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【パリ】2度めの外出禁止令 春とは少々様子が違っています

鈴木春恵パリ在住ジャーナリスト
サン・ジェルマン・デ・プレのカフェ休業前の最後のグラス(写真はすべて筆者撮影)

新型コロナ感染爆発をうけて、フランスは全土でふたたび厳しい外出制限「コンフィヌモン(自己隔離)」が実施されるようになりました。少なくとも12月1日までは継続される予定です。

28日20時に大統領演説、30日0時から実行と、準備に使える時間はほぼ1日という短さ。とはいえ、コンフィヌモン慣れしている、と言っていいのか、3月に比べると、混乱や困惑はぐっと少ないという印象です。開始前日のパリの様子は記事の最後に添えた動画でご覧ください。

コンフィヌモンは、もちろん外に出ないことが原則ですが、以下の場合は、特例外出証明書を携行すれば外出可能。在仏日本大使館サイトの翻訳文を掲載します。

●自宅と職場あるいは教育・訓練施設、延期不可能な仕事及び試験会場への移動。

職場に必要な備品の購入、営業許可を受けている施設での必需品購入、宅配のための移動。

●遠隔で実施できず、急を要する診療や検査、薬の購入。

●家族のためのやむを得ない理由、脆弱な人への支援、子供の監護のための移動。

●障害者及び付き添い人の移動。

●集団的スポーツ以外で他人との接近を伴わない個人的な運動や同居人との散歩、ペットのための移動で、1日1時間以内、自宅から1キロ以内で行う短時間の移動。

●司法あるいは行政機関からの召喚及び公共機関での手続き

●行政機関の要請による公益任務への参加。

子供の学校や課外活動への送り迎え

春の教訓を反映した2度め

外気を吸うための自由な外出は1日1時間、自宅から1キロという範囲などは春のコンフィヌモンのときと同じなのですが、太字の部分などに前回とは違う、つまり春より緩和された禁止令であることが象徴されています。

まず保育園、小中高校は閉鎖されないということ。前回は当初ほぼ全面的に閉鎖されてしまったことで、教育機会の不平等、こどもの精神面への影響が問題になりましたが、その経験をふまえて今回は学校を開くという決定がされました。ただし、前回はマスクの着用義務が11歳からだったのに対して、今回は6歳からとなっています。

また今回は「職業活動を保持する」というメッセージ性が強いものになっていると感じます。

春の時は、生活必需品(食料品、日用品、薬)などの購入の外出を認めるというのが特例の最初に掲げられていたのに対して、今回は「職業に必要な備品の購入」がまずあります。前回はとにかく身を守ることを大命題で、「食べることは確保します」というメッセージによって市民の不安を和らげていましたが、今回の場合は、その点は暗黙の前提として、さらに極力職業活動を継続する方針が示されています。

具体的には、工場、工事現場、農業、漁業に従事する人たちは、活動をそのまま継続できます。さらにテレワークが可能な人については、「週5日」、つまり全面的なテレワークを要請し、そのために必要な備品の購入のための外出を認めることを明言。前回は営業休止していた電子機器の大型量販店fnac(フナック)や、建築資材、工具のほか、日曜大工に必要なものを扱うチェーン店Leroy Merlin(ルロワメルラン)、Bricorama(ブリコラマ)なども開かれることになっています。

個人的な例でいうと、春のコンフィヌモンのときには、プリンターのインクがスーパーで品切れ状態で、アマゾンの配達で入手するしかなかったものが、フナックの店舗でも買えるという選択肢が増えたということです。

また、劇場、映画館などの営業はできませんが、演劇、舞台の稽古、収録などは継続可能というのも今回の新しいところです。

さらに、人々の精神面に大きく関わることのひとつとして、老人ホームで家族の面会ができないことが前回問題になっていましたが、今回はそれが可能になっているほか、公園、海岸なども開かれることになったので、1時間という制限付きとはいえ、日常生活に多少の潤いは添えられそうです。

初日はほぼノーチェック

さて、コンフィヌモンの初日。筆者はパリから130キロほど離れた地方での日帰り取材の予定がありました。不安はあったものの先方の予定通りという希望もあり、決行。もちろん特例証明書と職業上の必要を説明できる書類を用意して臨みました。移動手段はメトロと車。結果、パリ市内のメトロでも高速道路の料金所などでも警察のチェックを受けることはありませんでした。

高速道路のサービスエリアでは、ガソリンスタンドやスーパーは開いていましたが、レストランコーナーはクローズ。着席して食事をすることは不可能で、結局駐車場でパンを頬張ってお昼にするという状態でした。

ちなみに、前回のコンフィヌモンの特例外出証明書は、書式をプリントアウトして必要項目を記入するというものでしたが、今回の場合は電子版が一般化する気配。スマホのアプリケーションの画面で項目を打ち込むとQRコード付きの証明証が作成できるというもので、このあたりにも2度目ならではの進歩(?)があるようです。

この週末までは万聖節休暇ですが、月曜からは学校も再開されます。子どもたちは学校に、大人はそれぞれの仕事場に戻る来週。いよいよ本格的な取締りも始まることでしょう。

春のような20時の拍手もなく、日に日に昼間の時間が短くなってゆくなかで、ふたたびのコンフィヌモンがどのように展開するのか。パリからのレポートを続けたいと思います。

こちらの動画には、コンフィヌモン前後のパリの様子を綴りました。秋の風景とともにご覧ください。

パリ在住ジャーナリスト

出版社できもの雑誌の編集にたずさわったのち、1998年渡仏。パリを基点に、フランスをはじめヨーロッパの風土、文化、暮らしをテーマに取材し、雑誌、インターネットメディアのほか、Youtubeチャンネル ( Paris Promenade)でも紹介している。

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