アップルがiPhoneの広告制限をまもなく開始、違反アプリを「App Store」から削除
アップルはまもなく、スマートフォン「iPhone」やタブレット端末「iPad」などのOS(基本ソフト)でプライバシー保護を強化する。
ターゲティング広告を導入するアプリの運営会社に対し、個々のアプリごとに利用者の同意を求めるよう義務付ける。
アップル幹部「追跡されている事実を知らされるべき」
具体的には、ターゲティング広告の配信時に必要となる端末固有の広告用識別子「IDFA(Identifier for Advertisers)」をアプリが取得する際、ポップアップ画面を出して利用者に許可を求めなければならない。
この同意オプションはこれまで、設定画面で一括して行っていた。今後はアプリを初めて開く際、必ず可否を利用者に尋ねる必要があるという。
米CNBCやロイターなどの報道によると、「他のアプリやウェブサイトでの行動を追跡されているユーザーは、その事実を知らされるべきだ。ユーザーを追跡したいのなら、明確な許可を得るべきだ」とアップルのソフトウエアエンジニアリング担当上級バイスプレジデントのクレイグ・フェデリギ氏は説明している。
同氏は、規則違反のアプリはアプリストア「App Store」から削除する可能性があるとも述べたという。
個人情報保護の姿勢鮮明に
アップルはこの新たなルールを「iOS 14」と「iPadOS 14」の配信開始に合わせて2020年9月に実施する予定だった。だが、「開発者に変更に必要な時間を与える」とし、延期した。同社はこのときの声明で「アプリによる追跡の可否を利用者が選べるようにする」とし、プライバシー保護を強調していた。
アップルは、故スティーブ・ジョブズ氏がCEO(最高経営責任者)を務めていた時代から、開発者の収益確保を後押しする一環として、アプリ内広告を認めている。だが、近年は個人情報保護の姿勢を鮮明に打ち出し、製品やサービスの差異化を図っている。
ただ、今回のルールが導入されれば、大半の利用者は追跡を拒否すると予想される。これにともない、アプリ運営企業の広告収入が著しく減少するとの批判の声も出ていると、ロイターなどは伝えている。
フェイスブック「広告収入5割以上減少する恐れ」
アプリ運営企業は、ネット広告を手がける企業からターゲティング広告の配信を受けている。そうした広告配信企業の1社が米フェイスブックだ。
フェイスブックは「オーディエンスネットワーク」と呼ぶサービスで提携先のモバイルアプリに広告を配信している。同社が収集した利用者情報に基づき、業者はアプリの個々の利用者に最適化した広告配信を受けられる。このとき重要になるのが、対象となる利用者を絞り込むターゲティング機能だ。
20年8月、フェイスブックはアップルの新たな措置について「当社の広告配信は無力になり、提供する意味がなくなる可能性がある」「アプリ運営企業の広告収入は50%以上減少する」と批判していた。
一方で、アップルのフェデリギ氏は、「もし、侵略的な追跡をビジネスモデルとするのなら、その会社は透明性や消費者の選択を認めない企業になる」と述べ、批判をはねつけた。
iPhoneの世界利用シェアは25%程度にとどまるものの、米国などの先進国市場では高い比率を保っている。もし、App Storeから削除されれば、アプリは主要な市場を失うことになると指摘されている。
- (このコラムは「JBpress」2020年12月10日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)