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金正恩政権11回目の軍事パレードの7つの「注目点」

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
パレードのフィナーレに登場したICBM「火星17型」(朝鮮中央テレビから)

 朝鮮人民革命軍創建90周年を記念して25日に行われた金正恩政権下の11回目の軍事パレードは見どころ満載だった。北朝鮮が2時間20分にわたって録画中継したパレードの映像をチェックすると、幾つか注目すべき点があった。

その1.動静不明の軍トップの朴正天政治局常務委員が出てきた

 朝鮮労働党最高幹部の一人で、軍事部門を統括している朴正天(パク・ジョンチョン)書記(党軍事委員会副委員長=次帥)がついに姿を現した。朴書記は2月1日の旧正月慶祝公演鑑賞を最後に動静不明だった。そのため病気説や失脚説が取り沙汰されていた。軍事パレードで健在が確認されたが、長期不在の理由は不明のままである。

軍服姿の金正恩総書記を挟み朴正天党書記(左)と李炳哲党書記(右)(労働新聞から)
軍服姿の金正恩総書記を挟み朴正天党書記(左)と李炳哲党書記(右)(労働新聞から)

その2.更迭された李炳哲政治局常務委員が復権していた

 軍No.1の軍事担当書記で、序列No.3の座にあった李炳哲(リ・ビョンチョル)元帥は昨年6月に開催された党政治局拡大会議で「党の決定と国家的な最重大課題の遂行を怠った」として問責されていた。それ以降、党政治局会議や記念行事に姿を現さず、昨年9月の建国73周年記念軍事パレードにも現れなかったことから失脚したものとみられていたが、約10か月ぶりに復活を果たした。

その3.元序列No.3の黄炳誓元政治局常務委員は処刑されてなかった

 失脚し、韓国では処刑説まで流れていた黄炳誓(ファン・ビョンソ)元国務委員会副委員長がひな壇にいたことが確認された。録画放送の開始から48分8秒、カメラが切り替わると、軍服姿の黄氏が映し出されていた。黄氏は労働党組織指導部第一副部長から軍トップの総政治局長(2014年)、国防委員会No.2の副委員長に抜擢され、2016年には党最高幹部の政治局常務委員にまで上り詰めた金正恩体制下で最も出世した一人だった。

その4.金総書記の「第3の付き人」が今度は「肖像画バッジ」を着けて現れた

 今年2月26日に開催された党初級書記大会に初めて登場し、注目されていた「第3の付き人」は4月15日の金日成(キム・イルソン)主席生誕110周年式典で全国民に義務付けられている「金日成・金正日肖像画バッジ」を胸に着けていなかったことから金正日(キム・ジョンイル)前総書記の長女で、正恩氏にとっては異母姉にあたる金雪松(キム・ソルソン)氏ではないかと推測されていた。なお、金総書記の実妹の金与正(キム・ヨジョン)副部長は軍事パレードの時もパレード後に開かれた宴会会場でもその姿があった。

花束を手にする謎の「第3の付き人」(朝鮮中央テレビから)
花束を手にする謎の「第3の付き人」(朝鮮中央テレビから)

 その5.金総書記が軍事パレードで初めて軍服を着ていた

 金正恩政権になって軍事パレードは今回で11回目だが、金総書記が軍服(元帥服)を着て現れたのは今回が初めて。人民軍(正規軍)創建70周年(2018年2月)の時は寒さのせいか、オーバーを着ていた。なお、肩に付けた階級章から「大元帥」になった可能性が指摘されている。ちなみに祖父の金主席は亡くなる2年前の1992年に80歳になった時、また父の金正日前総書記は亡くなった翌年の2012年(70歳)に「大元帥」が授与されていたが、金総書記はまだ38歳である。

 その6.金総書記の演説で一度も「金日成」の名前が出てこなかった

 朝鮮人民革命軍は1932年4月25日に金日成主席によって創建されている。その10日前は創建者の金主席生誕110周年(4月15日)である。当然、祖父の業績について触れられてしかるべきだが、演説では一言も言及されなかった。ちなみに、2018年の人民軍創建70周年の軍事パレードでの演説では「偉大な首領である金日成同志は」と何度もその業績を称賛し、最大の敬意を表していた。

 その7.金総書記は演説で2度語気を強めていた

 金総書記は17分にわたって演説を行った。一昨年10月の労働党創建75周年の時の25分に比べると、8分短いが、2018年2月の人民軍創建70周年の演説と同じ長さだ。語気を強めたのは以下の2か所である。

 「特に国力の象徴である我々の軍事力の基本を成す核武力を質量的に強化し、任意の戦争状況にそれぞれ異なる作戦目標と任務に従い、それぞれの異なる手段で核戦闘能力を発揮するようにしなければならない」

 「今、我が武力はいかなる戦いにも自信満々準備できている。いかなる勢力も朝鮮民主主義人民共和国との軍事的対決を企てるならば、彼らは消滅することになるであろう」

 この時は会場から盛大に拍手が沸き起こった。

 なお、最後に「偉大な我が朝鮮民主主義人民共和国万歳!」の言葉で締めくくった時は感極まった表情をしていた。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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