【駅の旅】行田市のB級グルメってなんだ?/秩父鉄道・行田市駅 (埼玉県)
知る人ぞ知るこの町の名物を味わうために行田市へ
高崎線の熊谷で秩父鉄道の羽生行きに乗って3駅目に行田市(ぎょうだし)駅がある。熊谷から7分、東武伊勢崎線の羽生からだと12分でこの駅に着く。駅に自動改札はなく、ICカードも使えない。窓口では今も手売りの硬券きっぷを売っている。駅は行田市の中心部に近いが、意外に周辺はひっそりとしていた。
この駅に降りた目的は「ゼリーフライ」と「ふらい」を味わうこと。これは、知る人ぞ知る、この町のB級グルメ。明治時代から市民に愛され続けている、とても不思議な食べ物なのだ。
「ゼリーフライ」と「ふらい」は行田の二大B級グルメ
駅に着くと、早速、「ゼリーフライ」と「ふらい」が同時に味わえる店、「かねつき堂」を目指す。歩くこと12~3分。住宅街にあるこの店の入口には、忍城にあった鐘楼が置かれており、それが店名になっている。ちなみにそこに吊されていた鐘は、忍城の郷土博物館に展示されている。
「ゼリーフライ」とは、ゼラチンを固めたゼリーとは似ても似つかぬもの。コロッケのような形の熱々の茶色い食べ物である。中味は、おからとポテトをまぜあわせ、ニンジンや長ネギを加えて植物油で揚げ、ソースで味付けしたもの。もちっとした歯触りだが、あっさりしていて胸焼けになることもない。ほんのり甘く、香ばしい。2個で税込200円という庶民的な値段が嬉しい。「子供のころからずっと食べていますよ。家でも作ります」とは居合わせた常連女性の話。形が小判のような銭形なので「ゼニ」がなまってゼリーと呼ばれるようになったそうだ。フライは漢字で書くと「富来」、つまり富が来るようにという願いが込められているとか。明治時代にこの町で盛んな足袋工場の女性たちのおやつとして作られたのが始まりという。
一方の「ふらい」は、油で揚げていないのにその名がある。小麦粉を水でとき天板の上で焼いて肉やネギなどを入れたお好み焼きのようなもの。ソース味と醤油味が選べて、どちらも350円とお手軽価格。せっかくなので、100円増しのソース味の大を頼むとかなりのボリュームだったが、口当たりの良さに一気に食べてしまった。いずれも店によって味が違うようなので、食べ比べるのも楽しいかもしれない。
忍城は『のぼうの城』で知られる
忍城(おしじょう)は、戦国時代、この城に籠城した成田長親がわずか3千の兵で、2万の石田三成の大軍による水攻めに耐えて守りぬいたことで知られる。これを描いた和田竜氏の小説『のぼうの城』は、平成24年には映画化され、全国的に有名になった。この忍城趾はかねつり堂のすぐ近く。土塁だけが残されていたが、1988(昭和63)年に御三階櫓が建てられ、内部は郷土資料館になっている。
素朴な銅の人形や足袋蔵など町歩きも楽しい
駅から忍城趾に向かう県道28号線の歩道上には、無数の銅の人形が並んでいる。これは童(わらべ)の記憶と題された銅板造形作家の赤川政由氏の作品。人形たちの素朴な表情に心が洗われる。
また、行田は古くから足袋(たび)の町として栄え、足袋の生産量日本一を誇っている。近くには日本遺産構成資産となっている歴史ある足袋蔵などの古い建物がたくさん残っており、わけもなく町歩きするのも楽しい。また、埼玉の地名発祥の地となったさきたま古墳公園は駅の南東2.7キロの場所にある。
行田は東京から日帰りで行けるちょっとした穴場かもしれない。なお、JR高崎線の行田駅は市の中心部から約5キロ離れており、バスが接続している。
【テツドラー田中の「駅の旅」⑮/秩父鉄道/行田市駅/埼玉県行田市中央】