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ウクライナは韓国に、ロシアは北朝鮮に軍事支援を要請!?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
NATO代表団が韓国の鄭義溶外相にウクライナへの軍事支援を要請(韓国外交部提供)

 先週はロシアのショイグ国防相が3月中旬に北朝鮮を訪問し、「消耗した弾薬やミサイルなどの支援を要請し、北朝鮮がこれに応えた」とのウクライナ発の未確認情報が駆け巡ったが、折しもウクライナは韓国に対してロシアに対抗するための兵器支援を要請していた。

 西側の一員としてウクライナ支持を表明している韓国政府はこれまでに防弾ヘルメット、テント、毛布や衣料品など援助物資を民間機やチャーター便でウクライナに送っているが、韓国がウクライナに表明した総額4000万ドル規模の支援はどれもこれも非殺傷用軍需物資あるいは人道支援に限られている。

 しかし、ウクライナ及び米欧が韓国に求めているのは人道支援よりも軍事支援のようである。そのことはゼレンスキー大統領がオンラインによる韓国国会演説(4月11日)で「ロシアの艦船、ロシアのミサイルを防ぐ様々な軍事装備が韓国にはある。ロシアに立ち向かえるよう韓国が我々を助けてもらえればありがたい」と直訴していたことからも明らかだ。

 ゼレンスキー大統領の演説の前に露払いとしてレズニコフ国防相が徐旭(ソ・ウク)国防長官に電話(4月8日)をして対空武器体系の支援を要請していた。また、NATOからはロプ・バウアー軍事委員長(オランダの海軍大将)が訪韓(4月11日)し、徐国防長官と元仁哲(ウォン・インチョル)合同参謀本部議長に会い、直々に武器支援を要請していた。NATOの軍事委員長の訪韓は2016年5月以来6年ぶりのことである。

 ウクライナ及びNATOは小銃から対戦車ミサイルなど殺傷兵器100~150品目にわたる支援を要請したようだが、中でも韓国の携帯用対空誘導兵器「新弓(シングン)」に関心を示してしているようだ。

 「新弓」は射程距離が5kmで、低高度で浸透する敵の航空機を迎撃する際に使われる。全長1.6m、重量15kgと小さく軽いため2人1組で利用することができる。また、韓国が独自開発し、アラブ首長国連邦(UAE)に輸出した地対空迎撃ミサイル「天弓(チョングン)」も支援品目にリストされているとの情報もあるが、「天弓」は「新弓」よりもサイズが大きく運搬上問題がある。

 韓国にはこの他に短距離地対空ミサイル「天馬(チョンマ)」などもあるが、韓国にT―80U戦車を含め旧ソ連製兵器が相当数あることはあまり知られていない。

 韓国は国交正常化への見返りとして旧ソ連時代の1991年に30億ドル(現金10億、銀行借款10億、消費財15億、輸出資金5億ドル)の経済支援を行ったが、ソ連崩壊後に債務を引き継いだロシアは債務の一部を武器で返済していた。実際に1993年当時ロシアのアレクサンドル・ショービン副総理(対外経済担当)は大田で開催されたEXPO視察のため訪韓した際、対空ミサイルシステムやジェット戦闘機など防御用兵器を売り込み、韓国は3年後にT―80U戦車を30台ロシアから輸入している。

 韓国はロシアを敵に回したくないため、また北朝鮮の脅威が高まる中、安全保障上支障があるとして軍事支援を躊躇っているが、ウクライナとNATOの支援要請の背後に米国の影がちらついていることから神経を尖らせている。

 議員時代に国防委員会に所属していた進歩野党「正義党」の金鍾大(キム・ジョンテ)前議員が9日の自身のフェイスブックで明らかにしたところによると、米国はウクライナが正式に要請する前に駐韓米大使館を通じて文在寅政権に対して再三、ウクライナへの対空兵器システムの支援を働きかけていたとのことだ。

 韓国はこれまで同盟国・米国の要請にはことごとく応じてきた。ベトナム戦争では陸海空の正規軍を派遣し、湾岸戦争でも軍隊を派遣した。米同時多発テロ事件(2001年)では海・空軍輸送支援団と陸軍医療支援団を派遣し、米国主導の対イラク軍事行動(2003年3月)でも軍隊を派遣した。韓国はまた、国連の要請でPKOにも派兵し、またアフガニスタン、イラク、ソマリアで多国籍軍の一員として平和活動も行っている。

 バイデン大統領は来月24日にクアッド(日米豪印)首脳会合出席のために日本を訪問するが、その前に「先に韓国を訪問することになった」と韓国では報道されている。尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領との米韓首脳会談は来月21日前後に開かれる方向で、韓国はバイデン大統領が日本よりも先に訪韓することに大喜びだ。

 尹次期大統領はバイデン大統領との首脳会談では文在寅(ムン・ジェイン)大統領とは異なり、北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対抗する手段として米国に対してステルス戦闘機「F―22」や戦略爆撃機「B-1B」、ステルス戦略爆撃機「B-2」、核戦略爆撃機「B52」などの戦略資産の韓国配備を要請すると伝えられているが、米国から見返りとして韓国のウクライナへの軍事支援を持ち出される可能性がある。バイデン大統領が訪韓を訪日よりも優先させたことへの配慮もあって尹政権は苦慮するであろう。

 なお、ロプ・バウアーNATO軍事委員長は北朝鮮のロシアへの武器支援の可能性については「想像はできるが、まだ関連証拠は把握できていない」と語っていたが、仮に南北が米露の要請を受け、それぞれ軍事支援をすれば、ウクライナは南北の代理戦場と化すことになりかねない。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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