「効いた部分もあった」と語った井岡一翔 なぜリスクを冒して打ち合いにいったのか
31日、東京大田区総合体育館でボクシングWBA世界スーパーフライ級タイトルマッチが行われ、王者の井岡一翔(34=志成)と同級6位ホスベル・ペレス(28=ベネズエラ)が対戦した。
試合の展開
井岡にとって12回目の大みそか決戦となった。
試合が始まるとお互いにジャブをつきながら、いきなり主導権の奪い合いが始まる。
井岡は絶妙な間合いでペースを取りに行く。中間距離ではペレスが力強いパンチも打ち込み、ヒヤリとする場面もあった。
徐々に接近戦となり、井岡がボディを軸に打ち合いをしかけていく。ペレスのパンチもヒットし始め、ペース争いが加速してく。
そして第5ラウンド。井岡が近距離でパンチをヒットさせダウンを奪う。立ち上がったペレスに対し、井岡が追撃の右をヒットさせダウンを追加。
続くラウンドでも井岡が猛攻をしかけるが、負けじとペレスも打ち返し、白熱したラウンドとなった。
そして第7ラウンド、井岡がロープに追い詰め、右ストレートでペレスからダウンを奪う。これまでのダメージもあってか立ち上がれず、井岡が7RKO勝利で初防衛に成功した。
勝敗のポイント
試合後のインタビューで、井岡は「相手(ペレス)のパンチで効いた部分もあった」と語った。
この試合の井岡は、KOを意識した戦い方だった。近距離でプレッシャーをかけ、ボディから顔面へとコンビネーションを放っていた。
元々距離感が素晴らしく、テクニックのある選手だ。勝ちだけを狙うならポイントアウトできただろう。しかし、今日はリスクを負ってKOを狙いに行った。
取材のため試合会場で直接観戦していたが、普段の冷静な井岡とはまた違った気迫が感じられた。
試合後に井岡は「KOして会場の一体感を味わいたかった。いつもよりKOしたい闘志が漲っていた。日本の未来のために戦い続ける」と語った。
ファンの期待に応えるためにスタイルを変えてでも、リスクを冒してKOを狙いにいったのだろう。結果だけでなく内容も意識した王者らしい戦いだった。
テクニックだけでなく力強さも増し、ファンを興奮させてくれた。
井岡の今後
今後はこの階級のビッグネームと呼ばれるファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)との対戦を目指していくのだろう。
以前、決まりかけた対戦だったが、両陣営の条件が合わず見送りとなった。
今回こそ実現を期待したいところだが、エストラーダは来年以降に階級を上げバンタム級に転向する可能性もある。
井岡もエストラーダ戦を目標にしてはいるが、自身が階級を上げてまで戦う意思はないようだ。
そうなると、次に対戦が濃厚なのは同階級の王者達だ。
WBCには暫定王者として、元王者のカルロス・クアドラス(メキシコ)が君臨しており、エストラーダが階級を上げれば正規王者になるだろう。
IBFは無敗のフェルナンド・マルティネス(アルゼンチン)。
そしてWBOは前王者の中谷潤人の返上により、同級1位の田中恒成(畑中)と同級2位のエドゥアルド・バカセグア(メキシコ)が、2月24日にWBOスーパーフライ級王座決定戦を行う。
井岡の次戦の対戦相手が気になるところだ。強さを増した井岡の姿にファンの期待も高まっている。今後もスーパーフライ級での活躍に期待したい。