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小笠原で再び、記録的な雨不足

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
4月26日正午の雲の様子。東京は冷たい雨でも小笠原諸島は晴れ(ウェザーマップ)

 小笠原諸島・父島では昨年夏からの降水量が355.5ミリと過去最低となった。現在はダム貯水率の低下を防ぐため、海水淡水化装置をフル稼働させている。来月以降、梅雨前線の影響で雨が降りやすくなるとみられる。

降水量は過去最低

 気象庁は25日、「小笠原諸島の少雨に関する東京都気象情報」を発表しました。これで4回目です。

 この見出しに見覚えがあり、天気ノートを見返してみたら、前回は2016年5月から2017年4月まで深刻な雨不足になっていたことがわかりました。ノートには過去最悪とあります。

 いつから雨が降っていないのでしょう。今回は昨年(2018年)夏から雨の少ない状態が続いていて、父島では昨年8月から今年3月までの合計降水量が355.5ミリ、同期間の降水量としては1969年以降で最も少なくなっています。

父島の月降水量・平年比(2016年から今年3月まで、著者作成)
父島の月降水量・平年比(2016年から今年3月まで、著者作成)

なぜ、記録的な雨不足に?

 小笠原諸島・父島の年降水量は約1300ミリ、東京と比べて200ミリほど少ないです。雨が多くなる時期は一年に2度あり、4月から6月、そして9月から11月です。今回は台風シーズンが始まる8月以降、雨が極端に少なくなりました。調べてみると、そのころ、小笠原諸島周辺で雲の発生が少なかったことがわかります。

3か月平均外向き長波放射量平年偏差(西部太平洋域)2018年9月-11月、気象庁ホームページより。著者加工
3か月平均外向き長波放射量平年偏差(西部太平洋域)2018年9月-11月、気象庁ホームページより。著者加工

海水淡水化装置をフル稼働

 いつ、雨不足は解消するのでしょう?

 先ほどの少雨情報によると、この先1か月程度、まとまった雨は降らない見通しとあります。父島のダム貯水率は26日現在、45.4%です。小笠原村では海水淡水化装置を2台稼働させて、ダムの貯水率低下を防いでいます。村によると、6月以降も渇水が続いた場合、海水淡水化装置がさらに必要となり、経費の負担が増すとのこと。文面から切実な思いが伝わってきました。

突然の大雨で

 前回の渇水(2016年5月-2017年4月)は5月22日から23日にかけての低気圧や前線に伴う大雨で、一気に解消しました。

渇水を解消させた低気圧と前線(2017年5月23日午前3時の地上天気図)ウェザーマップ作画
渇水を解消させた低気圧と前線(2017年5月23日午前3時の地上天気図)ウェザーマップ作画

 来月になれば、梅雨前線が形成され、小笠原諸島周辺で雨雲が多く発生するようになるでしょう。6月は日本の南海上に梅雨前線が停滞しやすく、例年と比べくもりや雨の日が多くなる可能性があります。不自由な生活はもう少しの辛抱だと思います。

【参考資料】

気象庁:小笠原諸島の少雨に関する東京都気象情報 第4号、2019年4月25日

小笠原村役場:これまでの渇水対策と今後の対策について、2019年4月3日

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは128冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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