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親子で読みたい!無償の愛を描いた絵本3冊~元保育士パパがすすめる【絵本の読み聞かせ】

hirofuminice元保育士Webライター

子育て中のお父さんやお母さんは、子ども達と絵本を楽しむ機会があると思います。毎日、読み聞かせをしているという人もいるでしょう。

絵本の読み聞かせは1冊の絵本と親子で座れる場所さえあれば簡単にでき、時間もあまりかかりません手軽にできて、さまざまな教育的効果もあるのでおすすめです。子育てにおける絵本の読み聞かせ効果については、「絵本の読み聞かせのポイントは無理しないこと~元保育士パパが教える【絵本の読み聞かせの子育て効果】」で紹介しています。

今回紹介する絵本のテーマは“無償の愛”です。無償の愛を描いた名作絵本を3冊紹介します。

無償の愛とは

無償の愛とは相手からの見返りや対価を求めず、自分よりも相手を大切に思うような深い愛情です。親が子どもに対して感じる愛情は、まさに無償の愛と言えるのではないでしょうか。

無償の愛を理解するのは難しいので、今回紹介する絵本は3冊とも5歳以上のお子さんにおすすめします。しかし、まだよく理解できない子どもも多いでしょう。もちろん、5歳未満のお子さんに読んでも問題はありません。小学生など自分で絵本を読める年齢になっても、親が読み聞かせをしたり感想を話し合ったりするのもよいでしょう。

それぞれの親子のやり方で、絵本を楽しんでいただけたらと思います。

無償の愛を描いた名作絵本① 『100万回生きたねこ』(佐野洋子 作・絵)

100万回生きたねこ』は絵本作家の佐野洋子さんが描き、1977年に出版されまました。2023年1~3月期にTBS系列で放送された金曜ドラマ『100万回言えばよかった』の中にフューチャーされていたので、知っている人も多いと思います。

誰よりも自分のことが好きで、100万回死んでもそのたびに生き返るオス猫が主人公。どんなメス猫も、主人公の雄猫のお嫁さんになりたがりますが、たった1匹、雄猫に見向きもしない白いメス猫と出会います。今まで自分のことしか愛せなかったオス猫が、白い猫と出会ったことで自分よりも大切な存在を知るという物語です。

『100万回生きたねこ』(Yahoo!JAPANショッピング)

無償の愛を描いた名作絵本② 『ないた赤おに』(浜田廣介 作)

ないた赤おに』は、明治時代に生まれ、大正から昭和にかけて活躍した童話作家、浜田廣介さんの代表作で、1930年代に発表されました。とても有名な作品なので、子どもの頃に読んだことがある人も多いのではないでしょうか。

心優しく、人間と仲良くなりたいと願っている赤鬼が主人公。人間は赤鬼の優しさを知らず、怖がって誰も友だちになろうとはしません。赤鬼の親友の青鬼は、赤鬼が優しい鬼だと人間にわからせるために、自ら悪役を買って出て人間達の前で芝居を打ちます。青鬼のおかげで人間達と仲良くなれた赤鬼でしたが、2人で芝居を演じた日以来青鬼が顔を見せないので、心配して青鬼の家を訪ねてみると、扉に青鬼から赤鬼に宛てて書いた手紙が貼ってありました。

友だちのために自分を犠牲にする青鬼の友情が描かれた童話です。僕は幼稚園の頃に先生に読んでもらってこの童話が大好きになり、卒園文集に青鬼の絵を描いた思い出があります。当時は青鬼の気持ちが本当に理解できていたのかどうかわかりませんが、子どもなりに感動しました。それ以来忘れていたのですが、短大時代に肺炎に罹って入院したときに、先輩がお見舞いに『ないた赤おに』の絵本を買って持ってきてくれたのです。久し振りに読んで感動し、それから宝物のように大切に持っています。

少し長いお話で、昔の言葉で書かれているため少し難しい部分もありますが、年長さんくらいになれば理解はできると思います。

画像は、お見舞いでいただいて今でも大切にしているいもとようこさんが絵を描いた本です。書店や図書館にはたくさんの種類のものがありますので、絵を見比べてお気に入りの1冊を見つけてください。内容は同じでも、画家が違うことで雰囲気が変わるのを読み比べて楽しむのもよいでしょう。

『ないた赤おに』(Yahoo!JAPANショッピング)

無償の愛を描いた名作絵本③ 『おおきな木』(シェル・シルヴァスタイン 作・絵)

おおきな木』は、アメリカの児童文学作家、シルヴァスタインさんが1864年に出版した代表作です。シルヴァスタインさんは、絵本作家以外に漫画家や音楽家としても活躍し、多彩な才能をもった人です。画像は僕の私物で、本田錦一郎さんによって翻訳され、1976年に出版されたものです。しかし、現在はこの絵本は絶版になっており、新たに村上春樹さんが翻訳して2010年に出版されたものが書店に置いてあります。

りんごの木が主人公。りんごの木と男の子は仲良しで毎日一緒に遊んでいましたが、男の子は成長とともに段々りんごの木の前に来なくなってしまうのです。しかし、男の子は数年(数十年)に一度、りんごの木の前に現れます。そのたびにりんごの木は男の子に、りんご、枝、幹と自分の全てを上げてしまうのです。切り株だけになってしまったりんごの木の元に、老人になった男の子が現れて…。

僕が高校生の頃の英語の教科書にこのお話の原文が掲載されていたのが、この物語との出会いです。いい話だなとは思ったものの絵本だとは知らず、短大の児童文学の授業で先生がこの絵本を持ってきたのが絵本だと知ったきっかけです。そのときに改めて絵本を読んで感動して大好きな絵本になり、保育士時代は年長児の担任をするたびに読み聞かせをしました。自分の全てを男の子にあげてしまうりんごの木の気持ちを、子ども達が理解するのは難しいでしょう。大人でも理解できないという人や、賛同できないと感じる人もいるのではないでしょうか。しかし、りんごの木が男に注ぐ愛情こそ“無償の愛”と呼べるものだと思います。“無償の愛”というものについて、大人も子どもも考えさせられる1冊です。

僕は本田さんが翻訳した絵本を持っていますが、村上さんが翻訳したものも読みました。同じ物語でも、訳した人によって表現や解釈が異なるのが新鮮な発見でした。本田さんが訳されたものは絶版になっていますが、図書館や古本屋などで見かけることがあれば、ぜひ読み比べていただきたいです。また、高校の教科書に載っていた原文は、それほど難しくないので原書を読んだり親子一緒に訳したりしているのもよいと思います。

『おおきな木』(Yahoo!JAPANショッピング)

まとめ

今回は、無償の愛を描いた絵本を3冊紹介しました。読み聞かせても、子どもはよくわからないかもしれません。説明しても、よく理解できない子が多いと思います。敢えて何も説明せず、繰り返し読むことで子どもは少しずつ理解していくでしょう。もちろん、親子で感想を話し合うのも素敵だと思います。

元保育士Webライター

元保育士で、現在はフリーランスとしてWebライターのほか、リトミックや親子遊びの指導など幅広く活動しています。保育士やリトミック指導のスキルや知識、父親としての子育て経験を基に、子育てや保育に関する情報を発信していきます。

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