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2軍最多記録の15連勝に並んだ阪神ファーム、西純矢投手が志願の8回無失点!

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
ルーキーイヤーの2020年2月、野球教室で子どもに笑顔を向ける西純矢投手。

 8月31日にウエスタン・リーグ最多の14連勝を記録した阪神ファーム。7月30日から負けなしで9月を迎え、きのう1日の広島戦で勝って、連勝を15まで伸ばしました!イースタン・リーグの巨人が1999年8月14日の日本ハム戦から9月4日の西武戦にかけて達成した “ファーム最多連勝記録”に並んだもの。その後、2016年の巨人が、また今季のロッテが挑みながら14で止まってしまった壁を、阪神が越えたわけです。

 そろそろ負けるのでは?もう負けても仕方ないかな?という気持ちも正直ありましたね。もちろん勝った方がいいし、勝ち続けるチームも見たいけど、連勝はいつか終わるものなので、それなら…と。

 でも現場は違いますね、きっと。戦っている選手たちは勝ちたいでしょう。負けて学ぶことは多いけど、勝って知ること、得るものもそれ以上だと、私は思っています。何より、こんな“ヒリヒリ”した戦いが続く毎日、アドレナリンの量も半端ないはず!この経験を宝物にしてほしいですね。

最少得点で逃げきっての勝利!

 では試合結果をご紹介します。13安打で12得点だった前日とは打って変わって、この日は0対0のままゲームが進んでいます。阪神・先発の西純矢投手はコントロールも、真っすぐのスピードも、変化球のキレも素晴らしく、要所で奪った三振もいろんな球種でした。8回2安打無失点で、三塁を踏ませぬ好投です。

 ただし、こちらもホームが遠い攻撃内容で、6回の1点もヒットではなく四球と相手エラーで挙げたもの。その1点を西純投手と浜地真澄投手が守り、完封リレーで逃げきっています。いつ追いつかれても、逆転されてもおかしくない点差ですから、これまで以上にドキドキでしたね。

《ウエスタン公式戦》9月1日

 阪神-広島 22回戦 (鳴尾浜)

  広島 000 000 000 = 0

  阪神 000 001 00X = 1

◆バッテリー

 【阪神】○西純(5勝2敗)-S浜地(3勝1敗7S) / 長坂

 【広島】●矢崎(2勝6敗)(6回)-ネバラスカス(1回)-中田(1回) / 中村奨

◆三塁打 神:板山

◆二塁打 神:板山、山本 広:メヒア

◆盗塁 神:遠藤(1)、板山(11)、熊谷(5)

◆打撃    (打-安-点/振-球/盗/失) 打率

 1]中:江越  (4-1-0 / 2-1 / 0 / 0) .231

 2]左:熊谷  (4-1-0 / 0-0 / 1 / 0) .268

 3]三:板山  (3-1-0 / 0-1 / 1 / 0) .259

 4]一:陽川  (3-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .263

 5]指:荒木  (2-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .321

 〃打指:俊介 (2-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .265

 6]右:高山  (4-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .211

 7]遊:山本  (3-1-0 / 0-1 / 0 / 0) .300

 8]捕:長坂  (2-0-0 / 0-2 / 0 / 0) .217

 9]二:遠藤  (3-1-0 / 1-0 / 1 / 0) .214

◆投手    (安-振-球/失-自/防御率)最速

 西純 8回 110球(2-8-2 / 0-0 / 4.16) 152

 浜地 1回 14球(1-1-0 / 0-0 / 3.48) 149

      ※“球”は四球と死球の合計

《試合経過》※敬称略

 先発の西純はまず1回、先頭から152キロの真っすぐなどで連続三振を奪い、三者凡退の立ち上がり。2回も三者凡退で、3回は先頭に四球を与えますが後続をしっかり断って無失点でした。一巡した4回は2死から初ヒットとなる中前打を4番・磯村に許したものの、続く桑原は空振り三振!5回と6回は三者凡退に切って取ります。

 打線は1回に板山が中前へ落ちる二塁打、2回高山が右前打、3回は遠藤が左前打と二盗を決めたものの得点できず。4回は三者凡退でした。5回は先頭の山本が左越えの二塁打!しかし長坂の送りバントで三塁アウト。そのあと広島・矢崎の牽制悪送球で長坂が二塁へ進み、1死後に江越が四球を選びますが、やはり得点なし。

 0対0のまま迎えた6回裏、板山の四球や盗塁などで2死三塁として、高山は投ゴロでチェンジ。と思ったら…何でもないゴロを捕った矢崎の一塁送球が高く逸れたのです。これで三塁から板山が生還!さらに連続四球で2死満塁と攻めるも追加点はありませんでしたが、何とか1点先取しています。

 西純は7回も続投。磯村への四球と桑原の中前打で1死一、二塁としながらも後続を断って無失点。その裏の攻撃は、広島・ネバラスカスから中前打を放った江越ですが盗塁失敗。熊谷は左前打、1死後に陽川が四球を選び、俊介は振り逃げ(三振と暴投)で2死満塁と攻めた打線。しかし高山は左飛で3者残塁です。

 8回のマウンドには、自ら志願したという西純の姿があり、二ゴロ、三振、捕邪飛で三者凡退!しかもまだ150キロ、151キロという球速でした。最後にもう一度ギアを入れ直した感じですね。その裏は長坂が死球で出て、遠藤が初球でバントを決めていますが、やはり無得点。最小得点のまま9回を迎えました。

 9回は浜地が登板。1死から2番・メヒアに右中間二塁打を許し、磯村の二ゴロで2死三塁となり、あわや同点?という緊張の場面になります。それでも浜地は落ち着いて真っすぐ2球で追い込み、カウント1-2からの5球目を打たせて遊ゴロ。ショート山本も慌てることなく、さすがのスローイングで一塁アウト!試合終了です。

13試合連続無失点、3勝7セーブの浜地投手。ちょうど3年前の鳴尾浜での写真です。
13試合連続無失点、3勝7セーブの浜地投手。ちょうど3年前の鳴尾浜での写真です。

浜地は13試合連続無失点

 15連勝がかかった試合は、前半が0対0、そこから1対0という、何とも胃のいたくなるような展開でした。15連勝したいというよりは、自分のミスで連勝を止めたくない思いが一番だったかもしれません。いい守備を見せていた遠藤成選手が、9回2死二塁でのセカンドゴロはポロリといきそうな危うい捕球だったこともしかりです。

 浜地投手は落ち着いていましたね。1軍から戻って最初の登板だったのですが、ファームでずっと抑えているだけあって、さすがです。これで13試合連続無失点で、リーグトップタイの7セーブ目となりました。

西純投手の投げっぷりを絶賛

 では、平田勝男監督の談話からご紹介しましょう。接戦を終えた平田監督は、まず「素晴らしいね。緊張感のある素晴らしいゲーム。すごく最後まで引き締まったいいゲームだったと思うね」という感想です。

 西純投手について「きょうは初回から150キロを連発して気合が入っとったよ。ファームとはいえ連勝中に、きょうはどういう立ち上がりを見せるかなというところだったんだけど。8回は志願だよ。安藤コーチに志願して、もう1回いくという意欲。きょうの投げっぷり。きょうの四球なんて何ともない。そういうところが、きょうは西に任せようと思わせる。見事、じゃないね。“お”がつく。お見事だ」と絶賛でした。

 志願して8回も投げたというところに成長を感じますか?「成長というか、勝ちたいという欲が出てきてるね。この間もソフトバンク戦で5回2/3かな?最後、同点までいかせて川瀬にポンとレフト前を打たれて2-2で代わった。こういうところから勝負根性がちょっとずつね。やっぱり勝負根性がつかなアカン。前回、同点で終わった悔しさがあったんじゃない?」

 15連勝という記録に「これは結果なんだけどね。選手たちのゲームに対する姿勢はやっぱり、僕らの方が教えてもらえるよね。自然とベンチでも声を出しているし。チャンスで凡退したらカバーしてやれという言葉が出たり、(カウント)3-2から江越が三振しても、遠藤が盗塁でカバーするとか。そういうのが本当のチームプレーだと思う。そういう意識が出てきているわね」と評価しています。

 負けるより勝って学ぶことも多いかと聞かれ「いやいやファームなんでね。この9月10月、いつも言うように、いつ呼ばれてもいい準備をしておくかというところなんで。そこがやっぱり一番の目指すところなんで。その結果が連勝というところを含めて、集中力といい、意欲といい、そういうものがあるわね」と平田監督。あくまで1軍に備えてのファーム、ということですね。

16連勝も「目指すよ、ここまで来たら」

 9回を浜地投手に任せたのは「安ちゃん(安藤優也投手コーチ)が選んだ。ずっと抑えをやっているからね。7月から自責点0のはずやで。帰って来たけど、まだ浜地にチャンスがある。安藤コーチがすべてピッチャーはやっているんで、『浜地でいきます』と言われたら『はい、分かりました』って」と言いながら、平田監督も同じ思いだったでしょう。

 そんな浜地投手は1点差の場面でも落ち着いていたように見えました。「そんなもんドシッとしたもんだよ。浜地で大丈夫というね。やっぱり(最後は)ショートゴロになる。不安なことを言うと、不安が当たる。悪いことが当たるのよ」。選手は落ち着いていますか?「選手たちはもう全然。ドシッとしたもんだよ」

 選手間で連勝の雰囲気というのはあるんでしょうか?「きょうはキャプテンの小幡が上に行ったから、副キャプテンの榮枝が声出しをして、『昨日は打って勝ったけど、きょうはまた引き締まって15連勝に向けて』とね。そんなもんプレッシャーかけてやらなきゃ駄目なんだよ」と平田監督。目指すのは、うまい選手より強い選手ですもんね。

 ファームの連勝記録に並んで、もう1つ勝てば巨人を超えますね。「目指すねえ。目指すよ、当然ここまで来たら。あしたは中田が先発するけど、いつも投げていないリリーフ陣も投げる予定なので、雨だけは降るなよと。こういうところで中継ぎ陣もね。いい打線だもん、カープは。こんないい練習はないですよ」

志願して抑えた8イニング目!

 続いて自身プロ最長の8回、110球を投げて2安打8三振2四球の無失点で5勝目を挙げた西純投手。まず「きょうは三振を10個取ろうと思っていて2個足りなかった。早めに追い込める場面が結構多かったので、もっと三振を取れたんじゃないかなと思います」という感想です。

 8回は志願したそうですね。「安藤さんが球数87って言っていて、多分その時もう97球いってたんですけど、気持ち的にもいけそうだったんで、100球までいかせてくださいと言いました」。それは7回が終わってのベンチで?「そうですね。(安藤コーチからは)責任を取るくらいの気持ちでいけって言われました」

 気合も入っていたのでは?「負けられない、こういう感じなので。思い切りいきました」。チーム15連勝がかかったマウンドはどうだった?「嫌なのは嫌ですけど(笑)。気にせずにファームだから、って思いながらいきました」。周りは?「周りはもう、他のピッチャーの人とか『次勝ったら15連勝か』みたいな感じで、言ってきてたんで、ちょっといやらしかったですけど(笑)」

 なるほど、それはかなり緊張感をあおってきますねえ。「まあでも自分のピッチングするだけだったので」。余裕があるように見えましたよ。「あんまり緊張しすぎても1軍での初登板みたいになっちゃうので、楽しんで投げられたらと思って」

 印象に残っている場面はどこですか?「きょう初めてシンカーを投げたんですよ。4回から投げ出して、すごいいい感じで投げられたと思います」。誰に対して使いましたか?「左バッターが多かったかな。フォークと見分けつかないと思うんですけど、140キロ前後で外に落ちる感じですね」。手応えは?「初めて投げたんですけど、すごくよかったです」

初めて投げたシンカーに手応え

 シンカーを投げるきっかけは何ですか?「チェンジアップをずっと練習していたんですけど、うまく抜けなかったので。左バッターに使えるようなボールが欲しいなと思っていました」。試したのはいつ?「3日前とかです。キャッチボールで(高橋)遥人さんに教えてもらったんですよ。それをアレンジして、キャッチボールとか個別でブルペンdで投げる時に練習したら意外とよかったので、きょうやってみようかなって」

 3日前!それでもう試合に投げるってすごいですね。やはり実戦で試すのが大事ということ?「ブルペンで投げるのと実戦で投げるのは全然違うので、試合で投げてそこからブルペンで精度を上げていけたらいいなと思ってたんですけど。思ったよりよすぎた。よかったです」

 高校では使ったことがないというシンカー、試合で試すのに躊躇はなかったですか?「新しいボールも覚えないと、ずっと同じ投球をしていても進化しないので」。シンカーを使ったところは4回の韮沢選手の空振り三振?「4回以降なので、最終回(8回)の木下さんの三振と中村奨成さんのセカンドゴロもそうです」

 これでまた幅が広がったのでは?「スライダーがもともと武器なので、それとこっちにいくボール(左打者に対して逃げていくボール)と入ってくるボールで、いいんじゃないかなと思います」

 自身プロ最長の8回を投げて「自信にはなったかなと思います」と話す西純投手。この日はベストピッチングかと聞かれ「ベストピッチングなんですかね?シンカーがよかったので、よかったです」と答えています。

 前日に高橋投手がいい投球をしたことに対して、意識はありましたか?「そうですね。1軍を目指しているんですけど、まだまだ課題も多いと思うので、ずっと目標だった長い回を投げることが達成できたから、次はそれを続けるっていうのをテーマにしてやっていけたらなと思います」

今季さらに球が速くなったと感じる西純投手。新しく加わったシンカーも武器に1軍で暴れてほしいですね。
今季さらに球が速くなったと感じる西純投手。新しく加わったシンカーも武器に1軍で暴れてほしいですね。

新記録の16連勝はお預け

 なお、きょう2日も鳴尾浜の広島戦だったのですが、3回が終わった13時半ごろに雨のためノーゲームとなっています。平田監督がきのうの試合後に「中継ぎで投げる予定の投手もいるから雨だけは降るなよ」と話していたところだったのに、残念ですね。ちなみに3回までは阪神が2対0とリードしていました。

スタメンはこちらです。

【阪神】    【広島】

 1]中:江越    1]中:宇草

 2]二:熊谷    2]遊:韮沢

 3]右:板山    3]右:中村奨

 4]指:陽川    4]三:メヒア

 5]一:原口    5]左:正随

 6]左:高山    6]指:クロン

 7]遊:山本    7]一:木下

 8]捕:榮枝    8]捕:持丸

 9]三:遠藤    9]二:中神

  投:中田     投:小林

 1回はともに2三振ずつで三者凡退。2回は広島の5番・正随優弥選手が二塁打を放ちますが得点なし。その裏の阪神は先頭の陽川尚将選手が中前打、原口文仁選手は遊ゴロ併殺打に倒れるも、高山俊選手の左前打と山本泰寛選手の四球で2死一、二塁として榮枝裕貴選手が右越えのタイムリー三塁打を放ちました!

 2点を先取して、3回の中田賢一投手は2死から宇草孔基選手に二塁打されたものの無失点。その裏の攻撃は三者凡退。試合開始前から雨は降っていたようですが、ここでまた強くなったのでしょう。3回終了降雨ノーゲームとなっています。

 あす3日からは遠征しての中日3連戦。プロ野球ファームの連勝記録を更新するとすれば、ナゴヤ球場ということですね。そして、きょうはノーゲームで縮まらなかった首位・ソフトバンクとの差は0.5のまま、これも持ち越しとなりました。でも、あす阪神が勝ってソフトバンクが負ければ一気に逆転可能です。勝手な予想ですみません!

 さらに勝手な計算をしますと、あす阪神が勝てば、ソフトバンクの引き分けで同率首位。もしソフトバンクが負けた場合は、阪神が勝てば0.5ゲーム差で単独首位、引き分けてもゲーム差なしで勝率4厘差で単独首位です。まあ、すべて“たられば”の話なので聞き流してください。

 きのう、きょうと平田監督や選手のコメントを少しご紹介しましたが、長らく面と向かってのお話を聞けていないので現場の“熱”は表現しにくく、もどかしいですね。でも監督やコーチ陣、選手たちのモチベーションはかなり上がっているように感じます。「こんないい練習はない」という平田監督の言葉、まさにその通りだと思いました。

 16連勝というファーム新記録を達成しようが、15でストップしようが、もし優勝してもしなくても、阪神ファームは今、何ものにも代えがたい経験をしているはずです。この夏はきっと、いつまでも思い出に残るでしょうね。さらに、忘れられない秋になることも期待しています。

   <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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