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冬眠できないハリネズミ増加 背景に大雨と暖秋

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

日本では触って遊べるカフェがあるほど人気のハリネズミですが、イギリスでは生垣に現れるくらい日常的に見られる動物なのだそうです。

英語名ヘッジホッグ(hedgehog)も、訳せば「生垣(hedge)の豚(hog)」なのだとか。フグが河豚、イルカが海豚なら、こちらは垣豚といったところでしょう。

そんなハリネズミに関係する、心痛むニュースが入ってきました。

数百匹の赤ちゃんハリネズミ救出

BBCの記事によると、今年イギリスのレスターシャー・ワイルドライフ病院には、医師も見たことのないほど小さな赤ちゃんのハリネズミが多数運び込まれているのだといいます。

その数は200匹以上に及び、去年の同時期の2倍にあたるのだそうです。

でもなぜ小さい赤ちゃんが次々と見つかっているのでしょうか。その背景には天候があるようです。

理由1: 夏の大雨

今夏イギリスは度重なる低気圧の襲来で、幾度となく大雨が降りました。その結果、ハリネズミの巣が流されてしまい、赤ちゃんが死んでしまったのです。そのため母親が再び出産したものの、その時期が遅すぎたといいます。

というのは、ハリネズミが冬眠をするには、越冬のための栄養分を体に蓄えていなくてはなりません。体重は450グラム以上であることが必要なのだそうです。しかし、今秋生まれた赤ちゃんはその大きさに達することができないので、冬眠ができず、命を落としてしまう可能性があるのです。

理由2: 秋の暖かさ

それだけではありません。

テレグラフによると、今秋は暖かい傾向が続いているためハリネズミが活発に動き回っており、冬眠のために必要な体内の脂肪を消費してしまっているそうなのです。

イギリスの環境NGO「ワイルドライフ・トラスト」は、もし越冬が難しそうな小さなハリネズミを発見したら、保護団体に連絡するよう呼びかけています。

減少するハリネズミ

ハリネズミは環境の変化にとても脆弱です。天候のみならず、住処となる低木の減少、天敵のアナグマの増加などの理由から、今世紀に入り個体数が半減しているという報告もあります。

加えて、例年11月5日には「ガイ・フォークス・ナイト」と呼ばれる、花火やたき火をするお祭りがあり、木や枯れ葉に隠れて冬眠をしているハリネズミが誤って焼かれてしまうこともあるのだそうです。

ハリネズミは自分から敵を攻撃することはなく、自己防衛にのみ体表のハリを広げて身を守る習性があります。そんな健気な小動物に死の危険が迫っていることに胸が痛みます。

(↑火をつける前に、ハリネズミがいないか必ず確認するよう注意を促しています)

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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