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トルコで若者がシリア人を襲撃:「難民」、「傭兵」という意図的、ないしは無意識的なレッテル貼りの弊害

青山弘之東京外国語大学 教授
(写真:ロイター/アフロ)

トルコの首都アンカラのアルティンダー地区などで8月12日、トルコ人の若者ら数百人がシリア人の商店や車などを襲撃し、子供を含む多数が負傷した。

襲撃はシリア人がトルコ人を刺殺したことへの報復で、ツイッターなどのSNS上では、襲撃現場を撮影したビデオや画像が多数アップされた。

事件発生を受けて、トルコの警察・治安部隊が現場に派遣され、暴徒を強制排除した。『ヒュッリイイェト』などによると、拘束されたのは76人、うち36人は、窃盗、麻薬所持、密輸などの前科があるという。

トルコ人の若者らによる襲撃を受けたのは、シリア内戦での戦火や生活苦などを逃れて、トルコに移動してきた人々。2014年10月に閣議決定された一時保護規則(Geçici Koruma Yönetmeliği)の適用対象となっている「客人」(misafir)や、正規の法的手続きを経てトルコへの在住を認められている在留資格者らである。

事件に関して、西側諸国、トルコのメディア、そしてシリアの反体制系サイトは、「シリア難民が襲撃を受けた」、「シリア難民がトルコ人を刺殺したことへの報復」などと伝えた(一部は「移民・難民」と形容した)。

一方、シリア政府寄りとされるイフバーリーヤ・チャンネルは、次のように伝えた。

トルコ人青年数百人が、シリア国籍を持つエルドアンの傭兵の家族らを襲撃し、彼らの商店や住居、車を焼き討ちにした。傭兵1人の手によってトルコ人青年が殺害されたことへの報復である。

https://www.facebook.com/Alikhbaria.Sy/posts/4443163092373342

Facebook(イフバーリーヤ・チャンネル)
Facebook(イフバーリーヤ・チャンネル)

「難民」、「傭兵」――事件は、シリア人に対する意図的、あるいは無意識的なレッテル貼りが、政治的なポジションを如実に反映していることを再認識させる。こうしたレッテルがもたらすネガティブなイメージが、シリアの人々を「普通の人間」として見ることを時に妨げ、シリアをめぐるさまざまな問題の解決への道をより困難なものに感じさせている。

東京外国語大学 教授

1968年東京生まれ。東京外国語大学教授。東京外国語大学卒。一橋大学大学院にて博士号取得。シリアの友ネットワーク@Japan(シリとも、旧サダーカ・イニシアチブ https://sites.google.com/view/sadaqainitiative70)代表。シリアのダマスカス・フランス・アラブ研究所共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員を経て現職。専門は現代東アラブ地域の政治、思想、歴史。著書に『混迷するシリア』、『シリア情勢』、『膠着するシリア』、『ロシアとシリア』など。ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」(http://syriaarabspring.info/)を運営。

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