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東京地方で吹いた実質上の「木枯らし1号」

饒村曜気象予報士
冬の寒さ オフィス街(提供:ayakono/イメージマート)

気温急降下

 令和2年(2020年)11月21日は、寒冷前線が通過し、西高東低の冬型の気圧配置となり、季節風が強い三連休の初日となりました(図1)。

図1 地上天気図(11月21日9時)
図1 地上天気図(11月21日9時)

 このため、強い寒気が南下し、最高気温は前日より大幅に低くなり、10度以上も低くなったところもあります。

 気温が下がって平年並みの気温の風ですが、関東地方では、木枯らしと呼ばれる体感的には冷たい北西の風が吹いています。

 気象庁では、木枯らしが最初に吹いた日を、「木枯らし1号」として情報を発表していますが、関東地方での発表は、東京地方(島しょ部を除く東京都)のみです。

 西高東低の冬型の気圧配置となり、関東地方の多くの県で、毎秒8メートル以上の強い風が吹いても、東京管区気象台の観測所のある東京都千代田区で毎秒8メートル以上の風が吹かなければ「木枯らし1号」の発表はありません。

 また、東京地方以外では、近畿地方(2府4県をまとめて)だけの発表です。

 令和2年(2020年)の「木枯らし1号」は、近畿地方で10月23日に吹きましたが、東京地方も、11月4日朝に吹きました

「木枯らし1号」

 東京で「木枯らし1号」が吹いた11月4日の最大瞬間風速は、3時20分の毎秒15.8メートルですが、「木枯らし1号」の基準となる最大風速は8.2メートルで、3時18分のことです。

 しかし、その2分後の3時20分には最大瞬間風速こそ15.8メートルでしたが、最大風速は7.5メートルに弱くなるなど、8メートル以上の風が吹いたのは夜明け前の数分です。

 1時間毎に風速を示すと、8メートル以上の風はでてきませんし、日中の風速は3メートル程度です(図2)。

図2 東京の1時間毎の風速(上は11月4日、下は11月21日)
図2 東京の1時間毎の風速(上は11月4日、下は11月21日)

 つまり、ほとんどの人は、気がつかないうちに「木枯らし1号」が終わっています。

 また、「木枯らし1号」が吹いたあとの気温は高めに推移しています。

 11月21日の「木枯らし2号」とも呼べる木枯らしは、最大風速こそ8.2メートル(13時25分)ですが、日中には比較的長くやや強い風が吹いています。

 木枯らしが、冬の季節風の走りの現象とするなら、その後の寒さの予報も考慮すると、11月21日の木枯らしのほうが「木枯らし1号」として実感にあうと思います。

寒い12月の入り

 強い寒気の目安として、「上空約5500メートルの気温が氷点下30度以下」というのがあります。

 週明けは、その氷点下30度以下という寒気が北海道まで南下してきます(図3)。

図3 日本上空約5500メートルの気温(11月23日夜)
図3 日本上空約5500メートルの気温(11月23日夜)

 このため、北日本を中心に西高東低の冬型の気圧配置が強まります。

 そして、今週末は、氷点下30度以下の寒気が東北地方まで南下し、この寒気はしばらく継続する見込です。

 東京の最高気温の推移をみると、10月末以降の最高気温は平年より高い日が多く、今週初めは気温が低くなって平年並みです。

 最高気温が平年より低くなるのは今週末以降です(図4)。

図4 東京の最高気温と最低気温(11月22日から28日は気象庁、11月29日から12月7日はウェザーマップの予報)
図4 東京の最高気温と最低気温(11月22日から28日は気象庁、11月29日から12月7日はウェザーマップの予報)

 最低気温は、10月末以降、平年値を挟んで高かったり低かったりしていましたが、今週半ばまでは平年より高い予想です。

 そして、最低気温が平年より低くなるのも今週の末からで、寒い師走の入りです。

 本格的な冬の寒さが始まりますので、体調管理に十分注意して下さい。

 健康に過ごして医療機関に負担を掛けないことも、大きな新型コロナ対策です。

タイトル画像の出典:ayakono/イメージマート。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。

図3の出典:ウェザーマップ提供。

図4の出典:気象庁ホームページとウェザーマップの資料をもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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