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NHKプラスを騙る偽メール横行!クリックしてみてわかったこと。親世代も危険!詐欺に気づくポイントは?

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
筆者のメールボックスに届いた、数多くのNHKプラスを騙る偽メール

夕方のNHKのニュース番組を見ていると「NHKプラスを騙った偽メールが届いているので、注意してください」との放送が流されました。

そういえば、このところ、よく見かけていた記憶があります。改めて、メールボックスを見てみると、かなりの数が届いていました。

タイトルは「NHKプラスアップグレードサービスお知らせ」となっており、内容は、ほぼ同じです。

「NHKがNHKプラスにアップグレードされました」とあり、アップグレードすると「パソコンやスマートフォン、タブレットで、総合テレビやEテレの番組を放送と同時に視聴できます。総合テレビやEテレの番組を放送後から1週間いつでも視聴できます」とあります。

さらに「契約しているすべてのゲストはNHKプラスにアップグレードする必要があります」と続き、URLが載っています。

昨日朝の8時頃にもこのメールが届いていましたので、注意喚起のために、その先がどうなっているのかを調べてみたいと思います。

丁寧な利用開始までの手順が出てくる

「以下のURLをクリックし、アップグレード操作を実行します」とありますので、その指示通り、URLをクリックしてみます。

すると、「NHK日本放送協会ID登録」のタイトルのページが出てきました。

筆者がアクセスした偽サイトのページ
筆者がアクセスした偽サイトのページ

利用開始までの手順が、図解でなされています。

「① メールアドレスを入力→(NHKからメールが届きます)→② ID・パスワードや受信契約の氏名・住所等を入力→③ ②で入力したID・パスワードでログインすると、すぐに見逃し番組をご覧いただけます」とあります。

随分と丁寧な説明です。

さて、本当のNHKプラスの登録画面での説明はどのようになっているのでしょうか。

見てみると「登録完了までの手順」のタイトルは違うものの後に続く、①~③の内容は同じものが載っています。偽サイトでは、正規のNHKサイトの画像を貼り付けているものと思われます。

手の込んだURL

それにしても、URLはなかなか手が込んでいます。

アドレスは、「https://www.nhk.plus」から始まり、それ以下も、「***weeklynews.com/index/index/login.***」となっていて、本当のNHKのサイトを思わせるような作りになっています。

「アクセスする時には、URLを見て気をつけるように」といわれますが、これだけ似せて作られていれば、騙されてしまう人もいることでしょう。

サイトの下には、「登録手続きへ」のボタンがありますので、押してみます。

すると「ご利用開始まであと少しです」と書かれた「ログイン情報等の入力」画面になりました。

筆者がアクセスした偽サイトの画面
筆者がアクセスした偽サイトの画面

ここでは「日本放送協会ID」「パスワード」を入力するように指示されていますが、騙されないためのポイントも存在しています。

利用開始時の説明にもあるように、正規のNHKのサイトでは、メールアドレスの入力をすると、NHKから登録手続き用のメールが届き、本文にあるURLをタップしてから、登録が開始されるようになっています。

ところが、偽サイトではメールを送る部分をすっとばして、すぐに、②の項目のサイトに移行するようになっています。

「ご利用開始まであと少しです」と偽サイトにありますが、これは「個人情報詐取されるまで、あともう少しです」の意味だと思い、すぐに画面を閉じるようにしてください。

正規サイトそっくりな詐欺サイト

ここでは、「ID」「パスワード」を入力するように促していますので、適当な数字を入れてみます。次には「秘密の質問」「秘密の質問の回答」を入れる欄が出てきます。秘密の質問をタップすると「子どものころ、なりたかった職業はなんですか?」など7項目から選べるようになっています。なかなか手が込んでいます。

この辺りも、正規のNHKのサイトの入力画面とそっくりですので、騙されないようにしてください。

筆者がアクセスした画面・筆者修正
筆者がアクセスした画面・筆者修正

それでは、一番目の質問を選んで「プロ野球選手」の回答をして、次の画面に行ってみます。

出てきたのが、NHKのマスコットキャラクターである「どーもくん」のロゴを使った「受信料の窓口」というページでした。

しかも、ここでは丁寧に、入力の手順が記載されています。

「①お客様情報の入力→②クレジットカード情報の入力→③お手続き完了」となっています。

筆者がアクセスした偽サイトの画面・筆者修正
筆者がアクセスした偽サイトの画面・筆者修正

さて、次の偽サイトの見抜き方です。

このページに限りませんが、一番下には、本当のNHKのサイトを模した形で「ご意見・お問い合わせ・プライバシーセンター・放送番組と著作権」などの項目が載っています。

筆者がアクセスした偽サイトの画面
筆者がアクセスした偽サイトの画面

ここにある「ご意見・お問い合わせ」など、すべての項目をクリックしましたが、別なサイトには飛ばず、すべて今、見ている「受信料の窓口」のページに戻るようになっています。これは、他のページでも同じです。

こうしたサイトも偽サイトだと思って下さい。

クレジットカード番号が消える!?

この時点で、クレジットカード情報の抜き取りが目的であることはここでわかりますが、あえて、住所や名前を入れて、この「受信料の窓口」にある「へ進む」のボタンを押してみます。

筆者がアクセスした偽サイトのページ
筆者がアクセスした偽サイトのページ

「へ」はいらない気もします。緻密な作りのサイトに見えて、雑な作りの部分も見られるのが、偽サイトの特徴です。

最終的にはクレジットカード情報を入力する画面に到達しました。

しかも、ここでは、VISA、Mastercard、JCBなど、ご利用可能なクレジットカードの種類が画像でてきます。それらを入力するように指示しています。

筆者がアクセスした画面・筆者修正
筆者がアクセスした画面・筆者修正

日本人のクレジットカード情報は闇サイトで他国よりも高値で売買されており、平均価格が世界で1位という報道もなされています。まさにそうしたカード情報の詐取が狙いと考えられます。

すべてを入力しましたので、「入力を完了する」のボタンを押します。

しかしなぜか、クレジットカード番号は消えてしまい、先に進みません。もう一度入力しますが、また消えます。3度目以降は、カード番号自体が入力できなくなりました。

おそらくこの時点で、カード情報は盗まれているものと思われます。

もし本当のカード番号を入力して、この状況になった方は「エラーでも起きたのだろうか」と考えると思います。そして、この画面を消してしまうかもしれません。それこそが狙いであると考えられます。

おかしいなと思わせて、先に進むのを諦めさせて、画面を閉じさせる。

この状況に覚えのある方は、すぐにクレジット会社とNHKに連絡をするようにして下さい。すばやい対応が必要です。

もう一度、検証しようと、2~3時間後に、この詐欺サイトにアクセスしようとしましたが、もうすでにサイトは消されていました。

おそらく当日のニュースで通報などが数多く寄せられて、セキュリティ対策が機敏になされたためだと思われます。注意喚起が、いかに大事かが分かります。

しかしこのメール自体は朝の8時頃届いていますので、12時間は生きていたことになりますので、その間にクレジットカードや個人情報を入力した方がいる恐れがあります。

ここ一週間でかなりの数が届けられているということは、騙されている人がかなりいるからこそ、詐欺グループも好機とばかり、送ってきていることが考えられます。

NHKは中高年の方が見る機会も多く、その上、スマホを持つ方々も増えてきています。このNHKプラスを騙る詐欺サイトは、親切でわかりやすく入力させる仕組みになっていますので、その丁寧さから正規のサイトと勘違いする方もいると思います。自分自身が気をつけるだけでなく、ぜひとも、親御さんたちにも注意喚起をお願いできればと思います。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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