科学大国になったが…
ついに科学の世界は「米中2強」時代になった。
科学技術振興機構(JST)の調査が元ネタだそうだ。どの報告書か明記されていないが、おそらく研究開発の俯瞰報告書(2017年)だろう。
中国国内では自嘲気味に、まだそこまではいっていないよ、という声もあるようではあるが。
いずれにせよ、中国の存在感が増しているのは、科学者ならだれでも実感しているだろう。
ところが…
研究不正大国にもなった中国
科学大国になると同時に、研究不正大国にもなりつつあるようだ。
こうしたなか、中国政府は研究不正に厳しい姿勢で臨もうとしている。
研究不正で死刑も
厳しさは半端ではない。4月に新たな法律が施行された。研究不正によって健康被害が生じた場合、死刑もあるというのだ。
これに対して、研究不正を行った研究者を収監したこともあるアメリカから、これはやりすぎという声が出ている。
アメリカで懲役刑を食らったのはエリック・ポールマン、ドンピョウ・ハン(Dong-Pyou Han)だ。
私自身、さすがに死刑はやりすぎのように思う。
甘い対応の日本
アメリカでは、刑事罰を受ける研究不正はたったの2パーセントだという。
しかし、同じく「研究不正大国」とさえ言われる日本の対応は、2パーセントをたったなどと言えない。
先日、琉球大学で発生した研究不正事件の報告が、文部科学省のページに公開された。
告発受理は2010年。ようやく処分が決まった。
この報告には、教授や処分対象者の名前が出ていないが、撤回論文数ランキングで世界第11位にランクされている森直樹教授なのは明らかだ。
しかし、学内で公的研究費の応募申請を停止されたのが2015年11月。これまでに森教授は研究費を受け取っていた。
名前も公表されず、地位もそのまま。研究費さえ受け取っていた。こんな甘い対応で、研究不正を防ぐことができるのか。
死刑と甘い処分の間で
研究不正を犯した人をどうすべきか。答えは簡単ではない。
研究不正が死刑に値する犯罪とは思えない。しかし、大したおとがめもなく、研究を続けられるというのも甘すぎる。
中国の対応を対岸の火事として眺める余裕は、私たちにはないのだ。
こうした甘い対応はよくないと、東北大学の前総長が関与する事例に対して、研究者たちが立ち上がった。
こうした研究者の声を、東北大学やJSTは真摯に受け止めてほしい。
もうすぐ、東京大学が研究不正の調査結果を発表するという。
東京大学がどのような調査をし、どのような処分を下すのか。公表される報告書が、「研究不正大国」からの脱却の第一歩になることを願う。