暑い夏と遅い木枯らしは最遅上陸台風を記録した30年前と同じだが
令和2年(2020年)の台風発生数と上陸数
令和2年(2020年)の台風シーズン前半は発生数が少なかったのですが、後半は一転して発生数が多くなり、現在までに22個発生しています(表)。
しかし、11月9日3時に台風21号、同日15時に台風22号が発生したあとは台風が発生していません。
現在も、北太平洋西部の熱帯域には、台風の卵である熱帯低気圧はおろか、熱帯低気圧になる可能性がある雲の塊もありません(タイトル画像参照)。
12月の台風発生数の平年値は1.2個ですので、令和2年(2020年)の台風発生数は、台風シーズン前半の少なさが影響し、平年値を超える26個以上ということはなさそうです。
また、令和2年(2020年)の台風上陸数は未だに0です。
気象庁で用いている「台風の上陸」の定義は、「本州、四国、九州及び北海道の陸上に台風の中心 (気圧の一番低い所)が達したもの」です。
沖縄本島など島の上を通過した場合は上陸とは数えていませんので、沖縄には定義上、台風は上陸しません。
気象庁ホームページに、上陸が遅い台風の一覧表があります。
これによると、一番遅く上陸した台風は、平成2年(1990年)11月30日に和歌山県白浜町の南に上陸した台風28号で、11月に上陸したのは、この台風だけです。
12月の上陸台風はありませんので、このまま、令和2年(2020年)の台風上陸数0が確定しそうです。
最遅上陸台風
最遅上陸台風は、平成2年(1990年)11月22日9時にグアム島の南海上で発生したあと西進しながら発達し、フィリピンの東海上で向きを北東に変え北上しています(図1)。
11月末ともなれば日本近海の海面水温が低くなり、北からの寒気が南下しやすくなっていますので、北上台風のほとんどは温帯低気圧に変わるか、熱帯低気圧に衰えます。
しかし、この年は日本近海の海面水温がまだ高く、北からの寒気南下が弱かったため、台風の勢力で、11月30日14時頃に和歌山県白浜町の南に上陸しています。
平成2年(1990年)では6個目の上陸台風です。
特に、和歌山県には、9月中旬から10月初めにかけて台風19号、20号、21号と史上初めて3度連続で上陸していますので、これが4度目の台風上陸となっています。
当時、著者は気象庁予報部予報課の予報官(班長)として予報当番に入っていました。
あらかじめ決められている当番表に従って分担業務をしており、偶然ですが、和歌山県に上陸した4個の台風は、すべて上陸情報を書いて発表しました。
後に、和歌山地方気象台長として勤務する因縁があったのかもしれませんが、その時は、「一体どうなっているのか」と思いました。
また、台風通過によって寒気が南下すると大雪にも心配する必要があり、難しい情報発表になるとも感じました。
台風28号が接近するまでは、北からの寒気南下が弱く、異常に暖かい日が続いていたことから、シーズンを迎えた北国のスキー場でも、雪不足でオープンもままならない状況でした。
台風28号によって大きな被害が発生しましたが、スキー場にとっては、台風28号通過によって引き起こされた寒気南下によって雪が降り、一息ついています。
令和2年(2020年)と平成2年(1990年)
今年、令和2年(2020年)は、最遅上陸台風があった平成2年(1990年)と同様、記録的に暑い夏でした。
また、残暑が厳しく、11月になっても寒気が大きく南下せず、木枯らしが吹かないということも似ています。
気象庁では、木枯らしが最初に吹いた日を、「木枯らし1号」として情報を発表していますが、関東地方での発表は、東京地方(島しょ部を除く東京都)のみです。
東京地方の「木枯らし1号」の発表基準は、東京管区気象台の観測所のある東京都千代田区で毎秒8メートル以上の風が吹いたときで、令和2年(2020年)は、11月4日朝に吹きました。
とはいっても、「木枯らし1号」が吹いた11月4日の最大風速は8.2メートルで、3時18分のことです。
しかし、その2分後の3時20分には最大瞬間風速こそ15.8メートルでしたが、最大風速は7.5メートルに弱くなるなど、8メートル以上の風が吹いたのは夜明け前の数分です。
ほとんどの人は、気がつかないうちに「木枯らし1号」が終わっています。
そして、その後は気温が高めに推移しています。
ただ、11月下旬からは違っています。
令和2年(2020年)は、平成2年(1990年)と違って、西高東低の冬型の気圧配置となって寒気が南下しやすくなって、平年並か平年より低いところまで気温が下がる予想です(図2)。
これなら、台風が北上してきても、台風のまま上陸することはないと思われます。
そして、日本は本格的な冬に向かいます。
タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供。
図1の出典:気象庁ホームページに著者加筆。
図2、表の出典:気象庁ホームページ。