Yahoo!ニュース

どうして「おねいさん」じゃなく「おねえさん」?日本語教師が解説!ひらがなの伸ばす音(長音)ルール

高橋亜理香日本語教師/日本語・日本酒ライター

お読みくださってありがとうございます!日本語教師の高橋亜理香です。

「お父さん→おとうさん」「お兄さん→おにいさん」…多分日本人なら迷わずサッと書けると思います。
でも「氷→こおり?こうり?」「扇→おおぎ?おうぎ?」…一瞬迷ってしまうことありませんか?「お姉さん→おねえさん」なのに、どうして「映画→ええが」じゃなくて「えいが」なの?と不思議に思うこともありませんか?日本語の伸ばす音「長音」には、実はルールがあるのです!
今回は、迷ったらこれを見れば解決!ひらがなの伸ばす音「長音」ルールを紹介!大人だけでなく、小中学生のお子さまを持つお父さんお母さんも、これで子どもに説明できますよ!

日本語の「かな」にはルールが存在する

過去の記事でもお話ししましたが、日本語の「かな」の書き方には「現代仮名遣い」というルールがあります。厳格な規範的要素のものではないので、特殊な専門分野や芸術活動などではその業界の慣例に倣う場合もありますが、一般的な文章の場合は「現代仮名遣い」のルールに沿えば正しい表現で書けるという目安です。

「え」「お」は注意!伸ばす音「長音」のルールあれこれ

日本語では、外来語(カタカナ)の場合伸ばす音はまとめて長音記号「ー」で表されます。例えば「カレンダー」「コーヒー」のような表記です。ですが、ひらがなの場合は長音記号を使いません。そのため、その音声に応じてひらがなを使い分ける必要がありますが、「現代仮名遣い」にはこのルールも示されています。では、そのルールを見てみましょう!

1.「おかあさん」→ア列のかなに「あ」を添える

まずはア列(あ・か・さ・た・な…)のかなを伸ばす場合は、そこに「あ」を添えるというルールです。「おかあさん→か+あ」「おばあさん→ば+あ」「ああいう→あ+あ」のような要領です。

2.「おにいさん」→イ列のかなに「い」を添える

イ列(い・き・し・ち・に…)のかなを伸ばす場合には「い」を添えるというルールです。例としては「おにいさん→に+い」「おじいさん→じ+い」「ちいさい→ち+い」などですね。ア列やイ列は比較的単純なルールですね。

3.「くうき」→ウ列のかなに「う」を添える

ウ列(う・く・す・つ・ぬ…)のかなを伸ばすときは、「う」を添えます。例としては「くうき→く+う」「ふうふ→ふ+う」「ちゅうもん→ゆ+う」などです。また「ウ音便」にもこれが適用されます。ウ音便というのは、語中や語尾の「く・ぐ・ひ・び・み」などの音が発音上「う」に変わる現象で、「うれしく+存じます→うれしゅう存じます」「お寒く+ございます→おさむう(お寒う)ございます」など形容詞の連用形(~く)に「ございます」「ぞんじます」などが続いたときに、多く起きます。

4.「おねえさん」→エ列のかなに「え」を添える

エ列(え・け・せ・て・ね…)のかなを伸ばすときに「え」を添えます。例としては「おねえさん→ね+え」「ええ、そうです→え+え」などです。

ここで「あれ?ちょっと待って、じゃあどうして『映画』は『ええが』にならないの?」と思う人がいるのでは?そうなんです!このルールには、実は例外が付記されているのです。次を見てください!

5.【特別!】「えいが」→エ列のかなに「い」を添える場合

「現代仮名遣い」では付記として、次のような場合はエ列であっても「い」を添えることとされています。例として「えいが(映画)→え+い」「とけい(時計)→け+い」「ていねい(丁寧)→て+い、ね+い」「れい(例)→れ+い」「かせいで(稼いで)→せ+い」「まねいて(招いて)→ね+い」「春めいて→め+い」などが挙げられています。

これだけではその法則がわかりにくいかもしれませんが、実はこれらの語は基本的に「漢語」か「イ音便」です。漢語というのは和語に対して漢字の言葉で、例の中では「映画」「時計」「丁寧」「例」がこれにあたります。またイ音便は五段活用動詞の連用形に「~て、~た」が続くときに活用語尾が変わるものです。例の中から説明すると「×かせぎて→かせいで」「×まねきて→まねいて」「×春めきて→春めいて」という現象。

この2種類の語の場合は、エ列でも長音を「い」にすると覚えると便利です!

6.「おとうさん」→オ列のかなに「う」を添える

オ列(お・こ・そ・と・の…)は少し注意。オ列のかなを伸ばす場合は基本的に「う」を添えます。例としては「おとうさん→と+う」「おうぎ(扇)→お+う」「おはよう→よ+う」「とうきょう(東京)→と+う、よ+う」などです。

ん?ですがこれも「え?じゃあ『氷』はどうして『こおり』?ルールに沿ったら『こうり』じゃん!」と思いませんか?そう、これも「付記」例外があるんです!

7.【特別!】「こおり」→オ列のかなに「お」を添える場合

現代仮名遣いで次のような語はオ列に「お」を添える、とする付記があります。例としては「おおかみ→お+お」「おおやけ(公)→お+お」「とおる(通る)→と+お」「ほのお(炎)→の+お」「とどこおる(滞る)→こ+お」「おおう(覆う)→お+お」などです。これらの共通点は、歴史的仮名遣いという昔の仮名遣いで「ほ」または「を」と表記されていたもの、という点です。例えば「氷」は昔「こほり」と表記されていました。この歴史的仮名遣いのルールにはまっていたものを特例として「お」を添えています。

ルールを覚えれば生活にもテストにも活かせる!

今回は、伸ばす音(長音)の書き方ルールの解説でした。大人が入力に迷うとき、子どもの国語テスト対策に、役に立つ場面がたくさんあると思いますので、ぜひ覚えてみてください!

日本語教師/日本語・日本酒ライター

都内日本語学校の専任講師を経て、現在はフリーランスの日本語教師として留学生の日本語・進学指導やオンラインレッスンをしています。外国人の日本語学習を通して日本人の気づかない日本語を探究中。兼業で日本酒ライター・テイスターとして、父の故郷の秋田県をはじめとした日本酒の良さを伝えるお仕事もしています。保有資格:日本語教育能力検定試験、J.S.A.SAKE DIPLOMA、SSI日本酒学講師、SSI利酒師

高橋亜理香の最近の記事