糖尿病のこわ〜い合併症、糖尿病腎症って?【いまさら聞けない糖尿病について、理学療法士が解説します】
前回の記事で、糖尿病の三大合併症のひとつである、糖尿病網膜症について紹介しました。
本記事では高血糖状態のままほったらかしにしてしまうことで起こる合併症のなかでも、糖尿病腎症について解説していきます。
腎臓とは
腎臓は、ソラマメのような形をしている臓器です。
腰の上のあたりにあり、左右に1つずつあります。
腎臓には
- からだの水分量を調節
- 老廃物を排泄
- 電解質(ミネラル)のバランスを保つ
- 血液を弱アルカリ性に保つ
- 血圧を調整する
- 血液を産生するためのホルモン(エリスロポエチン)を分泌する
- 骨を作るビタミンDを活性化する
といった役割があります。
一般的によく耳にする役割としては、
- 血液をろ過する
- ろ過した血液を尿として身体の外に排出する
といったところでしょうか。
大切な役割がたくさんあるため、腎臓の機能が低下してしまうと身体に大きく影響してしまいます。
血糖値が高い状態が続くことで腎臓にも悪影響を及ぼすことがあります。
糖尿病腎症について
血糖値が高い状態が長く続くと、全身の血管で動脈硬化が進みます。
毛細血管のかたまりである腎臓の糸球体という場所では、動脈硬化によりもろくなってしまった細かな血管が壊れてしまうことで、網の目が破れたり詰まったりして老廃物をろ過することができなくなってしまいます。
糸球体が高血糖によってダメージを受け、腎臓が徐々に機能しなくなってしまうのが糖尿病腎症です。
糖尿病腎症になったら
糖尿病腎症になると、老廃物などが体内に溜まったり、必要なたんぱくが尿に漏れたりします。
進行すると人工的に血液をろ過する透析療法が必要になる場合もあるのです。
糖尿病腎症の症状
糖尿病腎症は、最初のころは自覚症状がなありません。
かなり進行してくると、
- だるさ
- むくみ
- 吐き気
- 食欲不振
などの症状が出てきます。
これらの症状は、身体の中の余分な水分や老廃物を尿として排泄する機能が弱まることで、引き起こされるものがほとんどです。
末期になると、腎臓が行っていた役割を治療で代行してもらう必要が出てきます。これが人工透析です。
人工透析が必要となる疾患は糖尿病腎症だけではありませんが、糖尿病腎症が原因で透析をしている患者さんの割合はかなり多い状況です。
診断と治療
尿中アルブミン検査
たんぱく質のひとつであるアルブミンは、腎症のごく早期から尿に漏れ出てくると言われています。そのため、糖尿病腎症の早期発見は、尿中アルブミン検査が有効です。
一般的な健康診断で行われる尿検査や血液検査では、腎症の進行が初期段階の場合は発見できないこともあります。
治療
血糖値のコントロールはもちろん大切ですが、血圧の管理も欠かせません。
血圧の目標値は130/80mmHg未満とされています。
通常、高血圧と診断される数値は、
- 家庭血圧で 135/85mmHg 以上
- 診察室血圧では 140/90mmHg 以上
と定義されており、腎症の場合のコントロール目標値は一般的な高血圧治療より厳しい値となっています。
食事面では減塩食や、たんぱく質・カリウムを制限した食事を摂ることもあります。
まとめ
本記事では糖尿病腎症について解説してきました。
腎症が進行すると人工透析が必要になってしまう可能性があるという衝撃的な結末を知り、糖尿病への関心が一層高まったのではないでしょうか。
生活習慣を見直すだけでも予防できる病気のひとつなので、日頃から食事に気を遣い、運動習慣も身につけていただけたら嬉しいです。