世界潮流に逆行し、世界で唯一、一貫して「ロシア支持」表明している北朝鮮はいつ軍事支援に踏み切る!?
国連総会で140数か国に及ぶ圧倒的多数の加盟国がロシアのウクライナ侵攻を非難する声明に賛同し、また、中国やインド、キューバ、イラン、ベトナムなどロシアと友好関係にある国々が相次いで棄権に回ったが、北朝鮮はロシア、ベラルーシ、シリア、エリトリアの4か国と共に反対に回ったことは周知の事実である。アジア(48か国)で反対票を投じたのは唯一、北朝鮮だけだった。
反対票を投じる前に国連総会で演説した北朝鮮の金星(キム・ソン)国連大使は「ウクライナ危機の根本的な原因は全的に法的な安全保障を提供してもらいたいとのロシアの合理的で正当な要求を米国と西側が無視し、露骨にNATO(北大西洋条約機構)の東進を追求し、攻撃武器体系を配置したことにある」と反対の理由を説明していた。
北朝鮮はウクライナの情勢では国際社会に向けて外務省のホームページを通じて自己主張を展開している。
ロシアがウクライナ侵攻に踏み切る前の2月13日には米国がNATOを拡大してロシアへの軍事的威嚇を強めているとして、ロシアに肩を持つ記事をウェブサイトに掲載し、侵攻が始まった翌日の2月26日にはロシアの侵攻について「ウクライナ政府によって虐げられてきた人々を保護するためだ」と擁護し、2日後の28日には「他国に対する強権と専横に明け暮れている米国と西側の覇権主義政策に根源がある」と欧米批判を展開していた。
今月の11日には李善権(リ・ソングォン)外相自らが登場し、国連人権理事会でロシアの資格が停止されたことについて「米国が国家間の対決と不信を助長している。国連は米国が気に入らない国々にむやみに政治圧力を加えて威嚇する手段に二度と盗用されてはならない」と、対米批判を展開し、ロシアを全面的にバックアップしていた。
さらに、北朝鮮外務省は数日前(26日付)のホームページに「ウクライナ事態は米国の代理戦・・・NATO、アジア太平洋支配野望」との見出しの記事を載せて、再び米国及びNATO批判を展開していた。
米国とNATO諸国がウクライナへの軍事支援を決定したことについて「米国は同盟国と野合し、ウクライナに莫大な軍事装備を提供している下心はこれら国々をロシアとの戦いに追いやり、ロシアを絶え間なく消耗、弱体化させることにある」と批判したうえで「ウクライナ全領土において米国とNATOの武器輸送手段が合法的な軍事目標となる」とのロシアの見解を紹介していた。
さらに、NATOについては「NATOは共産主義の脅威に対処するとの口実の下で欧州諸国を軍事、政治的に従属させ、自らの世界制覇戦略実現のため米国が操作した侵略的軍事機構である」と断じ、ユーゴ、イラク、アフガン、リビア、ウクライナなどの例を挙げ「冷戦の産物であるNATOが存在する限り、世界に平穏の日は訪れない」と、NATOへの敵意を露わにしていた。
北朝鮮の外務省も、メディアも国民にはウクライナ情勢を一切知らせていないが、ロシアとの関係の重要性については触れている。例えば、政府機関紙「民主朝鮮」は3月17日付に「今日、帝国主義者らの強権と専横を押しつぶして、国の自主権を守る道で両国人民は共同歩調を取り、支持と連帯を強化しており、親善の紐帯を一層強化している」との記事を載せ、また、党機関紙の「労働新聞」も今月25日付に金正恩(キム・ジョンウン)総書記訪露3周年に合わせ、「新たな全盛期を迎えている伝統的朝露関係」と題した論評を載せていた。
論評は「国際舞台での互恵支持と声援はいつにもまして強化されている」と両国の蜜月ぶりを強調し、「自主権と安全を守護し、民族的利益を守るためのロシア人民の正当な闘争に我々は全的な支持と連帯を送っている」と、ロシア支持を改めて強調していた。
論評は最後に「我々の友であり、隣人であるロシアとの善隣協調関係を露朝首脳会談での合意に従い、全面的に強化発展させることが我が共和国政府の終始一貫した立場である」と強調し「親しいロシア人民がプーチン大統領の正しい領導の下、直面するすべての挑戦と難関に打ち勝ち、協力で発展したロシアを建設する事業で成果を得ることを期待している」と締めくくっていた。この労働新聞の論評は国営通信の「朝鮮中央通信」も流していた。
北朝鮮との軍事的緊張が高まった2016年、ジョゼフ・ダンフォード米統合参謀本部議長(当時)は米上院軍事委員会が開催した聴聞会(3月17日)での証言で北朝鮮の在来式軍事力を「世界第4位規模」と評価していた。
(参考資料:金正恩政権11回目の軍事パレードの7つの「注目点」)
世界第4位の軍事力を統率する朴正天(パク・ジョンチョン)軍需担当書記(党軍事委員会副委員長=元帥)はロシアのウクライナ侵攻前から姿を消していたが、今月25日に行われた朝鮮人民革命軍創建90周年軍事パレードに約83日ぶりに姿を現していた。
(参考資料:北朝鮮軍No.1は依然「動静不明」! 病気か、失脚か、それとも?)
ロシアへの軍事支援の鍵を握る朴書記の長期不在は病気や失脚が原因ではなかった。一体、この間、何をしていたのか、気になって仕方ない。