先発投手と24歳の先発投手、21歳の遊撃手だ。アービンは、今月末に29歳の誕生日を迎える。3人のうち、バービッツスキーとハーネイズは、まだメジャーデビューしていない。

 今オフ、アスレティックスは、ドルー・ルチンスキー藤浪晋太郎の両投手を手に入れている。けれども、彼らの加入により、アービンが余剰の先発投手となったわけではない。昨年、アスレティックスで135イニング以上を投げた投手は、アービンしかいなかった。過去2シーズンとも、アービンは30試合以上の先発マウンドに上がり、2021年は178.1イニングで防御率4.24、2022年は181.0イニングで防御率3.98を記録している。FAになるのは2026年のオフなので、オリオールズはあと4シーズン、アービンを保有できる。

 アービンのトレードは、オリオールズとアスレティックスのどちらにとっても、再建に向けた動きだ。ただ、再建が完了するまでの道のりは、オリオールズのほうが短い。昨年、オリオールズでは、2019年のドラフト全体1位、アドリー・ラッチマンがメジャーデビューし、それと呼応するように、6年ぶりに勝ち越した。一方、アスレティックスは、昨年の開幕直前から、主力選手を続々と手放している。今オフも、アービンの前に、捕手のショーン・マーフィーをアトランタ・ブレーブスへ放出した。

 アスレティックスがルチンスキーと藤浪の2人と交わした契約は、いずれも単年契約だ。それぞれ、1年300万ドルと1年325万ドル。彼らは、アスレティックスにとって、来たるべき次代を担う選手ではなく、再建中のつなぎ、もしくはこの夏のトレード要員――交換に若手を得るための人材――であることが窺える。

 いずれにせよ、アービンがいなくなったことで、藤浪がローテーションに入る可能性は高まった。

 今のところ、ローテーション入りが有力なのは、昨年は20先発以上&防御率4.30未満のジェームズ・カプリリアンポール・ブラックバーンに、ルチンスキーと藤浪の4人だろう。あと1枠か2枠に入る、数多い候補のなかには、主力選手の見返りに得た投手も少なくない。

 例えば、ケン・ウォルディチャックJP・シアーズルイス・メディーナの3人は、昨年の夏、フランキー・モンタスルー・トリビーノと入れ替わりに、ニューヨーク・ヤンキースからアスレティックスへ移籍した。エイドリアン・マルティネスは、昨年4月にアスレティックスがショーン・マネイア(現サンフランシスコ・ジャイアンツ)を手放したトレードで、サンディエゴ・パドレスから加入。アダム・オーラーJ.T.ギンは、クリス・バシット(現トロント・ブルージェイズ)の交換要員として、昨年3月にニューヨーク・メッツから移ってきた。カイル・マーラーフレディ・ターノックは、昨年12月にマーフィーが動いた三角トレードで、ブレーブスから移籍している。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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