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沢村賞を受賞した中日・大野の「10完投」と「6完封」凄いのはどちらか?メジャーと比較して検証

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
沢村賞に選ばれた大野雄大。写真は大学時代のもの(写真:岡沢克郎/アフロ)

 中日ドラゴンズの大野雄大が沢村賞を初受賞した。

 選考委員長の堀内恒夫は「完投や完封などいろいろ加味して、ふさわしいのは大野となった」と語り、読売ジャイアンツの菅野智之との一騎討ちを制した決め手は、完投と完封の数だと明かした。

 

 投手分業制が確立された現在の野球界で、大野の10完投、6完封は驚異的な数字。今季のNPBで大野に次ぐ完投数を記録したのは、阪神タイガースの西勇輝の4完投で、完封は菅野の3完封。どちらも大野の半分にしか達していないことからも、大野の凄さが伝わってくる。

 沢村賞に菅野を推していた村田兆治選考委員も「最終的には大野の完投数。別格だった」と大野の突出した力を認めている。

 10完投と6完封。どちらも凄い数字だが、より価値が高いのはどちらだろうか?

 メジャーリーグと比較しながら、10完投と6完封の価値を検証してみたい。

 まずは10完投。

 メジャーでは日本球界以上に投手の分業制が明確で、先発投手は100球を目処に交代する。

 メジャーの今季最多はナショナル・リーグのサイ・ヤング賞に選ばれたトレバー・バウアー(シンシナティ・レッズ)など4投手が記録した2完投。ただし、今季のメジャーはシーズン60試合制で、120試合制のNPBの半分だった。それでも、バウアーの数字を倍にしても4完投で、大野の半分にも満たない。今季、バウアーの2完投はどちらも7イニング制のダブルヘッダーでのもので、9イニングは投げていない。今季のメジャーで9イニング以上を2試合以上投げての完投を記録した投手はいない。

2011年に11完投を記録したタンパベイ・レイズのジェームズ・シールズ(写真:三尾圭)
2011年に11完投を記録したタンパベイ・レイズのジェームズ・シールズ(写真:三尾圭)

 2000年以降、メジャーで二桁完投を記録したケースは1度しかない。2011年にジェームズ・シールズ(当時、タンパベイ・レイズ)が記録した11完投だ。

 メジャーでは20年間で一度しか達成していない記録を大野は達成したことになる。

 次に6完封を見てみよう。

 メジャーでは1990年以降、6完封以上を記録したのは1度だけ。2011年にクリフ・リー(当時、フィラデルフィア・フィリーズ)が6完封を上げている。

 二桁完投はメジャーで20年に1度だが、6完封は30年に1度とさらに希少価値が高い。

2011年に6完封を記録したクリフ・リーは、過去30年間でメジャー唯一の6完封以上を記録(写真:三尾圭)
2011年に6完封を記録したクリフ・リーは、過去30年間でメジャー唯一の6完封以上を記録(写真:三尾圭)

 ここで考慮したいのが、NPBとMLBの試合数の差だ。今季のNPBは120試合で、例年のMLB公式戦は162試合。その差は42試合もあり、1.35倍となる。

 今季の大野の10完投、6完封を162試合制で換算すると、13完投、8完封(小数点以下は切り捨て)になる。

 メジャーで最後に13完投以上を記録したのは1998年のカート・シリング(当時、フィリーズ)の15完投。8完封はティム・ベルチャー(当時、ロサンゼルス・ドジャース)が1989年――大野が生まれた翌年――に記録して以来の快挙となる。この時代はメジャーでもまだ先発投手が120~130球を投げるのが当たり前で、ベルチャーも120球台の完封が3試合、130球台の完封も2試合あった。

 さらに凄いのは大野の完投率と完封率。今季は20試合に登板しているので、完投率50%、完封率30%となる。

 メジャーで最後に完投率50%を記録したのは、1987年に36登板で18完投をしたロジャー・クレメンス(当時、ボストン・レッドソックス)までさかのぼる。

 完封率30%超えはストライキでシーズンが短縮された1981年にフェルナンド・バレンズエラ(当時、ドジャース)が25登板で8完封の完封率32%を記録して以来、誰も到達していない。

 大野の10完投も素晴らしいが、120試合のシーズンで6完封は現在の野球で考えると信じられない記録。

 沢村賞はそのシーズンに最も活躍した先発完投型のピッチャーに贈られる賞だが、メジャーでは先発完投型の投手は滅亡寸前となってしまっている。大野雄大は日本球界が世界に誇る、希少となった先発完投型投手だ。

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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