岩尾、小泉、明本・・・浦和レッズのアジア制覇を支えた”J2経験組”の選手たちがもたらすもの
2022シーズンのACLファイナルは浦和レッズがサウジアラビアのアル・ヒラルを合計スコア2ー1で破り、優勝を果たした。
埼玉スタジアム2002ではスタジアムの大半を埋めた浦和のサポーターはもちろん、決勝の舞台を観ようと足を運んだファンに感動をもたらしたことは間違い無いだろう。
苦しい戦いの中で、怪我上がりながら攻守に奮闘し、MVPに輝いた酒井宏樹や再三のビッグセーブでチームを救ったGK西川周作、そしてアウェーの第一レグで、殊勲のゴールを決めた興梠慎三といった選手たちが目立ったが、岩尾憲、小泉佳穂、明本考浩といった、J2から浦和の主力となった男たちの活躍を抜きに、この優勝を語ることはできない。
第二レグで相手のオウンゴールにつながるFKを蹴った岩尾はマリウス・ホイブラーテンに合わせたキックについて「風はだいぶ計算しましたけど、計算してても凌駕してくる風だったので(笑)」と振り返る。
「不甲斐ないキックを何回かしてしまったんですけど、あの瞬間だけ合えばオッケーかなと。マリウスと(アレクサンダー・)ショルツが両方に分かれていて、どっちかに合わせるというのは分析でもやっているというか。たまたまマリウスの方に蹴りましたけど、ショルツの方に蹴ったとしても、彼が何かを起こしてくれたと思います。めちゃくちゃ良いボールじゃなかったですけど、マリウスに感謝したい」
そう語る岩尾は昨年、6シーズン在籍した徳島ヴォルティスからの恩師でもあるリカルド・ロドリゲス前監督が率いていた浦和にやってきた。J1に昇格した徳島で1シーズン経験していたが、古巣の湘南ベルマーレでもJ2降格を経験しており、そこから水戸ホーリーホックを経由して徳島時代を含めて、ほとんどのキャリアをJ2で過ごしてきた。
そんな岩尾だが、リカルド前監督が昨シーズン限りで退任し、マチェイ・スコルジャ監督がやってきてからも中盤のコンダクターとして信頼を勝ち取り、セットプレーのキッカーとしても欠かせない選手の一人になっている。
「(浦和でのアジア制覇は)完全にイメージを凌駕してます。だけど、こういう人間がこういうことを結果として残すというのはある方にはすごく響くというか・・・代表歴も無いですし、J2で長くやってきて、賛否両論ある中だと思いますけど、それでもできることがあるというか。やらなきゃもちろんできないですけど、やればこういうこともあるというのをお見せできたことは自分の成長にもつながりますし、一定の充実感があります」
その岩尾より1年早く、J2のクラブから移籍してきたのが小泉と明本だ。青山学院大学からFC琉球(現在はJ3)に加入し、評価を高めた小泉は浦和でいろいろな課題に向き合いながら、持ち前のセンスに磨きをかけてきた。栃木SCのアカデミー育ちである明本は高い身体能力と頑張り抜く姿勢を押し出しながら、前線から左右サイドバックまでこなす究極のマルチプレーヤーとして、浦和の勝利を支えている。小泉は表彰で、明本と一緒にトロフィーを掲げた理由を語る。
「僕は同期入団で、J2から一緒に来て、天皇杯、ACLと戦ってきた仲なので。一番一緒にトロフィーを掲げたかったのがアキだった。僕から声をかけて掲げました。僕もアキも、大会の主役とか、チームの主役になる感じじゃなかったかもしれないですけど、こうして少なからずチームに貢献できていることを誇りに思っていいのかなと・・・噛み締めてました」
また今回のファイナルは出番が無かったが、水戸ホーリーホックからやってきた平野佑一やかつてサンフレッチェ広島や川崎フロンターレに在籍した経験はあるものの、キャリアの多くをJ2で過ごした馬渡和彰、昨シーズンJ1・J2入れ替え戦まで進出したロアッソ熊本から加入した”カルロス”こと髙橋利樹のような選手もいる。
ACLファイナルという舞台は全ての選手が立てるような場所ではない。しかし、こうした選手たちがその舞台に立って、チームの優勝を支えた事実が、ここから決してエリートではないJ2、さらに言えばJ3の選手たちにも勇気を与えるであろう活躍だったと言える。