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サッカー韓国代表の新監督、最有力候補にフラれてショック。“交渉決裂”でさらなるピンチに立つワケ

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
ジェシー・マーシュ氏(写真:ロイター/アフロ)

サッカー韓国代表の新監督を探すKFA(韓国サッカー協会)の“プランA”が白紙になった。

アジアカップでベスト8に終わった韓国代表はチームを指揮したユルゲン・クリンスマン監督を解任。その後、ソン・フンミンとイ・ガンインの対立が明らかになるなど、迷走が続く。

(参考記事:韓国代表、アジア杯期間“内部分裂”の真相…主将ソンの指負傷事件、ベテランの“若手除外要求”まで【独占】)

代表監督人事権を持つ国家代表戦力強化委員会メンバーも刷新し、今月中にも新監督を発表するとしていた。

しかし、『スポーツソウル』サッカー班の取材によると、KFAの事情に詳しい複数の関係者が、「代表の新監督候補だったリーズ・ユナイテッド前監督のジェシー・マーシュ氏との交渉が難航している」と伝えたという。“事実上の決裂”と言ってもおかしくない状況であることが確認された。

レッドブル・ザルツブルクやRBライプツィヒなどを率いていたアメリカ人監督のマーシュ氏をKFAは最有力候補に挙げて交渉を進めていた。

国家代表戦力強化委員会のチョン・ヘソン委員長はマーシュ氏を最有力補に挙げ、KFAもマーシュ氏で“事実上決定”の姿勢で接触した。そのほかにも候補はいるが、「まずはマーシュ氏」という構想で交渉に注力したという。

たた、マーシュ氏はリーズ監督時代、年俸だけで350万ポンド(日本円=約6億6832万円)程度を受け取ったとされているが、それはKFAが現実的に耐えられるような年俸水準ではなかったらしい。

KFAが代表監督に考えていた年俸は、最大250万ドル(約3億8946万円)以下。マーシュ氏が望む金額とは差が大きく、交渉が決裂した可能性が高いという。

KFAとして直ちに国家代表戦力強化委員会を通じて新たな候補を選ばなければならないが、悩ましいのは現時点での候補の面々を見ると今一つ“重み”が落ちるということだ。

元トルコ代表監督でかつてFCソウルを指揮して韓国代表監督に興味を示しているシェノル・ギュネシュ氏は70歳を超える高齢だ。

もうひとりの候補に挙がっているイラク代表監督のヘスス・カサス氏は、過去にバルセロナの分析官やスペイン代表のアシスタントコーチを務めた経験があるとはいえ、代表監督としての実績としては韓国のサッカーファンたちを納得できるようなキャリアや指導力を示せていない。

ウォルヴァーハンプトンやボタフォゴで監督を務めたブルーノ・ラージ氏は、代表監督の経歴がまったくない。

それだけに悩ましいところだが、“タイムリミット”が差し迫っている。

韓国代表は来る6月の北中米W杯アジア2次予選で、6日にシンガポール代表、11日に中国代表と戦わなければならない。

このため、KFAは5月中にも新監督を選出するという構想を練っていた。マーシュ氏との交渉が円滑に行われていたならば、十分に実現可能なシナリオだったが、最有力候補だったマーシュ氏の招へいが失敗に終われば、ますます追い込まれる。

KFAの事情に詳しい関係者は、「マーシュ氏との交渉が行われない場合に備えるべきだったが、KFAは(マーシュ氏に)事実上“オールイン”したので、プランBが円滑に行われるのは難しい状態だ。選任にはさらに時間がかかるものとみられる」と懸念を示した。

最悪の場合、6月のW杯予選も暫定監督体制で戦うことになるのだろうか。サッカー韓国代表の迷走は続く。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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