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元鷹100勝エースが育てたプロ注目コンビがV大本命を撃破! 九州三菱・有吉148キロ

田尻耕太郎スポーツライター
左から、先発した有吉、山内コーチ、リリーフした谷川

2人のドラフト候補右腕

番狂わせだ。

9月8日、熊本の藤崎台球場で行われた社会人野球・日本選手権の九州最終予選で、九州三菱自動車が優勝候補筆頭のJR九州に4対1で勝利して、準決勝進出を決めた。

JR九州は、出場枠の少ない日本選手権で昨年まで8年連続出場を果たしていた。また、今夏の都市対抗にも7年連続で出場するなど、今大会の大本命チームだった。

金星の立役者はドラフト候補の右腕たちだった。

「若鷹の父」山内コーチが就任し投手力強化に成功

先発した有吉優樹が8回1失点。9回表に3点を勝ち越し、最後を締めくくった谷川昌希が3者連続三振の快投を見せた。

九州三菱自動車には昨年から、かつて南海ホークスや福岡ダイエーホークスで通算100勝を挙げた元エースの山内孝徳氏がコーチに就任。投手力の強化に努めてきた。(就任時の記事はコチラ

山内コーチの実績も確かだ。2年前には福岡ソフトバンクホークスの2軍を指導して、武田翔太や千賀滉大ら若鷹投手陣の底上げに成功。厳しい指導の中にもユーモアがあり、「若鷹の父(武田は「オヤジ」と呼ぶ)」として慕われてきた。

その山内コーチが就任し、特に頭角を現したのが有吉と谷川の2人だった。この日はネット裏に複数球団のスカウトが視察に訪れ、スピードガンをかまえたり、熱心にメモを取ったりする姿も見られた。九州を本拠地とするソフトバンクは5人体制でピッチングを見守っていた。

有吉「ラストチャンス」に心燃やす

有吉は千葉県出身。東金高校から東京情報大学を経て、九州三菱自動車に入社して4年目だ。プロ入りへの意欲は強いが年齢のこともあり、「ラストチャンス」と燃えている。山内コーチも「何とか夢を叶えさせたい」と力を入れて指導する1人だ。

この日の先発マウンド。内容は抜群だった。内角を果敢に攻めた。初回に1点リードを貰い強豪相手に何とか守り切りたい中で、試合中盤は何度も走者を背負った。そのたびに粘った。6回に同点を許したが、勝ち越しは許さない。最速148キロのストレートは100球を超えても威力は衰えず、強気に攻めた効果もありスライダーやカーブが相手を惑わせた。

山内コーチは絶賛だった。

山内コーチと出会って、変わったこと

「ずっと徹底してやらせたことが、しっかり出せた。インコースの出し入れもそうだし、辛抱強く投げた。『我慢して投げないと、周りの信頼は得られないぞ』といつも話をした。それがエースというもの」

有吉も笑顔で振り返った。

「調子自体はそんなに良くなかったと思う。だけど、今までやってきたことがしっかり出せました」

山内コーチと出会って、何が一番変わったのだろうか。

「バッターに対する攻め方ですね。フォームをいじられる様なことはありませんでした。プロを経験されている分、どんな攻めがバッターにとって嫌なのかを教えてもらったり、高めの使い方などもそれまで自分が知らないような方法を話してもらったりしました」

攝津の成功例が後押しか

26歳になる学年だ。

「プロに行きたい」

はっきりと口にした。

遅めのプロ入りでも成功した例はいくつもある。その代表格は攝津正(ソフトバンク)だ。同じ26歳で入団したが、中継ぎとして2年間活躍した後には先発でエース格となり、沢村賞をとるほどの投手となった。

山内コーチは言う。

「周りから言われて自分に足りないと思ったことは、頑固にやるタイプ。中途半端なことはしない。それで壊れたら(故障したら)意味がないが、彼は自己管理が本当にしっかりしているから大丈夫」

性格もプロ向きだ。

谷川は146キロ、3者連続K

また、谷川はこの日最速146キロの直球と切れ味鋭いスライダーを中心に、3つのアウトをすべて三振で奪いあっさりと試合を締めくくった。こちらはまだ24歳。「伸び盛りで伸びしろがたっぷりある」と山内コーチ。ドラフトでは上位で指名される可能性もあるという。

九州三菱自動車は日本選手権出場をかけて、9日の準決勝はホンダ熊本(藤崎台・12:30開始予定)と対戦する。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。「Number web」でのコラム連載のほかデイリースポーツ新聞社特約記者も務める。2024年、46歳でホークス取材歴23年に。 また、毎年1月には数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。

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