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まだ止まらない!先発全員安打で17連勝《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
11日は2点適時二塁打を含む2安打、押し出し四球も合わせて3打点の遠藤成選手。

 いったいどこまで続くのでしょう?阪神タイガースのファームの連勝は。なかなか越えられなかった壁、球団記録の10連勝を突破して、もうそろそろ止まるだろうと思いながら17連勝まで来てしまいました。

 先取点を取られたり、逆転されたりした日に、今度ばかりは無理なんじゃないかと思ったこともありますし、雨で試合間隔が大きく空いた時などは、さすがに途切れそうな気がしました。それでも負けなかったんですよね。

 7月30日のオリックス18回戦(鳴尾浜)から勝ち続け、雨天中止を7試合も挟みながら8月20日に3年ぶりの9連勝。翌21日には阪神ファームとして21年ぶりに球団最多の10連勝を達成します。22日はソフトバンクと延長10回で0対0という、しびれる引き分けを挟んで、24日に球団新記録の11連勝となりました。

 さらに白星は重なり、26日にウエスタン・リーグの最多記録である13連勝。31日にはリーグ記録を更新する14連勝に到達します。そして9月1日の広島22回戦(鳴尾浜)で勝って、1999年にイースタン・リーグの巨人が達成したファーム最多記録の15連勝に並びました。それでもまだ止まらなかったんですよね。

 5日の中日20回戦(ナゴヤ)もまた1対0で勝って、ついにプロ野球ファームの新記録となる16連勝を達成!ここまで記録を塗り替えてしまうとは、失礼ながら予想していませんでした。ここまでの連勝については、以下の記事をご覧ください。

<リーグ最多タイの13連勝と2000年&2018年の連勝を振り返る>

<8月は負けなし!ウエスタン・リーグ新記録の14連勝を達成>

<2軍最多記録の15連勝に並んだ阪神ファーム、西純矢投手が志願の8回無失点!>

 そして、きのう11日も勝って17連勝まで来ました。ちなみにプロ野球(1軍)の最多は、1954年の南海ホークスと1960年の毎日大映オリオンズが記録した18連勝。きょう勝てば“プロ野球タイ記録”ということになるんでしょうか?比較するのは難しいですけど、なかなか達成できないものだというのはわかりますね。

 さて、本来なら11日と12日は高知県安芸市で行われる予定だった広島との2連戦ですが、7月はじめに鳴尾浜へ変更され、そのあと7月末に甲子園へと再変更されました。これは11日のTUBEコンサートが中止になったからでしょうね。14日のソフトバンク戦も鳴尾浜から甲子園へ変わり、この2カード5試合が甲子園開催になったものです。

 今季も鳴尾浜球場の試合はすべて無観客で行われたので、シーズン終盤とはいえファンの方々に見ていただけたら、選手たちも嬉しいでしょう。ただ新型コロナの感染拡大はまだまだ油断できない状況です。観戦の際は十分にご注意ください。

今季3度目の先発全員安打

 では試合を振り返ります。先発は西純矢投手で、15連勝を達成した1日の広島戦(鳴尾浜)以来の登板。追いつかれた直後に打線が勝ち越し、6勝目を挙げています。防御率は4.05と少し高めですが、規定投球回数をクリアしてリーグ5位に名前が出てきました。

 この試合は何といっても、10日に出場選手登録を抹消された佐藤輝明選手の出場でしょう。スタンドにも名前入りタオルを掲げるファンの方が多かったですね。4回にホームランか!?という打球を広島・中村奨成選手にスーパーキャッチされてしまいましたが、6回にはフェンス直撃の二塁打を放っています。

 また4点を追加した8回は、江越大賀選手に満塁の走者を一掃する二塁打が出ていて、これが本当に“えぐい”打球でした!当たった瞬間にもう打球が見えないというか、スロー再生された映像でもバットから離れるボールを確認できないんですよ。速すぎて!さすが江越選手ですね。

 他にも高山俊選手、山本泰寛選手、遠藤成選手が2安打ずつ。遠藤選手は2点タイムリー二塁打と押し出し四球で、江越選手と同じく3打点です。試合後のヒーロースピーチは遠藤選手の担当でした。

 なおチームとしては計12安打で、6月5日の中日戦(17安打)、7月24日の中日戦(11安打)に続く、今季3度目の先発全員安打となっています。

8回に満塁の走者を一掃する三塁打を放った江越選手。この豪快なタイムリーで先発全員安打となりました。
8回に満塁の走者を一掃する三塁打を放った江越選手。この豪快なタイムリーで先発全員安打となりました。

《ウエスタン公式戦》9月11日

  阪神-広島 23回戦 (甲子園)

   広島 000 101 000 = 2

   阪神 000 022 14X = 9

◆バッテリー

 【阪神】○西純(6勝2敗)-伊藤和-エドワーズ-小林 / 長坂-藤田(9回表)

 【広島】野村(5回)-●高橋樹(1勝2敗1S)(1回)-藤井(1回)-ネバラスカス(1回) / 中村奨-白濱(8回裏)

◆二塁打 神:遠藤、佐藤輝、北條、江越

     広:堂林、宇草

◆盗塁 神:板山(12) 広:宇草(4)

◆打撃    (打-安-点/振-球/盗/失) 打率

 1]中:江越  (5-1-3 / 2-0 / 0 / 0) .237

 2]三:北條  (4-1-1 / 1-1 / 0 / 0) .304

 3]一:板山  (2-1-0 / 0-2 / 1 / 0) .261

 4]右:佐藤輝 (4-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .125

 5]指:陽川  (4-1-1 / 2-0 / 0 / 0) .255

 6]左:高山  (4-2-0 / 1-0 / 0 / 0) .216

 〃左:奥山  (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .294

 7]遊:山本  (4-2-0 / 1-0 / 0 / 0) .293

 8]捕:長坂  (2-1-0 / 0-1 / 0 / 0) .221

 〃捕:藤田  (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .139

 9]二:遠藤  (2-2-3 / 0-1 / 0 / 0) .218

◆投手    (安-振-球/失-自/防御率)最速

 西純  6回 109球(4-5-5 / 2-2 / 4.07) 151

 伊藤和 1回 12球(1-0-0 / 0-0 / 2.73) 141

 エドワ 1回 13球(0-2-0 / 0-0 / 3.09) 149

 小林  1回 18球(1-0-0 / 0-0 / 1.13) 149

      ※“球”は四球と死球の合計

《試合経過》※敬称略

 西純は1回を三者凡退で立ち上がり、2回にヒットや四球、捕逸なので2死一、二塁としますが無失点。3回は再び三者凡退でした。しかし4回、2死から連続四球のあと7番・韮澤に右前タイムリーを浴びます。ここでライト・佐藤輝から板山、北條へと渡ったボールで一塁走者は三塁でタッチアウト!1点で済みました。

 打線は広島の先発・野村に対して4回まで無得点。4回に板山が左前打を放ち、続く佐藤輝の打球はレフトスタンドへ向かって飛んでいったのですが…堂林のファインプレーに阻まれます。タイミングぴったりのジャンプで、最後はフェンスにぶつかりながら捕球したように見えました。素晴らしかったですね。

 そして5回、高山と山本の連打と長坂の犠打で1死二、三塁として、遠藤が右翼線(一塁ベースに当たった?)へのタイムリー二塁打!2対1と逆転しました。ところが6回、西純が先頭の堂林に二塁打され、1死後に宇草の左中間二塁打を浴びて2対2の同点となります。

 このままで終わらないのが今季の阪神。その裏に高橋樹から板山が四球を選び、佐藤輝は左中間フェンスを直撃する二塁打、陽川の中前タイムリーで1点勝ち越し!なおも無死一、三塁で高山は二ゴロ併殺打に倒れるも、その間にもう1点を追加して4対2としました。

 7回は1死から遠藤が右前打し、2死後に北條が中越え二塁打!一塁から遠藤が生還しています。8回は2死から高山と山本が連打、長坂は四球を選んで満塁となり、遠藤の四球で押し出し。なおも2死満塁で江越がレフトへ走者一掃のタイムリー二塁打!この回4点を加えます。

 リリーフ陣は、7回の伊藤和が2死から羽月に中前打されるも無失点。8回のエドワーズは連続三振を奪うなど三者凡退!9回は小林と藤田のバッテリーで、2死からショートとレフト、センターの間に落ちるヒットを許しますが、最後は代打・持丸の同じような打球をショート山本が捕って終了。9対2で阪神が勝ちました。

とても大切な充電期間

 では平田勝男監督の談話をご紹介します。まず「先制点とられたけど、純矢が粘り強く投げた。調子はこの前の鳴尾浜よりは、よくなかったかな。やっぱり丁寧にいきすぎたところで、球数がいったというのもあったけど。同点まではしょうがない。あえて100球を超えて続投させているんでね。どう踏ん張ってくれるかなというとこでセカンドゲッツー?あそこは、純矢が成長しているところじゃないかな」と西純矢投手を分析しました。

 ここからは佐藤輝選手の話題が続きます。この日の打席を振り返って「全部フライでしょ、打球角度もあるし、こうやって打席に立ちながらね。まあまた調子は戻ってくると思うし、こうやって打席に立つこと。やっぱり野村が投げたり、あしたは中村祐だし、ソフトバンクもいい投手が投げてくると思う。非常にいい実戦練習になると思うよ」と平田監督。

 「ライト前のヒットもカットに投げて、サードでしっかりアウトにした」と守備面も評価し、それらを含めての実戦練習だと言います。今後については「バッティングコーチと話をしながらやっている。やっぱり皆さんがこうやって注目してね、35打席ノーヒットとか。そりゃあ1年目の彼にとっては、すごい疲れもあっただろうし」とドラ1ルーキーを思っての言葉です。

 「そういった意味で、いいタイミングでファームにきたので、そこはもう一回フラットにして。これをきっかけにもう一歩、二歩、レベルを上げられるような過程にしようと。しっかりと充電させて1軍にまた送り込みますよ、楽しみにしててよ。マスコミが取り上げてくれるんだもん。俺はもう毎日プレッシャーで、8時間しか寝られないよ(笑)」。最後は平田監督らしいでしょう?十分な睡眠時間です。

諦めている選手なんかいない!

 最短の10日での復帰もあるかと聞かれて「それは1軍が決めることなんでね。佐藤とこうやって初めて接するし、コーチもキャンプから見ていないので、そのへんはすぐ“ああしろ、こうしろ”じゃなく頭をクリアにしてあげて」と答えた平田監督。それから、こんなふうに続けました。

 「ファームがどういうもんなんかを知って。ちょうど(同い年の)栄枝がいるからいいねん。藤田や遠藤たちと、練習が終わってからボール拾いをしていた。ファームは、1年目はそうやねん。陰でそういう努力、徳を積むこともファームはやるわけよ。人間的に素晴らしい好青年だよ。我々も佐藤輝という人間と、初めてこうやって接するんでね。いろいろ理解しあいながら何とか」

 最後は「他の選手も含めてだよ。輝ばっかりじゃなくて。他のこうやって1軍から落ちてきた選手たちが目の色を変えてやっているんだもん。誰ひとり諦めてるやつもいなければ、やる気をなくしている選手なんか見当たらないでしょ?」という締めくくりでした。おっしゃる通りですね。誰もがチャンスを求めてもがく場所、それがファームです。

勝率トップに立った西純投手。すぐ規定投球回数を割ってしまうのでまた消えますが、次は1軍での登板が見たいですね。
勝率トップに立った西純投手。すぐ規定投球回数を割ってしまうのでまた消えますが、次は1軍での登板が見たいですね。

残り12試合となった公式戦

 なお8月を負けなしで終え、9月1日にファーム最多タイの15連勝となった時は、まだ首位・ソフトバンクと0.5ゲーム差の2位だった阪神。そこから3試合連続で雨天中止(2日は3回終了時点で降雨ノーゲーム)となり、ソフトバンクの方も中止などを経た4日、ソフトバンクが広島に負けたところでゲーム差0、勝率3厘差で阪神が首位に立ちました。

 翌5日、阪神もソフトバンクも勝って変動なし。7日から阪神は試合がなく、その間にソフトバンクはまず1つ勝って首位に返り咲き、8日も連勝して2位・阪神との差を1ゲームに広げます。ところが9日は負けて再び2位に、阪神が首位に戻りました。10日と11日が中止だったソフトバンクに対し、阪神は11日の勝利で首位をキープしてゲーム差なし。11日現在の順位はこちらです。

 試合 勝-敗-分 勝率 ゲーム差

神 96 58-32-6 .644 

ソ 98 60-34-4 .638  0

中 91 46-42-3 .523 11

広 93 32-58-3 .356 26

オ 98 31-65-2 .323 30

 きょう12日の戦いを終えた時点で、残りが5チームとも最大12試合となります。阪神は14日からソフトバンク、中日、広島、オリックスと一巡して、ひと足早く26日で全日程終了予定。他チームのラスト3試合の結果を待つ形です。

 よって、14日から甲子園で行われるソフトバンクとの3連戦が見ものですねえ。今のところ対戦成績は12勝12敗2分け。今季最後の直接対決は、もう激アツ!と言っていいでしょう。

 成績を見ますと、打撃面ではチーム打率.260で阪神がトップです。個人でも小野寺暖選手が打率.319、出塁率.396でトップ。打点はソフトバンク・リチャード選手に1点差まで詰め寄られているものの、今のところ井上広大選手の50がトップ。盗塁21個の島田海吏選手も2位に5つの差でトップです。

 投手陣の名前も上の方に出てきていますね。5日の中日戦で5回無失点と好投した村上頌樹投手が8勝目を挙げて現在リーグ単独トップ、同じ試合で8セーブ目となった浜地真澄投手はリーグトップタイ。さらに11日の試合で規定投球回数をクリアした西純投手は6勝2敗となり、勝率.750でリーグ単独トップになりました。

 阪神は、きょう12日も甲子園での広島戦に臨んでいます。先発投手は、阪神が8勝でリーグトップの村上投手、対する広島は防御率がリーグトップの中村祐太投手という顔合わせ。スタメンは守備位置が少し変わったものの前日と同じ打順で、きょうのキャッチャーは榮枝裕貴選手です。

  <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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