マイケル・ジャクソン没後10年 ハリウッドにファン集結 心にはそれぞれのマイケルが生き続ける
“キング・オブ・ポップ”、マイケル・ジャクソンが他界して、6月25日で10年。
エンターテインメントの中心ハリウッドでは追悼集会「MJ Innocent/LOVE Rally」が開かれ、世界中から駆けつけたファンが、歌や踊りでマイケルを偲んだ。
ファンの心の中には、それぞれのマイケルが今も生き続けている。
「マイケルは僕にとって世界そのものでした。亡くなって10年経ちましたが、どんなに時間が経っても、彼は永遠に僕の大好きなアーチストであり続けるでしょう。いろいろなアーチストが誕生していますが、マイケルは常にベストです。彼のように歌い、踊れ、着こなすことができる人は他にいない。完全にユニークな存在でした」(ニューヨークから来たデビッド・リーボイスさん)
「マイケルは私の人生を歌で助けてくれました。家族や仕事で問題が起きると、マイケルが歌う”スマイル”が私を励ましてくれたんです。それに、マイケルは私に目標もくれました。それは子供たちのために生きるということ。私はダンス・スクールを運営していますが、子供たちに貢献しようと、パフォーマンスをして集めたお金をオーストリアの子供がん病院に寄付しています」(オーストリアから来たペギー・ウルフさん)
「マイケルは私のすべてです。最高のエンターテイナーで、人道主義者でした。マイケルは何より“世界の調和”を大切にしていました。肌の色が何であれ、出身がどこであれ、世界は一つになれると信じていました。世界が分断している今こそ、マイケルが信じた“世界の調和”が求められる時だと思います」(カナダから来たナターシャ・リードさん)
マイケルは2005年、児童虐待裁判で無罪判決を受けたが、2013年、子供の頃ネヴァーランドに招かれた2人の男性があらためて性的虐待を告発した。今年3月には、2人の体験に基づいて制作されたドキュメンタリー「Leaving Neverland(リーヴィング・ネヴァーランド)」が放送され、波紋を呼んだ。ファンたちは固く、マイケルの無実を信じている。
「マイケルは僕にとって家族のような存在です。僕をインスパイアし、愛やチャリティーの大切さを教えてくれました。亡くなって10年になるので、中国の50人のファンを連れて、マイケルの眠る墓地やスタジオを回りました。タージやジャーメインなどマイケルの家族にも会いました。家族たちは、マイケルが無実であることを中国で広めたり、マイケルの音楽やビデオをプロモートしたりしている僕たちの活動に感謝してくれました」(北京から来たマイケル・ジャクソン・チャイニーズ・ファンクラブ会長のキーン・ザーンさん)
「マイケルは音楽で人生を楽しくしてくれました。ビリー・ジーンを聞くと、とても元気になるんです。2005年に行われた児童虐待裁判も傍聴に行きました。ネヴァーランドに招待された2人は、この裁判の時は、マイケルは児童虐待はしていないと証言、裁判では無罪判決が出ました。それなのに、マイケルの死後、2人は児童虐待を受けていたと告発したのです。それに対して、亡くなったマイケルは何の反論もできません。180度態度を変えた2人に怒りを感じています」(日本から来たMJJファンクラブ会長の石井理英子さん)
イベントの終わり、ファンたちは「マイケル、マイケル」、「イノセント、イノセント」と連呼し、マイケルの無実を強く訴えた。
不眠と痛みに苦しんだ
筆者は10年前、ある週刊誌でマイケルの急逝について取材した。
2009年6月25日、当時、賃貸していたホルムビーヒルズにある邸宅で心肺停止状態に陥ったマイケルは、救急車の中で蘇生措置を受けながら、UCLAの病院に搬送された。世界中のメディアが病院前に殺到したが、帰らぬ人となった。
マイケルの両親の家の前やマイケルの葬式が行われたフォレスト・ローン墓地、マイケルの追悼式が行われたステイプルズセンターには、世界中からメディアが殺到した。
アメリカで長く取材をしてきたが、これほど多くのメディアが集まった出来事は他になかったのではないかと思う。
死因は、手術時に使われるような強力な麻酔薬ディプリバン(プロポフォル)の過剰摂取による薬物中毒。体内からは致死量を超えるプロポフォルが検出された。マイケルは不眠症に苦しんでいたのだ。マイケルに麻酔薬を投与した彼の専属医は逮捕され、有罪となった。
2003年の児童虐待裁判時、サンタ・バーバラ郡の警察は、ネヴァーランドにあるマイケルの家から大量の薬の瓶を押収したが、その中には、強い鎮痛剤も含まれていた。ある情報によれば、マイケルの毎月の薬代は48000ドルにも上ったという。
セルフ・エスティームが低かった
痛みと不眠に苦しみ、薬物依存症に陥っていたマイケル。
そんなマイケルについて語ったマイケルのスピリチュアル・ティーチャー、ディーパック・チョプラ氏の言葉が心に響いた。
「マイケルは生まれ育った環境やメディアの被害者だった。セルフ・エスティーム(自己肯定感)が低かった。それが彼の免疫システムに影響を与えていたのかもしれない」
セルフ・エスティームは子供の頃に培われる。マイケルは、生前、インタビューで「子供時代、父親から、精神的、肉体的虐待を受けていた」と告白していたが、父から受けた虐待(もっとも、父親は虐待を否定していた)がマイケルのセルフ・エスティームを低下させてしまったのか。
マイケルについて書かれた暴露本”Unmasked”著者のイアン・ハルペリン氏は、同著で「マイケルはコンサートができるほどの健康状態ではなかった。しかし、周囲の人々は誰もマイケルを助けようとしなかった」と記している。
また、同著には、以前のようには歌えず、踊れなくなった自分に”もう終わりだ”と限界を感じ、急逝前は、自殺を思わせるような発言を多々していたマイケルが描かれている。
それでも、死後公開された急逝前のリハーサル映像では、マイケルはエナジェティックに踊り、歌っていた。不眠や痛みに苦しみながらも、自らを”機械”と化し、リハーサルをこなしていたのだろう。
誰のためでもなく、ファンのために。
If you just smile
没後10年、マイケルを思い思いに偲んだファンたち。
彼らはどんな10年を送ってきたのだろう。悲しかったり、辛かったり、苦しかったりしたこともあっただろう。
でも、そんな時はマイケルの歌に励まされたに違いない。そしてこれからも励まされ続けるに違いない。
例えば、チャップリンが作り、マイケルが最も愛したというこの歌に。
Smile, what's the use of crying?
You'll find that life is still worthwhile
If you just smile
笑ってよ。
泣いても仕方ないだろう?
人生はまだ価値あるものだってわかるよ、
笑いさえすれば。
悲しくても、辛くても、苦しくても、笑って生きていきましょう!
*権利上の理由から、Smileの動画を差し替えさせていただきました。ご了承頂けましたら幸いです。
*マイケルの急逝後、筆者が取材を通じて思うところを綴ったブログ日記です。ご興味があればお読み下さい!