平成30年の台風 変な台風が多かった割には進路予報が正確
台風30号の発生か
日本付近は西高東低の冬型の気圧配置となって、強い寒気が南下していますが、フィリピンの東海上の熱帯低気圧が発達して台風30号になりそうです(図1)。
この時期の台風は、西進を続けてフィリピン南部に上陸することが多いのですが、台風が発生して台風30号になったとしても、このまま西進してフィリピンに上陸し、日本には影響しない見込みです。
日付変更線付近の熱帯域に積乱雲がたくさんありますが、渦巻きができにくい赤道の極近くの海域ですので、平成30年(2018年)は、この熱帯低気圧が台風に発達したとすれば、30個の台風発生数になりそうです。
平年値(昭和56年(1981年)~平成22年(2010年)の平均値)の25.6個より多い発生数ですが、これは、8月の発生数が9個と多かったことによります(図2)。
また、平成30年(2018年)の台風上陸数は5個でした(表1)。
台風資料が整備されている昭和26年(1951年)以降では、平成16年(2004年)の10個、平成28年(2016年)、平成5年(1993年)、平成2年(1990年)の6個に次ぐ、5位タイでした。
平年値(2.7個)の2倍の多い上陸数ですが、それ以上に、珍しい特徴を持った台風が多かったということができます。
気象災害が多かった平成30年(2018年)
平成30年(2018年)は気象災害の多い年でした(表2)。
そして、その多くは台風によるものでした。
平成30年(2018年)6月28日から7月8日にかけて西日本を中心とした豪雨は各地で大きな災害が発生しました。
特別警報が11府県で発表となり、気象庁では「平成30年(2018年)7月豪雨」と命名しましたが、一般的には、「西日本豪雨」と呼ばれています。
台風7号は、上陸こそしませんでしたが、7月3日に東シナ海を北上して、4日に日本海で温帯低気圧に変わるまで、西日本に多量の水蒸気を持ち込み、平成30年(2018年)7月豪雨の原因の一つになっています(図3)。
図3で、津軽海峡付近にある低気圧が、台風7号から変わった低気圧です。
日本付近の台風は、上空の偏西風によって北東進することが多いのですが、台風12号は東海沖を西進しました(図4)。そして、三重県に上陸後、西日本を東から西に横断した初めての台風となりました。
9月4日に徳島県南部に上陸した台風21号は、平成5年(1993年)の台風13号以来、25年ぶりに非常に強い勢力で上陸した台風となり、四国や近畿地方を中心に暴風や高潮の被害をもたらし、関西国際空港が一時水没しました。
大阪湾の高潮の高さは、3メートル29センチと、これまでの記録である昭和36年(1961年)の第2室戸台風のときに記録した2メートル93センチを超えました(図5)。
9月30日に和歌山県田辺市付近に上陸した台風24号は、眼が非常に大きな環状台風であったために、上陸後も勢力を落とさずに列島を縦断し、東・北日本でも強い風が吹きました。そして、JR東日本で、初めて計画運休を行った台風になりました(図6)。
平成30年(2018年)の進路予報誤差
気象庁が発表した、平成30年(2018年)の台風29号(台風27号、28号、29号は速報値)までの進路予報誤差は、1日先で67キロ、3日先で180キロ、5日先で408キロメートルとなっています(図7)。
珍しい台風(変な台風)が多い割には、進路予報が正確だったということができるでしょう。
台風進路予報の精度は、その年の特徴に起因する様々な変動があり、進路予報が難しい台風が多い年は、予報誤差が大きくなりますが、長期的に見れば、向上しています。
台風の予報円表示が始まった昭和57年(1982年)は、24時間先までしか発表していなかったのですが、予報誤差が200キロ以上ありました。それが、現在では3分の1の誤差です。
3日先までの予報が始まった平成9年(1997年)の3日先予報の誤差は約400キロでしたが、約200キロと、昭和57年(1982年)の24時間先までの予報と同程度の誤差のところにきています。
現在、台風の進路予報は5日先までですが、進路予報より難しい強度の予報は3日先までしか行っていません。
気象庁では技術開発を進め、新元号元年(2019年)の台風期までには、台風の強度予報も5日先まで行うことを計画しています。
台風予報は、着実に進歩しています。
図1、図4、図5、図6、図7の出典:気象庁ホームページ。
図2の出典:気象庁ホームページに著者が台風30号を加筆。
図3、表1の出典:気象庁報道発表資料。
表2の出典:著者作成。