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トルコ軍とシリア・ロシア軍による小競り合いが続くなか、シリア軍はアレッポ市西で支配地域を拡大

青山弘之東京外国語大学 教授
(写真:ロイター/アフロ)

シリア軍がアレッポ市西で支配地域を拡大

アレッポ県では、国営のシリア・アラブ通信や英国に拠点を置く反体制系NGOのシリア人権監視団によると、シリア軍が13日、シリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構などからなる反体制武装集団との戦闘の末、カフルジューム村、アレッポ市西部郊外のムハンディスィーン第1および第2地区、ザフラト・マダーイン地区、CHEMCO地区を制圧した。

シリア軍は12日にも、M5高速道路の西側に位置するシャイフ・アリー村、アッラーダ村、アルナーズ村を制圧し、支配地域を着実に拡大している。

2月12日の勢力図(Step News Agency、2020年2月12日)
2月12日の勢力図(Step News Agency、2020年2月12日)
2月13日の勢力図(Step News Agency、2020年2月13日)
2月13日の勢力図(Step News Agency、2020年2月13日)

ロシア・シリア軍の攻撃はトルコ軍の監視所、拠点にも及ぶ

一方、ロシア軍戦闘機は、トルコ軍の拠点が新たに設置されたアレッポ市西の第46中隊基地一帯、トルコ軍監視所が設置されているシャイフ・アキール山に近いカブターン・ジャバル村、カフルナーハー村、イッビーン村を爆撃した。

カブターン・ジャバル村では住民が負傷した。

シリア軍も第46中隊基地一帯に進軍し、同地を砲撃したほか、アウラム・クブラー町、アウラム・スグラー村一帯で反体制武装集団と戦闘を続けた。

トルコ軍はシリア軍拠点を砲撃、シャーム解放機構を支援

ロシア・シリア軍の攻勢に対して、第46中隊基地に展開するトルコ軍は、シリア軍によって制圧されたカフル・ハラブ村、ミズナーズ村、シャイフ・アリー村にあるシリア軍拠点を砲撃した。

トルコ軍はまた、ジーナ村に新たな拠点を設置した。

シャーム解放機構などからなる反体制武装集団も、トルコ軍の砲撃支援を受けて、シリア軍に反撃、ムハンディスィーン第2地区とアウラム・スグラー村の複数カ所を奪還した。

トルコ軍はイドリブ県でも新たな拠点を設置

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、サラーキブ市一帯に展開するトルコ軍が同地のシリア軍拠点を砲撃した。

また、トルコ軍がマアッラトミスリーン市東部に新たな拠点を設置した。

シリア北東部ではクルド民族主義勢力がトルコの支援を受ける反体制派に打撃を与える

ラッカ県では、クルド民族主義組織の民主統一党(PYD)に近いANHAやシリア人権監視団によると、人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍の指揮下で活動するシリア正教軍事評議会が、タッル・アブヤド市近郊のアフマディーヤ村、アフダクー村一帯、シャルカラーク村の穀物サイロ一帯で、トルコ軍およびその支援を受ける国民軍と交戦、国民軍戦闘員7人を殺害、2人を捕捉した。

なお同地では、前日夜にも戦闘が発生、国民軍戦闘員9人が死亡したという。

増え続ける国内避難民(IDPs)

シリア人権監視団が12日に発表したところによると、シリア・ロシア軍の攻勢を受けて、12日だけで住民7万人以上が避難した。

これにより、2019年12月初め以降に発生した国内避難民(IDPs)の数は95万人を記録した。

このうちの52万人が1月半ば以降、さらに35万人が1月24日以降に避難を余儀なくされたという。

(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)

東京外国語大学 教授

1968年東京生まれ。東京外国語大学教授。東京外国語大学卒。一橋大学大学院にて博士号取得。シリアの友ネットワーク@Japan(シリとも、旧サダーカ・イニシアチブ https://sites.google.com/view/sadaqainitiative70)代表。シリアのダマスカス・フランス・アラブ研究所共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員を経て現職。専門は現代東アラブ地域の政治、思想、歴史。著書に『混迷するシリア』、『シリア情勢』、『膠着するシリア』、『ロシアとシリア』など。ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」(http://syriaarabspring.info/)を運営。

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