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佐々木朗希は今日登板。「ロッテvsロッテ」の国際交流戦【プロ野球キャンプ2024】

阿佐智ベースボールジャーナリスト
千葉ロッテと韓国ロッテの練習試合が行われた糸満・西崎運動公園野球場

 キャンプも最終盤にさしかかり、三連休中日の24日には、オープン戦4試合が実施された。現在沖縄でキャンプを行っているのは9球団。4試合だと1球団があぶれることになる。そのチーム、千葉ロッテ・マリーンズは、この日、1次キャンプ地のグァムから沖縄入りしてきた韓国KBOのロッテ・ジャイアンツと練習試合を行った。

ロッテ?楽天?羅徳?中国語だとややこしい球団名

 千葉ロッテは、毎年のように1次キャンプ地、石垣島で台湾・楽天モンキーズ(旧ラミゴ・、モンキーズ)とキャンプ時に国際交流戦を行っているが、「漢字の国」、台湾では日本の「ロッテ」は「羅徳」、韓国の方はなぜか「楽天」と表記される。おそらく互いの現地での発音を台湾人が聞いて漢字に直したために起こった齟齬なのだろうが、4年前から日本でも球団を保有している楽天が台湾でもプロ球団を持つようになったため話がややこしくなった。

 ちなみに台湾ではラテン系外国人選手の名、「ロドリゲス」は「羅徳」と表記されることが多いので、日本人が発音する「ロッテ」は、「ロド」に近いと感じられたのだろう。一方の「楽天」は、台湾では「ローティエン」と発音する。韓国人の発言はこちらに近いのか。

 日本の楽天イーグルスはもともとが漢字表記だから、当然「楽天」と表記されるのだが、チームのロゴが「R」と表記されているように台湾のファンも「ラクテン」と認識しており、このチームが、「ロッテ」ではないことは当然わかっている。

韓国プロ野球の名門、ロッテ・ジャイアンツ

 千葉ロッテと韓国ロッテは創業者を同じくする多国籍企業グループ、ロッテ財閥の傘下にある。戦後、在日韓国人が日本で創業した製菓会社ロッテが成功を収め、プロ野球球団を保有するまでに成長したのだが、日韓国交正常化の1965年以降、本貫地・韓国にも進出。あちらでは百貨店、ホテルなども手掛ける企業グループに成長したのだ。

 そして1982年の韓国プロ野球創設にあたり、この旗振り役となった当時のチョン・ドファン大統領の呼びかけに応じて、それまで保有していた実業団チームを発展的に解消させ、プロ球団を創ったのだが、ニックネームには、当時日本のロッテが名乗っていた「オリオンズ」ではなく、実業団時代の「ジャイアンツ」を採用した。日本で球団を買収したロッテグループの創始者、重光武雄(辛格浩)は、名門・巨人に憧れていたのである。

 1982年に6球団制で始まった韓国プロ野球は、現在10球団制にまで拡大しているが、多くの球団は身売りを経験し、発足当初のネーミングを維持しているのは、サムスン・ライオンズとこのロッテ・ジャイアンツのみである。しかし、サムスンが優勝8回、韓国シリーズ出場17回を誇るのに対し、韓国ロッテは優勝2回、韓国シリーズ出場4回と大きく水をあけられている。

 しかし、その人気とホームタウン・釜山のファンの熱の高さはつとに知られており、ネーミングは「ジャイアンツ」ながら、第2都市圏フランチャイズを置き、その歴史の割に優勝回数が少ないという共通点をもつ阪神タイガースにしばしばなぞらえられる。

 日本より緯度が高く、寒冷な気候とあって、韓国プロ野球球団は国外でキャンプを張る。日本ではオープン戦が本格化する3月になっても韓国はなお寒いため、多くの球団がアメリカ、オーストラリアでの1次キャンプの後、来日し、延長キャンプを行う。

 今年の場合、恩納村でキャンプを貫徹するサムスンに加え、4球団が沖縄で2次キャンプを行っている。

5回終了後のグランド整備時に外野で体を動かす韓国ロッテナイン。韓国では日常の風景だ。
5回終了後のグランド整備時に外野で体を動かす韓国ロッテナイン。韓国では日常の風景だ。

千葉ロッテの沖縄本島進出

 千葉ロッテはながらく石垣島をキャンプ地としていたが、各球団とも沖縄本島でキャンプを行うようになり、実戦に重きを置いて、キャンプ中盤から対外試合を行うようになる中、試合相手に困るようになった。2016年からは、前述のように、本島より距離が近い台湾から人気球団、ラミゴ(現楽天)・モンキーズを呼び寄せ、「アジアゲートウェイシリーズ」と銘打った興行試合を行うようになったが、これもせいぜい2試合しかできない。

 そこで、石垣島でのキャンプを早めに打ち上げ、本島に移動し、そこでキャンプを張っている各球団と練習試合を行い、その後さらに、各球団がキャンプ地を沖縄に移したことで危機感を抱いたかつての「キャンプ銀座」、宮崎、高知両県の自治体による企画練習試合に参加するというパターンに落ち着いた。これは今年も変わらず、13日以降主力は順次、本島に移動、10試合の練習試合をこなして、27日からは「球春みやざきベースボールゲームス」3試合を消化し、高知へ移動。春野で「プロ野球プレシーズンマッチ」2試合を西武と行い、その後、関東へ帰ってオープン戦に突入する。

 ところがここで問題が生じた。2021年までは、石垣島を離れた後の「ホーム」がなかったのだ。沖縄本島、宮崎、高知と続く遠征での練習試合は、すべて相手チームのキャンプ地での事実上のビジターゲーム。これでは、試合前後の練習もみっちりできない。

 かつてのオリオンズ時代の一時期、ロッテは、本拠地球場だった東京スタジアムを追われ、現在楽天が本拠としている当時の仙台宮地球場を仮の本拠として、ホームゲームの半分ほどを消化。その他は他の首都圏の他球団の本拠地球場を間借りしたり、地方遠征したりで乗り切った。これを人は「ジプシー・ロッテ」と揶揄したが、時を経て千葉ロッテはキャンプでの「ジプシー」生活を余儀なくされることとなった。

あのイチローも汗を流した2次キャンプ地、糸満

 そこで千葉ロッテ球団は、一昨年から本島での「ホーム」として糸満・西崎球場に腰を据えることにした。ここはかつてオリックスがキャンプ地にしていたところだ。前身の阪急時代は、キャンプといえば高知市営球場が定番だったが、オリックスに身売りされた1989年に主力選手がキャンプ前半をここで送るようになると、この2年後の本拠地の神戸移転、ニックネームの「ブルーウェーブ」への変更を機にキャンプ地は糸満に一本化された。

 この翌年に入団してきたのがあのイチローだ。イチローのキャンプと言えば、宮古島というイメージが強いが、オリックスが宮古島を使い始めたのは1993年からのことで、この年は前半を宮古島、後半を糸満というパターンだったが、彼がブレークした1994年からはオリックスの一軍は糸満を離れ、キャンプ地を宮古島に一本化している。

 ただ、離島の宮古島にキャンプ地を移したことで、オリックスも近年のロッテ同様の悩みを抱え、2005年には「古巣」高知で後半のキャンプを行うようになり、2015年からは宮崎・清武に腰を据えている。

試合前の韓国ロッテのシートノックを興味深げに眺める千葉ロッテナイン
試合前の韓国ロッテのシートノックを興味深げに眺める千葉ロッテナイン

ようやく行われるようになったホームゲーム

 2022年からロッテは糸満を2次キャンプ地にするようになったが、「ジプシー」状態は完全には改善されなかった。本島に本拠地を得たものの、肝心の試合が組めなかったのだ。

 西崎球場は、住宅地に囲まれた運動公園内にある。プロの打者が放つファールボールは簡単に小さなスタンドを越えてしまう。バッティング練習の際はケージを設置するため、さほど問題がないが、試合開催となると問題が生じる。過去のオリックス時代には3度オープン戦が行われたが、当時と現在とでは、ボールによる事故、トラブルに対するスタンスも随分違っている。

 そのようなわけで、せっかく本島で本拠地を確保したのに、練習試合はすべて敵地に移動というはめになった。これに対応するため、糸満市も早速対応。その年のオフには球場を囲う防球ネットを設置した。そして晴れて昨年からロッテは練習試合をホーム・西崎球場で行えるようになった。今年も練習試合10試合のうち、半数の5試合を西崎球場で開催している

この日の千葉ロッテの先発は開幕投手候補の小島だった。
この日の千葉ロッテの先発は開幕投手候補の小島だった。

千葉ロッテが韓国ロッテに快勝

 試合の方だが、すでに合同練習をここで行っていることもあり、和やかなムードで進んだ。スタンドのファンのほとんどは千葉ロッテファンの日本人だったが、韓国人ファンの姿もちらほら見られた。スタンドの外では佐々木のそっくりさん芸人が撮影に現れるなど、練習試合らしからぬ盛り上がりをみせていた。

試合会場に現れた沖縄在住のそっくりさん芸人、マチョ谷翔平と華奢木朗希
試合会場に現れた沖縄在住のそっくりさん芸人、マチョ谷翔平と華奢木朗希

 千葉ロッテは開幕投手候補の小島、韓国ロッテの方は一昨年阪神で5勝を挙げ、昨シーズン途中に入団したウィルカールソンと共に主戦投手を立ててきた。

元阪神のウィルカールソンが韓国ロッテの先発投手として登板した
元阪神のウィルカールソンが韓国ロッテの先発投手として登板した

 試合が動いたのは3回。先攻の千葉ロッテの9番茶谷がレフトポール際へのソロホームランを放ち先制するも、その裏に韓国ロッテが追いつく。

先制ホームランを含む3安打の大活躍だった茶谷
先制ホームランを含む3安打の大活躍だった茶谷

 続く4回も2アウト一三塁から岡がセンター前に弾き返して1点を追加するも、同じく韓国ロッテも元メジャーの新助っ人、レイエスの一発で1点を返す。さらに韓国ロッテは6回裏に主砲、ハン・ドンヒの2アウトからのタイムリーでついに勝ち越した。

デトロイト・タイガースで5シーズンの経験がある新外国人レイエスは見事なホームランを放った。
デトロイト・タイガースで5シーズンの経験がある新外国人レイエスは見事なホームランを放った。

 ところが千葉ロッテも黙ってはいない。7回表に途中出場の松川、そして3回に先制ソロを放った茶谷の連続タイムリーでついに逆転。この回4点を挙げて逆転に成功し、試合を決めた。

韓国ロッテは、9回に「ロン毛」で話題のキム・ウォンジュンが登板した。
韓国ロッテは、9回に「ロン毛」で話題のキム・ウォンジュンが登板した。

 この国際交流練習試合は今日25日も行われる。佐々木朗希が登板予定とあって、他球場のオープン戦を凌ぐフィーバーが起こることが予想される。

スコアボードのチーム表記は、「千葉ロッテ」と「ジャイアンツ」だった。
スコアボードのチーム表記は、「千葉ロッテ」と「ジャイアンツ」だった。

(写真は筆者撮影)

ベースボールジャーナリスト

これまで、190か国を訪ね歩き、23か国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆のほか、NPB侍ジャパンのウェブサイト記事も担当した。プロからメジャーリーグ、独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌に寄稿の他、NTT東日本の20周年記念誌作成に際しては野球について担当するなどしている。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020、24カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。2024年春の侍ジャパンシリーズではヨーロッパ代表のリエゾンスタッフとして帯同した。

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