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次期サッカー日本代表監督は日本人では難しい。ハリルホジッチの毒舌が懐かしい理由

杉山茂樹スポーツライター
ヴァイッド・ハリルホジッチ(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 サッカーには選手の優劣を示すデータが他の競技に比べてあまりにも少ない。基準は監督の目。すべてはその主観に委ねられる。クラブの監督は対象の範囲が所属選手に限られるが、代表監督の場合は無限だ。主観をその国の国籍を有するサッカー選手すべてに適用できる。選び放題。悪く言えば切り放題。実力のある選手でも代表監督との相性が悪ければ選ばれない。他に類を見ない強権の持ち主に対し、任期8年はいかにも長い。

 逆の場合もある。顕著なのは現役時代の森保だ。ハンス・オフトが監督でなければ代表に選ばれていなかった選手である。指導者として代表監督に上り詰めることはなかったろう。日本サッカー界で最も運に恵まれた人物だといっても言い過ぎではない。

 以上は、前回のこの欄でも記したことだが、森保監督はパッと見、地味で大人しい顔をしているので権力者のイメージは湧きにくい。2代前の監督、ハリルホジッチの方がそうした意味で代表監督らしかった。監督会見の席上で、「日本サッカーはだからダメなんだ」と毒を吐くその姿が、いまとなっては懐かしい。

 ロシアW杯を直前に控えた2018年4月、解任の憂き目に遭ったハリルホジッチだが、波風が全く立たず、活気に欠ける現在と比較すると、無い物ねだりをしたくなる。そうしたドタバタ、言い換えれば論争こそがサッカーの特性に照らしたとき、サッカー的なものに見える。日本サッカーはすっかり論争なき世界と化している。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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