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井岡一翔「ドーピング疑惑」は米国でも大反響。井上尚弥のライバル王者との対決を望む声も

三浦勝夫ボクシング・ビート米国通信員
渦中の井岡一翔(写真:YUTAKA / アフロスポーツ)

ハローキティの国の大麻事情

 WBOスーパーフライ級チャンピオン井岡一翔(Ambition)のマリファナおよび禁止薬物使用疑惑は海を越えたアメリカでもボクシングファンの大きな関心事となっている。改めて井岡のビッグネームぶりと昨年大みそかの田中恒成(畑中)戦のインパクトの強さが浮き彫りになった印象だ。

 私が知る限り、米国メディアで最初に伝えたのは「バッドレフト・ドットコム」だと思う。日時は4月26日午後2時30分(東部時間)。パトリック・L・スタンバーグ記者が書いている。ニュースソースは共同通信だという。記事では井岡、日本ボクシング・コミッション(JBC)、警察、井岡の弁護士の言動に触れた後、次のように結んでいる。

「タトゥー問題の次はこれ。まだ井岡は最悪のケースに直面する可能性がある。日本は大麻の法律に関して極めて厳格な国として有名。所持していただけで数年、刑務所に送られる。彼は32歳で今後の活躍が大いに嘱望される。今回のようなケースでキャリアが断線するのは見るに忍びない」

 これに対して同サイトのメインライター、スコット・クリスト氏は「ハローキティやガールフレンドまくら(こういう物が米国のウォールマートなどで売られているとは知らなかった…)を産み出し、それらに寛容な日本はその反面で非常に保守的な土地でもある。パトリックが言うように彼らのボクシング・コミッションはルールを破った者に対してハードルが高い。一般的にマリファナ文化にはかなり厳しい目が向けられている」と発信している。

 ファンの間では「井岡は無実だ」と4階級制覇王者を擁護する発言も少なくない。その一方で日本の法規や慣習を批判している。また2018年に米国のとなりカナダで大麻が合法化されたが、日本国籍を持つ者が海外で使用したり所持したりしたケースはどうなるのか――と指摘する人もいる。ともかくドラッグの問題は寛容さに相違があっても、いずれの国でもトラブルの種をまくことは間違いないだろう。

薬物反応で処分を受けたカネロ・アルバレス(写真:@PowersImagery)
薬物反応で処分を受けたカネロ・アルバレス(写真:@PowersImagery)

米国再登場を期待

 続いて翌27日午前3時15分(東部時間)、同じくボクシング専門サイトのボクシングシーン・ドットコムが「カズト・イオカが薬物テストで陽性反応。JBCが捜査中」というタイトルで報道。ニュースソースは毎日新聞だという。編集者でもあるジェイク・ドノバン記者が執筆している。

 いきなり「イオカはローカルコミッション(JBC)の慈悲に再び救われた」とタトゥー問題に続くトラブルに言及。井岡の服部真尚弁護士のメディアとの対応を紹介。CBDオイルにも触れながら「イオカ・チームは今後、公的に問題と立ち向かうと予測する」と綴る。

 そして「前回(タトゥー問題)は真摯な態度で臨むコミッションから厳しい警告で済んだが、今回はわからない。次回の試合はアメリカに戻って行われる噂もある。2018年9月、マックウィリアムズ・アローヨを判定で下した実績が彼にはある」と米国リング出場に期待を寄せて結ぶ。

 これに対して”カンナビス(大麻)キッド”なる読者からこんな反応があった。「日本で大麻を服用すればビッグトラブルは免れない。どうか彼に厳しい処分が通達されないことを祈る。なぜなら彼は才能あふれる選手で、彼らは犯罪を犯したことで彼を国外へ追放したいと企てているように見えるから」

 “彼ら”とはコミッションとも受け取れるが、日本という国そのものを指しているのだろう。

3年前、マックウィリアムズ・アローヨを下した井岡(写真:HBO Boxing)
3年前、マックウィリアムズ・アローヨを下した井岡(写真:HBO Boxing)

 他方で「良識的な」意見が聞かれるのも事実である。「WADA(世界アンチドーピング協会)はレクリエーション・ドラッグ(医療目的やハードトレーニングに耐えるために使用する大麻成分を含んだ薬物)は許可しているが」と前置きして「マリファナは人間に対して抑制作用があり、興奮剤、幻覚剤として効力を発する。アスリート、格闘家を覚醒させエネルギーを強める働きがある。クレンブテロール(スーパーミドル級王者カネロ・アルバレスらが陽性反応を示し処分を受けた違反薬物)などより軽いけどパフォーマンスの高揚につながる」と警鐘を鳴らすファン(スクリーンネーム:ozzy616)もいる。

 いずれにしても井岡に対する処分を心配するファンが米国に多いことに気づく。そして彼の勇姿を直に見たいと希望する者が後を絶たない。果たして井岡は「禍を転じて福となす」と行くだろうか。

カシメロ戦を提案する向きも

 現段階で今回のトラブルがどう収束するか全く予断を許さないが、井岡が再び米国リングに活路を求めるならば、どのプロモーターと組むかがキャリア進行のカギとなるだろう。気の早いファンはやれ「エディ・ハーンのマッチルーム・ボクシングがいい」とか「タイソンvsジョーンズやユーチューバーの試合を開催したトリラーが最適だ」とツイートする。また「相手はジョンリール・カシメロ(WBOバンタム級王者)が相応しい」と井上尚弥(大橋=WBAスーパー・IBFバンタム級統一王者)のライバルとの対決を促す向きもある。確かに井岡とカシメロはファンをロックさせる(エキサイトさせる)資質を兼備した選手に感じられる。

 バッドレフト・ドットコムは27日午後11時(米国東部時間)付で朝日新聞(英語版)とサンケイスポーツ(執筆者が機械訳)の報道をもとに続報している。その時点でまだ新しい動きがないため、内容は既成事実だけにとどまっていが、それだけ関心が高い証拠だろう。薬物違反でWBCから出場停止処分を科されたカネロ・アルバレスが一時リング誌のパウンド・フォー・パウンド・ランキングから消えたことがある。同ランキングで10傑入りしている井岡のポジションも気にかかるところだ。

ボクシング・ビート米国通信員

岩手県奥州市出身。近所にアマチュアの名将、佐々木達彦氏が住んでいたためボクシングの魅力と凄さにハマる。上京後、学生時代から外国人の草サッカーチーム「スペインクラブ」でプレー。81年メキシコへ渡り現地レポートをボクシング・ビートの前身ワールドボクシングへ寄稿。90年代に入り拠点を米国カリフォルニアへ移し、フロイド・メイウェザー、ロイ・ジョーンズなどを取材。メジャーリーグもペドロ・マルティネス、アルバート・プホルスら主にラテン系選手をスポーツ紙向けにインタビュー。好物はカツ丼。愛読書は佐伯泰英氏の現代もの。

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