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三笘、堂安を両ウイングに据えた森保式3-4-2-1を超攻撃的サッカーと評す大間違い

杉山茂樹スポーツライター
UEFAチャンピオンズリーグリーグフェーズ第1節マンチェスター・シティ対インテル(写真:ロイター/アフロ)

 先の中国戦、バーレーン戦に三笘薫、堂安律を両ウイングバックに据えた3-4-2-1で臨んだ森保ジャパン。7-0、5-0の大差勝ちだったことも手伝い、そのサッカーを超攻撃的布陣だと評すメディア報道が目に付いた。4-3-3あるいは4-2-3-1で臨む場合、三笘、堂安は左右のウイングを張る。それぞれの所属クラブであるブライトン、フライブルクでも同様だ。彼らは言ってみればFW。アタッカーである。

 一方、ウイング“バック”は、その名称に従えばバックスだ。ウイング“ハーフ”という言い回しがいつしか衰退した理由は、高い位置を維持しにくい現実、つまり3-4-2-1が5バック(5-2-2-1)になりやすい現実と深い関係がある。一般的に、ウイングバックは4バック時にサイドバック(SB)を務める選手が適役とされる理由である。森保一監督はそうした慣例を無視するように三笘、堂安をウイングバックに据えた。

 3-4-2-1の2-1には南野拓実、久保建英(鎌田大地)、上田綺世が入ったため、フィールド上にはアタッカー色の強い選手が計5人、名を連ねることになった。攻撃的と言いたくなる所以だろう。2戦合計12-0という結果とそれが深く関わっていたことは確かである。だが相手のレベルが上がったとき攻撃的でいられるか。それはスタイルとして攻撃的かと言われるとノーになる。

 攻撃的か守備的かの境界はその3-4-2-1が5バックになる割合だ。5になった瞬間、前で構える人数は自ずと減る。プレスは掛かりにくくなる。

 攻撃的か否かは、プレスが掛かりやすいか否かに準拠する。ボールを奪う位置が高いか否か。攻撃の始点が高いか否か。そうした意味で、攻守が入れ替わる場所というのは、サッカーを語る上でとても重要なデータになる。

 ところが、データ会社はその点にはなぜか触れていない。調べていないのか。あえて公表していないのか。謎であるがそれはともかく、逆に言えばそこは見る側にとって目の凝らしどころとなる。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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